悠々time・・・はなしの海     

大学院であまり役に立ちそうもない勉強をしたり、陶芸、歌舞伎・能、カメラ、ときどき八ヶ岳で畑仕事、60代最後半です。

ポップアートの世界

2006-03-20 15:54:32 | 文化・文明


(10数年前に作られた沖電気工業のTelephone Card。これもポップアート)


ポップアートというのは、発生の当初は、雑誌や広告、漫画、アニメや報道
写真などを素材として、アメリカの大量生産・大量消費社会の風景の一部
である商品や広告を素材として新しい風景画を描こうとしたもので、雑誌の
切抜きで「コラージュ」を作ることなどから始まったが、ポップという名称は、
初めから意識して名ずけたものではなく、1950年代のイギリスの若い芸術
家たちの活動の中から、特徴的な呼び名として使われ始めた名称である。

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<コラージュ>

コラージュとは、現代絵画の技法の一つで、新聞や布切れや針金やビー
ズなどを組み合わせて絵画に貼り付けていくことにより、特殊な効果を生
み出す技法である。コラージュは、フランス語の「糊付け」を意味する言葉
だが、この技法を写真に応用したものがフォトコラージュ、アイドルの顔を
他のヌード写真などに付けることをアイドルコラージュという。

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<「ポップアート」という名称の由来>

そもそも「ポップアート」という言葉は、1956年にイギリスのアーティスト、
リチャード・ハミルトンが、雑誌や広告の商品やモデル写真を切り貼りした
コラージュをつくり、その中のキャンディの包み紙に書いてあった「POP」と
の文字が強い印象与え、その後「ポップアート」という表現が使われるよう
になったといわれる。

また一方では同年、評論家のローレンス・アロウェイが、当時の商業デザ
インなどを指して「ポピュラーなアート」という意味で「ポップアート」という
言葉を使い始めてから、という説もある。

いづれにしても、私が、ポップという名称から受ける印象は、大衆的、通俗
的、一過性、消耗品、安価、大量、そこら中にある、といった意味合いを込
めた「若々しさ」「ウキウキする」「しゃれている」「魅力的な」「軽妙」といっ
た印象を受けるのだが、1950年代から60年代にかけて、極く普通の日常
的なアメリカの大衆文化もそのようなものだったのかもしれない。

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<ポップはイギリスで発芽し、アメリカで開花>

そのようにアメリカにとっては極く普通の大衆文化であったが、イギリスか
ら見れば、戦後の日本がアメリカの文化を眩しく見た時期があったと同様
に、格好いい、憧れの大衆文化と写った。そのアメリカの大衆文化を素材
にした一種の前衛的な芸術活動が、イギリスの優秀で先鋭的な若い芸術
家たちから沸き起こった。その新しい芸術表現活動が後からポップと名付
けられて、次第に盛んになっていった。

その活動がアメリカに渡った当初は、芸術の素材として、大衆化された日
常用品をコラージュに使うことについて強烈な反発を受けたが、1960年代
になって、ロイ・リキテンスタインや商業デザインをやっていたアンディ・
ウォーホル(orウォ-ホ-ル)が出現して、コミックスの拡大模写やシルクス
クリーン技法による大量生産を行うようになって、この一種グロテスクな
ポップアートは、当時の芸術の主流であったモダニズムのグッドデザイン
を吹き飛ばすほどの流行を極めることとなった。

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<アンディ・ウォ-ホルと日本>

1974年に、アンディ・ウォ-ホルは日本に来たが、1984年頃、TDKのビデ
オカセットテープのCMや、ファッションショーに出演して強烈な印象を与え
た。彼は日本でも有名な美術家であり、芸術家であり、商業デザイナーで
あり、映画の制作者として知られている

私は、ミック・ジャガーやマイケル・ジャックソンを初めとする有名人たちの
ポートレートの制作者として、あるいは映画の制作者として、あるいは現代
美術界のスターとして彼を知った。
1987年に亡くなったが、アメリカのポップアーチストとしては、一番有名な
のではないかと思われる。もっとも、彼をポップアーチストという表現だけで
言い表せるのかどうか分からない。

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<日本のポップアート>

現代の日本では、「コラージュ」に対する一般大衆の認識は、ポップアート
という表現よりは、前衛芸術としての範疇で捉えている向きが多い。
日本では、一般大衆の見る目は、ポップアートという分野は未だ際物であり
商業美術、商業広告、広告美術としてのアートであれば高い評価を受ける。

因みに、私が作品の内容を知っている、前衛芸術から現代のポップアート
に至る芸術家は次の4~5人程度しかいない。岡本太郎、大竹伸朗、横尾
忠則、東松照明(写真家)、村上隆。他に名前だけ知っているという人は
数人いるが作品の内容は知らない。

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<村上隆の挑戦>

現に、海外で有名になったことにより日本国内でも最も旬な、そして有名
なポップアーチストとして活躍している「村上隆」が、玩具のタカラなど
と組んで彼のアート作品を食玩として、しかもコンビニで350円で販売する
という発表会の席で、次のように言っている。

「日本で個展を開いてもこんなに記者が集まらないし、アートへの評価は
 恐ろしく低い。海外では一部のハイソサエティの人たちのものになって
 いる。日本においてはアートが大衆に受け入れられなければダメで、そ
 ういった意味ではおもちゃとして、本物のアートがコンビニで販売され
 るのは、長い美術の歴史の中で改革となる」

彼が「改革」という意味は、アニメや漫画という「サブカルチャー」が、
おもちゃという媒体を使って「ハイカルチャー」に溶け込んでいくことを
云っている。

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(アート、カルチャー論はつづく)


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