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食料自給率向上へいまこそ国民的共同をー日本共産党の志位和夫委員長の発言・その2-

2008-04-30 03:15:27 | 国内経済
会場からの質問・意見にこたえて

(会場からは、十二人の参加者から、活発な意見が寄せられ、そのなかでいくつかの質問が出されました。志位委員長はそれらに応えて最後につぎのように発言しました)

 今日は本当にありがとうございました。参加者のみなさんから出されたご意見、ご質問にも応えて、最後に、発言させていただきたいと思います。

農協のみなさんとも、胸襟を開いて対話をすすめたい
 まず、農協の活動について出された意見についてです。農協の活動のあり方は、何よりも組合員のみなさんが自主的に決めることですから、私たちが政党としてあれこれいうことはさし控えたいと思います。ただ私が何よりもうれしいことは、このシンポジウムの場に、地元の「秋田おばこ農協」を代表して、小田島さんが参加してくださり、農協の活動状況についての発言をいただき、対話してくださったことです。(大きな拍手)

 私は、三月十四日に、全国農協中央会(全中)にうかがい、「農業再生プラン」をもって、副会長の廣瀬さんたちと、懇談をいたしました。日本共産党として、こういう形で全中の本部をうかがって懇談をしたのは、実は初めてのことです。廣瀬副会長は、「こういうプランを出してもらったので国民合意が得られる政策のあり方について、ふみこんで話し合いができると思う」とおっしゃってくれました。ほんとうにうれしいことでした。農協の方々と胸襟を開いて話し合う関係になったと感じました。

 今日も、農協の方とこういうシンポジウムで席を並べ、対話することができたことが、本当にうれしいことでした。政治的立場の違いをこえて、全国各地で、こういう対話を広げていけたらと願っております。(拍手)

自給率向上への国民的合意をつくる「たたき台」として活用を
 何人かの参加者の発言で、「農業再生プラン」への補強意見が寄せられました。農業の果たしている地域経済・地域社会を支える役割、環境と国土を保全する役割、日本国民の健康を守る役割などを、もっと踏み込んで書いてほしいという意見もありました。もっともな意見だと思います。

 消費者の立場からすると、提言の順番は、第三、第四の提言を先にして、第一、第二の提言をつぎにしたらどうか、という意見もありました。この提言の順番は、大事なものから順番に書いて、最後のものはあまり大事でないというものではありません。どれも大事だと考えておりますので(笑い)、どういう使い方をされても結構であります。

 私どもの「農業再生プラン」は、いかに日本農業を建て直し、食料自給率を引き上げるのか――そのための国民的合意をつくるためのいわば「たたき台」として提案したものです。ですから、おおいに「たたいて」いただいて(笑い)、国民のみなさんの対話をつうじて、さらに良いものにしていっていただきたいと思います。

WTO協定――現行協定にかわる新たな枠組みが求められている
 WTO農業協定について、「共産党は、この協定の枠組みのなかで対策を考えているのかどうか」という質問がありました。

 私たちの「農業再生プラン」のなかには、現行のWTO農業協定のもとでも実行可能なものもたくさん含まれています。同時に、私たちは、農業問題の根本的な解決のためには、WTO農業協定そのものの改定が必要だと考えています。現行のWTO農業協定は、巨大な力をもった輸出国がとくに有利になる仕掛けです。それが、世界の食料への現状、そして農業の現状とまっこうから矛盾してきた。立ち行かなくなったと考えています。

 そのことは、国際政治の舞台でも提起されるようになってきました。先ほど、「食料主権」という考え方が世界の大勢になってきたという話をしましたが、二〇〇四年の国連人権委員会ではこういう決議が採択されています。

  「各国政府に対し、人権規約に従って『食料に対する権利』を尊重し、保護し、履行するよう勧告する。『食料に対する権利』に重大な否定的影響を及ぼしうる世界貿易システムのアンバランスと不公平に対しては、緊急の対処が必要である。いまや、『食料主権』のビジョンが規定しているように、食料安全保障と『食料に対する権利』に優先順位を置くような農業と貿易のための新たな対抗モデルを検討すべきときである」。

 これが、国連人権委員会で採択されています。WTOの枠組みの「アンバランスと不公平」をただす、新たな枠組み、新たなビジョンが必要だという決議であります。これに反対したのは米国だけです。棄権したのはオーストラリアです。日本の政府は賛成しています。賛成している以上、WTO協定という枠組みを「金科玉条」にしないで、各国の「食料主権」が保障される方向に、WTO協定の改定をはかるために日本政府は力をつくすべきだというのが、私たちの主張であります。(拍手)

「農業再生プラン」の財源をどう考えているのか
 「農業再生プラン」の財源の問題についてご質問がありました。私たちの「農業再生プラン」というのは、予算的な規模で申しますと、価格保障・所得補償予算の額は、二〇〇八年度予算で五千四百億円であり、これを九千億円程度にすれば実現できます。約四千億円の上積みがあれば可能だということです。

