未来を信じ、未来に生きる。

今に流されず、正論を認識し、社会貢献していく人生を切り拓くブログ道。

労働経済白書が異例の指摘ー大企業は内部留保や株式配当を増やしたが、賃金は増やさなかったと分析ー

2009-07-01 19:49:59 | 国内経済
大企業が内部留保増
労働経済白書異例の指摘 賃金に向けられず

--------------------------------------------------------------------------------

 厚生労働省が30日公表した2009年版労働経済白書は、日本の大企業(資本金10億円以上)は内部留保や株式配当を増やしたが、賃金は増やさなかったと分析しました。同白書が内部留保に言及してこうした指摘を行うのは異例。

 白書は、昨年秋からの景気後退が深刻化した理由について、外需主導の成長が所得向上につながらないままだったことに加え、アメリカの金融不安で大きな経済収縮が引き起こされたと指摘。今後の展望として、経済収縮のもとでも雇用の安定を確保する「長期雇用システム」が基本だとの認識を示しました。

 白書は、日本の大企業では、利益剰余金が2000年度の88兆円から07年度の135兆円に増えるなど、内部留保が増加していることを指摘。同時に、株主への配当は増やしながら、「賃金の支払いに向かう部分はあまり大きくなかった」と述べています。

 こうした賃金低下傾向の原因として、小規模事業所(5人~29人)で05年から連続で賃金が低下するとともに、低賃金の非正規労働者が増加していると分析。国内需要を回復させるために、所得増加と格差縮小などが必要だとしています。

 また、非正規労働者の解雇、雇い止めについて、「増加テンポは、過去の景気循環と比較しても著しく大きい」と述べ、若年不安定就業者の正規雇用化が労働政策の主要課題だとしています。

景気“底打ち”いうけど
求人倍率最低0.44倍
失業率悪化5.2%

--------------------------------------------------------------------------------

 麻生自民・公明政権は景気「底打ち」を宣言したものの、雇用情勢が一段と悪化しています。政府が30日発表した雇用関係の統計で明らかになりました。

--------------------------------------------------------------------------------

 政府統計によると、5月の有効求人倍率は0・44倍で、調査開始以来の最低を更新しました。正社員の求人は0・24倍で、1年前の半分以下に低下しました。一方、5月の完全失業率は5・2%と前月比0・2ポイント悪化。失業率の悪化は4カ月連続で、過去最悪の5・5%に迫っています。完全失業者数は前年同月比77万人増の347万人。増加幅は過去最大となりました。解雇など勤め先の都合や雇い止めによる失業が増えたためです。

 非正規労働者の失職は依然として増えています。昨年10月から今年9月までの失職者(予定を含む)は22万人を超えました。

 給与は減少しています。5月の現金給与総額は前年同月比2・9%減の26万7395円と12カ月連続のマイナスとなりました。

 政府は6月の月例経済報告で景気の基調判断から7カ月ぶりに「悪化」の表現を削除。「(景気は)底を打ったと強く推定できる」(与謝野馨経済財政担当相、6月17日)と事実上の「底打ち」を宣言しました。理由は、輸出と生産が上向きになったことでした。しかし、製造業を中心に輸出大企業は一段と「雇用調整」を進めており、「(雇用情勢は)さらに厳しさを増している」(厚生労働省)状況です。労働者にしわ寄せすることで、収益改善を図ろうとする大企業の身勝手さに歯止めをかけ、雇用を守る社会的責任を果たさせることこそが求められています。

(出所:日本共産党HP 2009年7月1日(水)「しんぶん赤旗」)

けいざいそもそも
内部留保ってなに

--------------------------------------------------------------------------------

 巨額にのぼる大企業の「内部留保」の活用が、雇用や下請けの営業を守るための「体力」として期待されています。この「内部留保」とはどんなものなのでしょうか。(吉川方人)

--------------------------------------------------------------------------------

社内に残った利益

 財務省の「法人企業統計年報」の担当者は、「『法人企業統計年報』では内部留保を『当期純利益』から『配当金』を差し引いたものと定義しています」といいます。

 つまり、それぞれの期間に企業が稼いだ利益から株主への配当金を除いたものです。配当金は社外に流出しますが、それ以外の部分の利益は社内に残されます。これは、利益の面から見た内部留保の定義です。

