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岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

佐藤佐太郎の「難解歌」:那智の滝の歌

2009年11月07日 21時39分01秒 | 佐藤佐太郎の短歌を読む
學燈社の「國文学」臨時増刊号(1998年11月)には「名歌・問題歌・難解歌の謎」と題した企画があって、82人の歌人の作品が一首づつとりあげられている。佐藤佐太郎の作品もこの中に含まれている。次の一首である。

・冬山の青岸渡寺の庭に出でて風にかたむく那智の滝みゆ・

 景が大きくてわかりやすいと思うのだが、これが「難解」な理由は「那智の大瀑が少々の風に傾くはずがない。これは作者の心情の作用である。」というのである。

 佐太郎の自註は明快で、「風の強い日で、ときどき滝の風にたなびくのが見えた」である。「見えたからそう詠んだのだ」と居直っているように聞こえなくもないが、「見たままを詠む」と「大胆な詩的把握をする」という二つの要素が結びついたものともいえる。実際には水煙だったかも知れない。しかし、

   「風に傾く水煙見ゆ」

では面白くも何ともない。

 また、「那智の滝」という固有名詞が活きている。その上「静岸渡寺」とさらに固有名詞が畳みかけられている。こういう詠み方は佐太郎にしては珍しい。







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