先週ユネスコの世界記憶遺産への登録が決まった山本作兵衛の炭鉱絵4枚
の一般公開が始まり普段の6倍を越える人数が詰めかけ、旅行代理店からの
問い合わせも続いているというニュースが先日の新聞に載っていた。
‘凄い反響で対応が大変ですよ、ついこの間までは誰も注目しなかったのに’と
市役所職員のお客さんも言うし、一気に炭鉱絵についての勉強をしなくては
いけなくなったらしい。
面白いのが市役所を退職した お客さんの話。
炭鉱絵は戦前の事を描いた絵などもあるので当然ながら坑内で働く女性が
上半身裸だったり、刺青を入れた男達の絵などもけっこうあったそうだ。
悪い事に企業の重役達がその絵でやっているような事をステレオタイプに信用
してしまい炭鉱閉山の頃に再就職をするために企業の面接に行った炭鉱夫達が、
云われなき差別を受けたとして炭鉱絵の公開中止の要請があったという。
それを聞いて思ったのが国を通して世界記憶遺産への登録を申請しても なか
なかやってもらえなかった理由の1つに こういった赤裸々な炭鉱絵が国の役人
達にとって‘あまり触れたくない過去’と先進国の黒歴史的に考え公開どころか
封印したいという姿勢があったのではないかという事。
だから我々地元の住民ですら世間から凄いと言われても‘こんな絵が?’という
感じで実際に石炭・歴史博物館の専用の部屋に所蔵され一般公開も08年以来
だったというのが象徴的である。
ところが世界的に見れば こういう絵こそ貴重な文化的資料になるわけで、世界
的な見方と役人達の見方や価値観が正反対だという事だろう。
思えば私が子供の頃に親(特に母親)から怒られる際の理由で‘体裁が悪い’
というのが多々あった。
いわゆる‘世間体’というヤツで、ある程度は仕方ないが あまりにも拘り過ぎると
却って大事なものを失い事になりかねないと いう事を考えられる世界記憶遺産
登録である。