 また、「法人企業統計年報」では、資金調達の面からみた内部留保の定義もしています。

 財務省の担当者は、「資金調達には、株式、社債などの発行で外部からお金を調達する外部調達と、社内からの資金調達があります。内部留保は社内調達資金に分類されています」といいます。

狭義と広義がある

 資金調達の面から見た場合、財務省の内部留保の定義は、利益剰余金、その他資本剰余金、引当金、特別法上の準備金、土地の再評価差額金、金融商品に係る時価評価差額金、自己株式の増減額、その他の負債(未払金等)の増減額の合計とされています。

 このうち、利益剰余金は、繰越利益などを積み上げたもので「狭義の内部留保」といわれます。その他、実際には支出していないのに隠し利益として企業内に蓄えられている引当金や準備金などを加えたものが「広義の内部留保」といわれます。企業の決算で貸借対照表上のこれらの項目を合計すれば、内部留保の積み上げ額が計算できます。

大企業ほど大きい

 内部留保は、大企業ほど大きく積み上がっています。「法人企業統計」によると、内部留保の大きな部分を占める利益剰余金は、資本金十億円以上の大企業製造業で、十年間におよそ三倍にも膨らんでいます。これに対して、資本金二百万円未満の小・零細企業では、一時マイナスにまで落ち込み、回復しても、蓄積をすべて使い尽くしてしまった状態が続いています。

 ところが、大企業は内部留保を取り崩すと経営が立ち行かなくなるなどと主張しています。それについて、会計学が専門の角瀬保雄法政大学名誉教授は次のように指摘します。

 「日本の大企業は、内部留保を崩したからといって経営困難になるような状態ではありません。キヤノンなどは二〇〇八年十二月期に減収減益といっても、利益剰余金を前年同期に比べ千六百四十一億円も増やしています。雇用を維持する体力は十分にあります。大企業が雇用よりも内部留保のためこみを優先し、企業の買収・合併に使う姿勢を強めていることが問題です」

 また、剰余金を取り崩すには、総会決議が必要なので難しいという一部の主張について、こう解説します。

 「剰余金は、労働者の賃金を先に支払い、つくりだされた利益から配当を差し引いた残りなので、雇用を維持するために特別な総会決議はいりません」

(出所:日本共産党HP 2009年4月21日(火)「しんぶん赤旗」)

内部留保 雇用のため使えないのか
大企業の言い分を検証する

--------------------------------------------------------------------------------

 「減益」や「赤字予想」を理由に、輸出大企業を中心とした「非正規労働者切り」が横行しています。「これまで空前の利益をあげてきた大企業のもうけはどこにいったのか」「ため込んだお金の一部を使えば雇用は守れるはず」という声が、世論となっています。しかし、財界・大企業は、内部留保を取り崩すことは難しいという姿勢です。一部の商業メディアも財界・大企業の言い分に同調しています。内部留保は、本当に取り崩せないものなのでしょうか。(吉川方人)

--------------------------------------------------------------------------------

経営が大変になる?

 Q 内部留保を取り崩すと経営が大変になる?

 A 雇用を維持するためには、内部留保のほんの一部分を取り崩すだけで十分です。経営に影響するような額ではありません。

 今、人間を使い捨てにする「非正規労働者切り」や解雇・リストラをくり返している輸出大企業はこれまで、非正規労働者を安く使うことで、バブル期を超えるばく大な利益をあげてきました。

 このもうけは、巨大な内部留保としてため込まれています。

 その額は、製造業の大企業(資本金十億円以上)だけで、一九九七年度末の八十七・九兆円から二〇〇七年度末までの十年間に三十二・一兆円も増え、積み上がった額は百二十兆円に達しています。

 派遣業の業界団体は、三月末までに職を失う非正規労働者を約四十万人と推計しています。非正規労働者の平均年収を三百万円とすると、四十万人分で一兆二千億円です。

 製造業大企業の内部留保のわずか1%にすぎません。

 これだけで経営が大変になるとは考えられません。それなのに大企業経営者は、内部留保を使うことをかたくなに拒み、無情に非正規労働者の解雇を続けているのです。

設備投資に回ってる?

