「運河の会」年末記念会 於)ゆーぽーと(五反田)
「年末記念会」は、所謂「忘年会」だ。その年に出版された会員の歌集が紹介される。近畿、東北の会委員たちとも再会できる。1年の締めくくる意味もある。
とりわけ今年は、「運河賞」次席の辞退、「斎藤茂吉と佐藤佐太郎」の出版ということがあっただけに、僕にとっては、特別な意味があった。
しかも、長澤元代表の追悼の会もあった。「会員が意気消沈した会」になるのではないか、という危惧もあった。
当日、先ず「運河賞」の発表と表彰が行われた。審査委員から発表があって、その中で「岩田さんが次席となっていますが、発表済の作品があると、自ら気づかれて御辞退されました。」というコメントがあった。その後に表彰。そののち乾杯、懇談となった。
そこで僕はマイクを取って、次のように言った。
「次席を辞退した岩田です。今『自ら気づかれて辞退』と話がありましたが、かなり違うので、ここで申し上げます。12月1日の午前中に発行所から電話がありました。発表済みの作品が混ざっている。という匿名の電話がありました。辞退して頂けないかという電話です。私は毎日歌を詠みます。思いの強いものは、何日にもわたって、心に全く同じものが浮かんできます。『創造の神に錯誤のありしごと毒持つキノコの色がうつくし』などは三度も出てきました。そのすべてが私にとって新作です。ですから問題の作品も別の日に浮かんできたものです。発表されたものが『さわがしき』とカナ書きになっているのに対し、『運河賞』のものが『騒がしき』と漢字表記となっているのはそのためです。作品の管理が出来ていないと言われればその通りですが、私にとっては新作です。ただ『辞退せよ』と言われたからは、断ることは出来ません。そこで辞退となった訳です。これからも新しい気持ちで、作歌に取り組みます。以上。」
嘘はいかん、と思ったので本当のことを言った。これですっきりした。
次に、歌集、歌書の紹介。僕が出した「斎藤茂吉と佐藤佐太郎」は、佐瀬本雄代表が紹介してくれた。好評だった。客観性、独自性、問題意識、評価の相対性。ここに焦点を当てて頂けた。
どうやらこの本での問題意識は、佐瀬代表が、「運河」一周年のころに持った問題意識と同じだったらしく、「運河一周年特集号」の、長澤元代表との往復書簡のコピーを頂いた。
また何人かの方から、お祝いを頂いた。先輩歌人の歌集批評も依頼された。仲間とは有り難いものだ。
そして長澤元代表の追悼の会。「意気消沈」は杞憂だった。特に二次会での「自由懇談」では、茂吉、佐太郎に学びながら、「何故、歩道短歌会ではないのか」という「運河」の原点の確認が出来た。一言で言えば、「公私混同はしない」「結社への貢献度による席次の昇進はさせない」。という事だ。長澤元代表は何も言わずに、逝かれたが複数の人の証言で明確となった。中には僕と同じ情報を持っているかたもいて、話されたことはほぼ確かだろう。
そして、長澤下代表の残した蔵書「河野愛子歌集」「宮柊二、人と作品」「岡井隆、今朝の言葉Ⅳ」を買い求めた。
とにかく、作歌の新しいスタートを切れそうだ。そんな会だった。
