日常

10個の階段:十住心論

2011-11-23 13:35:28 | 考え
■仏教

仏教は、釈尊(ゴータマ・シッダルタ)が追求した「わたし」の「こころ」の成長への道だと思う。
ここでいう「わたし」は、「わたし」の多層構造の中から「自我ego」だけをうまく抜き取る作業なんだと思う。

「わたし」引くところの「自我ego」=「無我」


仏教やブッダ関連はここ数年つまみ食いしながらいろいろ勉強しているけれど、常に発見がある。仏教は深くて深すぎる。さらに深すぎる。

二〇〇〇年以上の時間をかけて熟成されている時間そのものの重力を感じる。


・・・・・・

ひさしぶりの休みなので部屋を掃除。
心の塵を払うようにお掃除(仏教的)。

白取春彦、金岡秀友(監修)「マンガ 密教入門―密教の神秘を解き明かす」サンマーク文庫(2000/05)
「空海-真言密教の扉を開いた傑僧 (別冊太陽 日本のこころ187)」平凡社 (2011/7/19)
という本が転がっていたので読んだら、改めてブッダ、空海の偉大さを感じた。
自分の解釈も含めながら、メモ書きで抜粋。




■十二因縁

釈尊の十二因縁(じゅうにいんねん)。人間の因縁の展開の12段階。

菩提樹で21日間も座禅・瞑想を続け、ブッダは悟ったらしい。
そんなすごい成果を惜しげもなく学べるということは、なんとも贅沢なことだ。


<過去の二因>
1:無明(むみょう):智慧のないこと。煩悩の構成要素なる愚かさ。
2:行(ぎょう):愚かさが行いとなり業をつくる。
<果報の五果>
3:識(しき):胎内に生を受ける。物事を分ける意識。
4:名色(みょうしき):胎内で発育する心と体。名は形なきもの、色は形あるもの。
5:六処(ろくしょ):心と体に六根が備わる。眼(視覚)・耳(聴覚)・鼻(嗅覚)・舌(味覚)・身(触覚)という五感+意(心=知覚)
6:触(そく):胎内から生まれ外界にふれる。対象との接触。
7:受(じゅ):成長し思考を始める。好き・嫌い・憂い・悲しみ・苦しみ・・感情。
<現在の三因>
8:愛(あい):金、地位・・への愛着。心がとらわれること。渇愛。
9:取(しゅ):愛着したことを追求する心の執着。自我本位な心の働き。
10:有(う);心の執着のためにさらに取り込むこと。差別し区別する心。他との不調和。
<未来の二果>
11:生(しょう):迷いの上に迷いを重ねる。根本原因の無明をなくさない限り繰り返す。
12:老死(ろうし);次々と変遷する果報のありさま。


■八正道
「苦」を滅する八つの正しい道。
「正しい」とは「真理に合った」・「調和のとれた」考えや見方や行動のこと。小我(自我、自分本意)ではないもの。中道。その時々の最善の見方や考え方。

1:正見:とらわれなくありのまま見ること。
2:正思惟:自己本位にかたよららず考え、評価すること。
3:正語:正しい言葉を使うこと。
4:正行(正業):正しい行いをすること。
5:正命:規則正しい生活をすること。人の迷惑になることや世のためにならないことをやめること。
6:正精進:正しい努力をすること。
7:正念:真理にあった心と目標を持つこと。
8:正定:心を正しく安定させ、心を安らかにすること。



■密教:空海

密教は秘密の教え。そんな簡単に大事なことがわかるものではない。
言葉にはそもそも限界があるし、自分のからだ全体で真理を理解(体感)しましょう、というのが密教。

空海:空+海。壮大な世界観(宇宙観)を感じる。


あらゆるモノは、3つの側面からなる。
「体(たい)」「相(そう)」「用(ゆう)」

「体(たい)」:物質そのもの
「相(そう)」:物質の姿・形
「用(ゆう)」:物質の働きや作用

宇宙の「体(たい)」は、6つから成る。6大体大。
地・水・火・風・空・識。

地は固体、水は液体、火は上昇するもの、風は気体、空は空間。
識は、観察する「わたし」。認識の識であり、心であり、覚であり、智。
これら6つはバラバラにあるわけではなく、互いに溶け合いまじりあって存在している。