 Q 設備投資に回っている?

 A 内部留保は設備投資などに使って機械などになっているし、内部留保がなければ設備投資ができないという主張もあります。

 しかし、実際に大企業の内部留保などを使った新規投資の動きを見ると、新しい機械などへの設備投資よりも、投機を含む有価証券などへの投資に多くの金額が回されているのが実態です。

 製造業の大企業の内部留保が九七年度から十年間で三十二・一兆円も増えているのに、工場や設備などの資産は逆に減少しています。

 機械や土地、建物などの「有形固定資産」は、九七年度の六十八・七兆円から〇七年度の六十七・二兆円と一・五兆円減少しています。

 これに対して、「投資有価証券」は、九七年度の三十二・七兆円から〇七年度の六十六・七兆円に倍増しています。

 設備投資に必要な額よりもはるかに多くの資金が企業内部にたくわえられ、その多くが金融資産への投資に使われているのです。

 内部留保を多少取り崩したとしても、設備投資ができないなどということはありません。

手元資金は少ない?

 Q 手元資金は少ない?

 A 大企業の内部留保は、現金などの流動性の高い形では保有していないので、資金繰りが困るという主張もあります。

 確かに現金や預金などの「手元資金」は、製造業の大企業で〇七年度末に二十一・一兆円と十年前の三十四・八兆円から減少しています。しかし、これは、「手元資金」を投資有価証券などの金融資産への投資に振り向けてきた結果です。

 投資有価証券は、〇七年度の六十六・七兆円に十年間で二倍にまで膨張しています。

 今ある「手元資金」だけでも、非正規労働者四十万人の雇用維持分の一・二兆円などは、十分捻出(ねんしゅつ)できるはずです。どうしても足りないというのであれば、公社債など現金化できる金融資産も多く、金融資産などを担保に資金を調達することもできるはずです。

 巨大な資産を持つ大企業が、手元資金がないからと立場の弱い非正規労働者の解雇を強行するのは、豪邸に住む資産家が、現金を株式などへ投資しておきながら、現金が手元にないからと家政婦を解雇するようなものです。

労働者使い捨て 株主配当は急増

 大企業が労働者の使い捨てをする一方で、株主への配当は急増しています。

 東京証券取引所の統計によると、上場企業製造業の配当総額は、九七年度の約一・三兆円から、〇七年度の約三・七兆円に急増しています。

 新光総合研究所のまとめによると、〇八年度は製造業の経常利益が前年度よりも82・4%の減少となることが予想されています。しかし、年間の予想配当金総額は前年度より一割程度しか減っていません。

 ソニーのように一万六千人ものリストラを計画し、赤字を予測しているのに、配当は増額する計画の大企業まであります。

 株主への配当ばかりが増えていることでは、「貯蓄から投資へ」などといって、投機をあおった政府の責任も重大です。

 政府は、〇三年五月十四日の証券市場活性化関係閣僚等による会合で、企業自らによる「配当性向の向上」を求め、同年の「骨太方針」で、その着実な実施を閣議決定しました。また、証券優遇税制で、配当にかかる税金を本則20%から10%に軽減しました。こうした政府の旗振りのもとで企業は配当ばかりを優先して増やす一方、賃金や下請け単価は抑え付けてきました。異常に増えた配当をもとに戻すだけでも、雇用を維持する資金は十分にできます。

--------------------------------------------------------------------------------

 内部留保 企業が年々のもうけをため込んだもの。各年の利益から配当を引いた部分をため込む「利益剰余金」、資本取引などでのもうけをため込む「資本剰余金」、実際には支出していないのに隠し利益としてため込む各種引当金などが含まれます。

 これらは、企業の財務諸表の中の貸借対照表の「純資産の部」「負債の部」で計算することができます。しかし、内部留保をどのような形の資産で持っているかはこれだけでは分かりません。