 それで、この四千億円をどこから持ってくるか。現行の農業予算の枠内での組み替えでまかなうのか、それとも農業予算の総額をふやすのかというご質問でありました。

 現行の農業予算は、総額約二兆円です。そのうち農業土木事業費は、だいぶ減らされてきていますが、二〇〇八年度で六千六百七十七億円です。そのうち国営かんがい排水事業が約三分の一を占め、その大きな部分がダム建設費です。この部分の多くは不要不急、ないし後回しにできる予算といえると思います。ですから、農業土木事業費のうち、三分の一くらいは価格・所得対策の方にまわせるのではないか。つまり、現行農業予算の中の組み替えで二千億円程度をねん出する。そうすると残り二千億円程度となります。

 この部分は、農業予算の増額を考えなければなりません。農業予算は、小泉「構造改革」が始まる前には、二兆八千億円を超えていたのが、二兆円まで減らされているわけですから、このうち二千億円程度はまず戻しなさいということです。これがおおまかな私たちの見通しですが、その気になればできる現実的なものではないでしょうか。

 発言では四千億円といっても実感がわかない(笑い)、どの程度の額かという話がありました。私も、億という単位のお金は、触ったこともないので実感がわきません(笑い)。ただこういうたとえができるかもしれません。漁船「清徳丸」を沈めたイージス艦は、一隻千四百億円もするんですよ。四千億円といったらその三隻分です。あんな軍艦を三隻買うよりも、農業を建て直す方が先なのではないでしょうか。(大きな拍手)

 こういうたとえもできます。国の予算はだいたい年間約五十兆円ですから、四千億円というのは、だいたい百分の一といったところです。ですから、だいたい三十万円の家計でいいましたら、三千円くらいのやりくりで可能になりますね。これは政治の姿勢一つでやれるのではないですか。財源の点でも、「農業再生プラン」は無理のない形での提案になっているということを、紹介しておきたいと思います。(拍手)

新規就農者に国の支援を――若者の就農を応援しない政治でいいのか
 新規農業者の支援をどうするかについての発言がありました。これは、みなさんもたいへんに胸を痛めている問題だろうと思います。後継ぎがいる農家は、ごくごく一部で、どこでもたいへんうらやましがられる状況ですね。

 「農業再生プラン」では、「新規就農者に月十五万円を三年間支給する『就農者支援制度』を確立する」ことを提案しています。これも当たり前の要求です。

 たとえば、フランスでは、一定の要件をみたす青年農業者が、農業経営を開始する場合に、国として就農助成金を支給しています。助成額は、単身の場合で、山岳地帯で二百十六万円から四百七十万円、平地でも百四万円から二百二十七万円程度になります。かなり手厚い助成ですね。この助成金をうけて就農した人数は、年間約九千人に達する。そのため、フランスでは四十五歳から五十四歳という年齢層が農業人口のうちの主力を占めています。

 若い方が、農業の道を選んだら、少なくとも三年間くらいは、技術・知識を身につけるのにかかりますね。その期間はしっかり助成をおこない、安心してこの道に踏み出せるように支援するのは、政治の当たり前の責任です。

 農業を支えているのは人間です。いくら価格保障をやっても、後継ぎがいなかったら、担い手がいなくなったら、農業は立ち行きません。ですから、ぜひ新規就農者への支援を実現させていきたいと思います。(拍手)

 日本でも、全国四十七都道府県のほとんどで、自治体として独自に新規就農者への支援をやっています。そのなかで十七道県では、青年農業者確保のために、月数万円から十万円、一年から三年程度の助成をおこなっています。これにたいして、政府の青年農業者への支援措置は、せいぜい無利子融資にとどまっています。自治体でも苦労しながらやっている。これを国が応援しないでどうするんだということを言いたいと思います。(大きな拍手)

生産調整――転作作物の条件を良くして、農家が自主的に選択できるように
 発言のなかで減反についてどう考えるかについて質問がありました。「農業再生プラン」は、生産調整は必要だという立場です。ただ、生産調整をする場合にも、転作作物の条件を思い切って良くしなければいけません。先ほどの発言で、コメから大豆への転作で頑張ってみたが、大豆の生産者価格は一キロ四十四円だということでした。涙がでるような価格です。これでは転作といったって先がないわけです。

 「農業再生プラン」では、「転作作物の条件を思い切って有利にすべきだ」と主張しています。ここでも価格保障、所得補償をおこなうべきです。「プラン」では、コメとともに、麦、大豆、畜産、野菜、果樹なども、価格・所得対策をおこなうことを提案しています。こうやって転作作物の条件を良くすることで、転作は農家が自主的・自発的な判断で選択できるようなやり方をとるべきだというのが、私たちの考えです。

 そういう努力ぬきに、未達成の農家、地域には補助金をカットするというような強権的・強制的なやり方はよくない。減反の強制が、どれほど農業者の心を傷つけ、意欲を損なってきたか。はかりしれません。しかも輸入をしながら、さらに米価の下支えの仕組みを取り払いながら、強制的な減反を押し付けるというやり方は、許すわけにはいきません(「そうだ」の声、大きな拍手)。