■マンダラ(曼荼羅)

マンダラ=マンダ(本質・真実)+ラ(所有)=真実を含むもの

マンダラ→金剛界マンダラと胎蔵界マンダラ


金剛界マンダラは男性原理、胎蔵界マンダラは女性原理。
二つは別々ではない。金胎不二。二つにして一つ、一つにして二つ。
昼と夜、磁石のプラスとマイナスと同じ。

二を一にしてはいけない。二が二であるからこそ、一である。


金剛界マンダラには永遠の真理に貫かれる「智慧」が描かれる。
大日如来という宇宙仏の頭脳世界。
大日如来は宇宙の根源の姿。世界中のどこにでもいる。人の心の中にもいる。

胎蔵界マンダラには「理」が描かれる。大日如来の心。
胎内に宿った命を育み、大きく咲かせる心。

智と理。どちらが偉いとかすごいではない。
どちらもある。二つで一つの宇宙。

空海『父母から授かったこの身を除いて、どこに仏を実現できようか』
死んでから悟って、仏になってもしょうがない。
「入我我入」(仏が自分に入り、自分が仏に入る)

密教は、この現在の身を仏にする仏教(=即身成仏)。

空海『仏の太陽が我々の心の池に姿を現すのを加と言い、我々が心の池に映った太陽を大切に保っていくのを持と言う』

本当の現世利益とは、自分が仏となって仏のまま行い生きていくこと。



■空海『十住心論』

空海の『十住心論』は、自分の心がどの辺りにいるのかを知る目安。

ブッダも空海も、きっと【第十住心:秘密荘厳心(ひみつしょうごんしん)】まで到達していたんだろうなぁ。



仏教用語で「縁なき衆生は度し難し」(人の忠告を聞こうとしない人は救いようもないよね)とはよく言ったもので、自分で反省し、学ぶ。 そういう素直な心がないと、どうしようもないんでしょうね。そのきっかけが起きるまで、静かに待ち続けるしかないんでしょう。それも、その人の人生。なんでも押し売りはいけません。


里中さんの漫画にもあったけれど(→『里中満智子「ブッダをめぐる人びと」』(2011-10-25))、仏教は「目覚め(自覚)の教え」。
無理やり口の中に詰め込ませるものではなく。自分で気づいて自分で学ぶ教え。
空海の『十住心論』を読んで、偉大な先人から素直に学ぼうと思う。
階段を上るように、一段一段丁寧に。


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空海『十住心論』
【第一住心:異生羝羊心 (いしょうていようしん)】
無知で迷いに気付かず、性と食だけに執着する心

【第二住心:愚童持斎心 (ぐどうじさいしん)】
節制があり礼儀をわきまえ、分かち与えることを覚え、良心が芽生え始めている状態。

【第三住心:嬰童無畏心(ようどうむいしん)】
幼児が母親につきしたがって安心をおぼえるような宗教心が目覚め始めている状態。

【第四住心:唯蘊無我心(ゆいうんむがしん)】
モノだけが実在することを知り、自我(ego)の存在を否定する。教えで悟り、無我を知った状態。

【第五住心:抜業因種心(ばつごういんしゅしん)】
すべてが因縁から生じることを体得して、迷いと無知を取り除いた状態。孤高の聖者の心。

【第六住心:他縁大乗心(たえんだいじょうしん)】
人々に対して慈悲の心が生じ、ただ心の働きだけが実在であるとわかっている状態。

【第七住心:覚心不生心(かくしんふしょうしん)】
一切は空(くう)であるとわかっている状態。

【第八住心:一通無為心(いちどうむいしん)】
現象はみな清浄であり、すべてが真実であると知る状態。

【第九住心:極無自性心(ごくむじしょうしん)】
一者において万有を見、万有において一者を見る。すべての対立を超えて真実を見る状態。

【第十住心:秘密荘厳心(ひみつしょうごんしん)】
ここには無限の展開だけがあり、無限無量のマンダラ世界のみがある。