 しかし、同じ貸借対照表の「資産の部」に示されている企業資産全体での内訳を見れば、設備や現金、金融資産の増減の傾向から、ため込みがどのような資産で増えているのか分かります。

(出所:日本共産党HP 2009年2月13日(金)「しんぶん赤旗」)
コメント (7)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« NHK「日曜討論」-日本共... | トップ | 水俣病被害者救済に関する共... »

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
出所。 (東西)
2009-07-01 19:55:57
図表1:増える内部留保と配当金

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-07-01/2009070101_02_1.html

図表2:完全失業率と有効求人倍率

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-07-01/2009070101_01_1.html
返信する
出所。 (東西)
2009-07-01 20:05:15
 図表1:製造業の規模別利益剰余金の推移。

 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-04-21/2009042108_01_0.html

 図表2:大企業製造業の資産の増減。

 図表3:東証上場製造業(3月期決算)の経常利益と配当金総額の推移。

 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2009-02-13/2009021303_02_0.html
返信する
Unknown (todo)
2009-07-01 20:31:52
今、一気に労働配分率は上がってますよ。
稼働率が上がれば労働配分率が下がるのは当然でしょう。固定給でやってるんだから。
内部留保があるところは潰れない、そうでないところは潰れる。
個人だって内部留保がなければ派遣村。
シビアな時代ですな。供託金カンパなんて無駄はとんでもない。まるで中核女みたいなもんです。
返信する
todoさんへ。 (東西南北)
2009-07-01 20:52:25
 大企業全体では、問題なく内部留保の蓄積があるし、株式配当も増やしている。利益も挙げている。

 個別企業で見るのではなく、大企業全体で見れば、十分に租税負担能力はあるし、雇用責任を果たす力もあります。

 中小企業の経営者は報酬を減らしていますが、大企業の経営者は報酬を増やしていますよ。とんでもないことです。

 消費不況の時こそ、大企業・大資産家・高額所得者に応分の負担を求める増税を求め、賃金の底上げ、雇用の安定化、社会保障・教育の充実を実現しなければなりません。

 消費不況を脱却するには、大企業の利益第一主義を税財政機能で規制強化するしかありません。

 
返信する
詳細は日本共産党の総選挙政策をご覧になってください。 (東西南北)
2009-07-01 21:04:39
 日本共産党の総選挙特集。

http://www.jcp.or.jp/giin/senkyo.html
返信する
そういえば・・・ (くろねこ)
2009-07-01 21:47:54
 今年は、なぜか?どういうわけか?
 「正規公務員」のボーナス(期末手当?勤勉手当?とも言う)は、マスコミは一切騒がないな?

「自民・創価・霞ヶ関」連合で「報道規制」でもしたのかな???

 確か、6月30日支給だった気がするが???
返信する
Unknown (すまり)
2009-07-01 21:59:53
賃金(固定給)を上げれば、未来永劫それに縛られる。
株主配当は、利益が減れば減らせる。
内部留保は、現在どんどん食いつぶしている状態。

もし大企業が内部留保を「景気よく賃金アップにつなげていたら」、とっくにつぶれているところも多いはず。

それに「利益が出たから即賃金上げろ」は「利益が出なかったから即賃金下げる」とセットの考えじゃなかったらならないはず。

まあ、以前「5年で増やした内部留保」>「一年の人件費アップ」だから、人件費がアップしても内部留保が増えない程度で問題ないと、諸学生でもわかる足し算引き算ができない人だから、理解できないだろうけど。


第一、あのトヨタが借金したという事実の意味を理解しているのか?それくらい運転資金が切迫してきているってことだよ。トヨタは金を借りなくても、運転資金を自分で用意できるくらい内部に金があった企業。そこが借金しなきゃ運転資金を捻出できないということは、つまり「内部留保を使い切り始めた」ってことだよ。あれだけ貯め過ぎだと批判していたものがもうないってことの意味わかる?内部留保がなかったら、GMのようになっていたってこと。それが労働者の利益につながるの?
返信する

コメントを投稿

国内経済」カテゴリの最新記事