自給率を上げると困る勢力は――根本からいうと相手は財界とアメリカ
 発言のなかで、「食料自給率を上げると、困る勢力があるのでは」という質問がだされました。ズバリいえば、それは財界とアメリカだと思うのです。

 日本の財界は、派遣労働に代表される不安定雇用、過労死を生み出す長時間労働など、奴隷のようなひどいやり方で労働者を搾り上げて、コスト削減を究極まですすめて、海外に大量の輸出をおこなって、空前のもうけをあげています。自分たちが輸出で大もうけを自由にやるためには、それとひきかえに日本の農業を人身御供のように差し出す必要がある。そこで「自由化をやれ」という大号令をかけてきたのです。

 先ほど、経済財政諮問会議に参加している大学教授が、完全自由化の場合、自給率が12%になるという数字を見て、「結構残るじゃないか」とのべたという話を紹介しました。これが財界の中枢の考えなのです。農業などなくなったっていい。株式会社による農地所有や利用を自由化せよ。農地をつぶして工場にしてしまってもいい。農産物を外国から安く買えばいいじゃないかという話です。しかし最初にお話ししたように、世界では、こういう考えでは立ち行かなくなっているのです。そこがわからないで、自分の目先の利益のために、かけがえのない農業を壊して痛痒(つうよう)を感じないというのが財界です。

 そして、もう一つはアメリカです。先ほどブッシュ大統領の話をしましたが、日本に輸入をさんざん強要しておいて、自給できない国は一人前でないなどと、勝手なことをいっています。この発言の裏にあるのが、アメリカの巨大アグリビジネス(農業大企業)といわれる勢力です。この勢力にとっては、日本が自給率を高めることは、自分のもうけ口を失うことになる。巨大な軍事力とともに、全世界の穀物・食料を支配することで、世界に覇権をおよぼそうという思惑が、アメリカの支配層のなかにはあります。それが日本への強烈な輸入強要圧力となっているのです。

 農業問題は、根本的にはここに行きついてきます。相手は、財界とアメリカなのです。そういう点では抜き差しならない対決なのです。その解決のためには、まさに政治の根本的転換が求められているということを、私は訴えたいと思います。(拍手)

ともに手を取り合って、日本農業再生のために共同を広げよう
 ご質問にお答えしきれていない問題もあるかとも思いますが、今日は本当にありがとうございました。(拍手)

 私たちは、今日を皮切りに、全国各地でこうしたシンポジウムにとりくんでいきたいと思います。すでにずいぶんとりくまれておりますが、大・中・小のいろいろな形で、対話を重ねていきたいと決意しております。

 もとより、これは一党一派の問題ではありません。農業者だけの問題でもありません。日本国民全体の存亡にかかった問題ですから、そういう位置付けで頑張りますので、どうか、ともに手を取り合って日本農業再生のために頑張りましょう。(大きな拍手)

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農業シンポ会場からの発言
 パネリストの発言のあと、会場の参加者十二人から活発な発言が続きました。

 元高校教員は「新規就農者に月十五万円という提案はすばらしい。子どもたちに希望を与え、新しく農業に入っていけるようにしてほしい」と発言。大学教員は「農業政策というのは消費者の問題。国民の問題だと思う。プランの三章、四章を先にもってくるべきでは」「WTOの枠組みをどう考えるか」と聞きました。

 岩手県から参加した男性は「転作の大豆は一キロ四十四円。大豆をいっぱい取ろうという気にならない」と嘆きました。山形県からの参加者は「世論を盛り上げ、政治を変えて農家が楽しんでやれる農業にしてもらいたい」と発言しました。

 青森県からの参加者は「プランは大規模農家を励ましてくれている」と発言。地元大仙市からの参加者は「農業の衰退と社会の荒廃が結びついている気がする」とのべました。

 九十歳の男性は「農協はなぜ選挙のたびに自民党を推すのか」と疑問を語り、横手市からの参加者は「環境のためにも、地産地消をすすめるべきだ」と提起しました。

 専業農家の男性は「日本の農業はもっと自給率を上げられる。これを上げると困る勢力があるのではないか」と質問。八十歳代の参加者は「私たちは戦前、戦後と政府にだまされてきた。減反をすると米の価格が上がると言われ、それを信じてきた。共産党のいうことが一番正しい」と声を強めました。

 再生プランをじっくり読んできたと語る男性は「プランの財源的裏付けはあるのか。(上積みの)四千億円とはどの程度のカネなのか。絵に描いたモチではないことを解明してほしい」と質問。秋田市から参加した主婦は「このプランを実現し、農業を生き生きさせ、子どもたちの声でにぎわうような農村風景を取り戻したい」と話しました。

(出所:日本共産党HP 2008年4月23日(水)「しんぶん赤旗」) 
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1 コメント

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Unknown (名無し)
2008-04-30 22:07:29
 日本の米が中国に輸出され
苺が北欧に輸出され・・・共に大好評

もう、日本の米が食えなくなるのかな・・・
今から大量に作っても高く売れる海外に流れちゃうんですかね・・・
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