2001年5月「NHK歌壇」佳作作品。題詠「飛ぶまたは跳ぶ」。選者:高野公彦。
原案の下の句は「鳥人ブブカはフィールドを去る」だった。
2001年当時、棒高跳びの選手に「鳥人」と呼ばれるブブカという名の棒高跳び選手がいた。旧ソ連の選手だったが、ソ連崩壊後の経済混乱のなかで練習が不十分でなく、栄養状態もよくないと聞いた。
国際大会の度に世界記録を更新し、抜群の実力があったにもかかわらず、オリンピックでは予選落ちだったか。とにかく惨めな敗退だった。
それに心が動いたのだが、10年後・20年後にブブカの名をどれだけの人が憶えているだろうかと思い、「選手それぞれ」と直した。成功だったようである。
それと、「跳躍の形を空に残す」という表現が選手の跳ぶ姿の残像が残っているようで、これもよかったと思う。
歌集「夜の林檎」に収録したが、これが「NHK歌壇」最後の投稿となった。「勝負は雑誌のなかで」。所属誌への投稿と茂吉・佐太郎の実作と歌論を読むことに力を一層入れ始めたのはこのころだった。
