岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

報告「天童大人プデュース:詩人の聲」参戦1

2013年09月24日 23時59分59秒 | 岩田亨の作品紹介
「詩人の聲」岩田亨公演 於)自由が丘 La Voix des Poe'tes(画廊)

 9月21日(土)


 La Veix des Poe'tesは小さな画廊である。併し「芸術の誕生の匂い」がした。

 そこで僕は初めて人前で短歌を「朗唱」した。そこでは僕の短歌の「本質」に関する事も初めて公表した。150首以上の短歌を詠み、間に「語り」を入れた。

 150首すべてをここに書くのは出来ないので、語りを含めた部分だけに限定したい。(なお『参戦』とタイトルを入れたのは、多くの参加者が、口語自由詩を作る詩人だからである)

 「あえいおえおあお かけきくけこかこ(声のリハーサル)」

 巻頭4首

・三四郎が顔出しそうな洋食屋 針も止まりし時計もありて

 これは西暦2000年6月のNHK歌壇で、私が師と仰ぐ尾崎左永子氏のよっ第一席とされた作品です。私が短歌に本格的に取り組むきっかけとなった一首です。

・わが顔は今朝はいかんと思うまで悪しき夢見し昨夜を思う

 これは、その尾崎左永子氏によって、初めて『星座』という雑誌で秀歌とされた作品です。

・オリオンもサソリも星となりたるに今なお同じ空には出でず

 これは『星座』の選者、奈賀美和子氏によって、初めて注目された一首です。

・沸騰せるケトルの笛の鳴る音を潮時として受話器を置きぬ

 これは『運河』という雑誌の選者、堀山庄次氏によって、秀歌とされたものの一つです。


 先日『星座α』という雑誌の歌会で、「何故短歌を詠むか」ということが話題になりました。私は即座に、「断腸の思いをしたときに短歌という詩形があった」と答えました。今回はこのプロジェクトへのお目見えですので、私が何故短歌という表現方法を選んだか。その背景についてもお伝えできればと思います。

 では本文に入ります。


・傷口に白く濁れるワセリンをぬり込む陽光淡き日の暮れ

 これは、或る歌人から塚本邦雄的であると批評されました。『写生』を突き詰めれば『象徴』に至るという、斎藤茂吉の言葉を私に知らしめた作品です。


・幾百の鳥の飛び交うこの森に未だ見ぬものその墓どころ

 尾崎左永子氏の作品に、「岩の間に野鳥の骨が白く乾いている」というものがあります。「そんなものは見たことがないぞ」と生意気な心で詠んだ作品です。


・応援のわれの姿を一目見て走る時の間児は追い越さる

 この「児」がどういう子か後ほどお話しします。


・戦乱をくぐり来たれる来た近江 村はそれぞれ仏を祀る

・湖の北岸に立つ寺のなか木彫り仏はしなやかに立つ

 この二首は、私が短歌の方向性を見いだせなかった時、幼い時より好きだった、神社、仏閣、城、歴史といった原点に立ち帰ろうとした時の作品です。


・雲海に映る影あり わが立てるこの山頂の形するどく

 実はこれは「雲海」ではなく「樹海」、「山頂」ではなく「富士山八合目」です。詩としての効果を上げるためにフィクションを導入しました。これは土屋文明との大きな違いです。

・出羽越後会津下野伏見灘 こころは遊ぶ酒を飲むとき

 この作品は批評の時に、上の句のリズム感が話題となりました。「地名の組合せに苦労したでしょう」と言われましたが、これは私がヤケ酒を飲んでいる時、コップ片手に即興で作ったもの。それほど五句三十一音が沁み込んでいるのは、中学生の時に百人一首を全部覚えたからでしょうか。


・わが想いをひとり守ってゆくほどの覚悟はありやと日記に記す

 私は好んで日記を歌の中に詠みこみます。しかし小学校三年生を最後に日記はつけておりません。

・一人居の部屋に帰りてあてどなく夜の林檎を音たてて食む

 かつて私が学習塾を営んでいたとき、英語を教えていた生徒が「This is for you」と覚えたての英語で、お土産の林檎をくれて、非常に喜んだ時の作品です。


・安息を求める今日はおもむろに壁にかかれるジオラマはず

 ここで言う「ジオラマ」は、立体模型ではなく「透視図」のことですが、実際に外したのは暑苦しくて、しつこい油絵でした。

・戦時には防空壕になるべしと思いてわれは地下駅に立つ

 これは地下鉄半蔵門線の永田町駅での連想に基づいた作品です。

・軍装を解くがごとくに背広脱ぎ退社してより二十年

 諦念退職して20年、80歳の高齢者の作品と思われました。実際には大学卒業後「脱サラ」をして学習塾を始めて、20年経ったときの作品です。

・わが記憶たどりて歩む路地裏に八手の花が今年も開く

 私の生まれた家を訪問した時の回想に基づくものです。

・冬の陽の満ちたるここの公園に年齢不詳の猫が群れいる

 これは実際には「猫」ではなく、電車の中で見かけた厚化粧のオバサン四人のことです。そこから連想しました。

・この丘より盆地が見え街が見えその中央に教会が見ゆ

 これは会津盆地と函館の街の印象をミックスしたものです。

・戦況を報じるニュースその間にも新種ウィルス増え行くという

 今も地球のどこかで戦争が続いています。しかしその一方で、エイズ、新型インフルエンザなどの「新種ウィルス」人間の文明を脅かしています。

・明白に否定するのも厭わしくわれはしばらく沈黙をせり

 私にしつこい「いやがらせ」をする人がいました。その人のことです。この作品をその人の前で披露すると、「俺のことか」とその人は言いましたが、私は「いいや」と恍けました。

・雨の日の乗る人のなきゴンドラを揺らして回る大観覧車

 私が短歌に関わる原点に関わる歌です。私には「生き別れ」になった娘が二人います先ほどの「運動会の子」は下の娘です。面接交渉に私が指定した、港北ニュータウンの阪急デパートの害観覧者の見える喫茶店。舞っても待っても、娘たちは母親を憚って来ませんでした。先ほどの断腸の思いとはこのことです。その二人の娘も今年で成人になりました。こういうことを受け入れられる年齢になったと思い、ここに公表します。

 それでは時間まで、作品を言葉で打ち込みます。

 一時間の「朗詠」はきつかった。しかしこの体験を通じて、音感がさらに体に沁みこんだ気がした。(次回は、11月26日(火)広尾ギャラリー華)

 また、二次会で収穫が二つ。

 一つは聞きに来てくれた一人の若者。「かばん」に所属しているが、「このところの穂村弘、斎藤斉藤の歌が分からない。どうしても言葉遊びになる。」という発言。「若者のカリスマ」と呼ばれた穂村弘だが、順調万版とはいかないようだ。

 もう一つは、八丈島のさらに南の「青ヶ島」から聞きに来てくれた人。。焼酎の醸造を家業としているが、その焼酎の旨いこと。「臭さ」が全くない。これは「おすすめ」。僕は焼酎に悪酔いするのだが全くそういうことはなかった。

(「青ヶ島酒造・青酎麦」
  TEL04996-9-1035・FAX04996-9-0136)
   6本以上の注文で送料無料)











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