韓国で勝つ事の難しさ

 先日から40年前に戒厳令下のソウルでKO勝ちして世界王者に返り
咲いた大熊正二の快挙について記しているのだが、実は日本人ボク
サーにとって韓国で勝つというのは至難の業である。

 元々反日感情の強い国でナショナリズムの激しい異様な雰囲気の
中で戦うというのは地元の韓国人選手には凄いアドバンテージにな
る一方、日本人選手にとっては大きなハンデを追って戦う事になる
わけで実際ボクシングの世界戦が多く行われたソウルの奨忠体育館
でのソウル五輪柔道で日本は最終日の斉藤仁の金メダル1つと惨敗し
たのを見ても分かるだろう。

 しかも大熊戦が行われた当日は戒厳令だけでなく金大中が逮捕さ
れるなど騒然とした雰囲気は、やがて殺気を呼び大熊が朴を投げ飛
ばす形になった直後には物がガンガン投げ込まれ大混乱になった。

 実はボクシングファンで有名な香川照之氏が93年3月に勇利アル
バチャコフがタイでの防衛に成功したのに因んで、80年代以降の
日本人選手の海外での勝ち星を書き出していたのを見てみると韓
国で勝った日本人選手は世界戦以外では3人のみ。

 82年にフェザー級の桑原邦吉が世界ランカーの金貞喆をJウエル
ター級の知念清太郎がKO勝ちし、83年に日本Jライト級王者・安里
義光が韓国1位の楊一にKO勝ちした3試合だが82年の2試合は劣勢な
中での逆転KO勝ち。

 タイトルマッチに関しては70年代は70年に門田恭明が東洋タイ
トルを奪取したぐらいでロイヤル小林など世界と東洋を共に韓国
で失っているし、カシアス内藤やライオン古山も韓国でタイトル
を失っているのだから困難ぶりは推して知るべし。

 韓国ボクシングが全盛となった80年代半ばからはWBC:Jフライ
級王者の張正九に大橋秀行や渡嘉敷勝男ら世界王者経験者が、WB
A:Jフライ級王者の柳明佑にも喜友名朝博を含めた4人が敗れてい
るしバンタム&Jバンタム級王者となった文成吉にも小林智明や松村
謙二らが敗れるなど鬼門ぶりが分かるだろう。

 どうしても韓国で挑戦するのは先方から呼ばれて来るので勝つ
可能性が低いのだが、先述したように日本国内では実力のある選
手ですら敗れており特に当時の専門誌で海外短信では‘日本人選手
の活躍を中心に’とあるものの勝ち試合を見た事がなかったのだ。

 ちなみに韓国での世界戦で日本人選手は4勝を挙げているが大熊
以外は全て防衛戦で、85年12月にA氏が日本人初の海外防衛を果た
しているし01年5月に徳山昌守が前王者の趙をKOしている。

 そして最も新しいのが某一家の1号が格下と思われた1階級下の
選手にダウンを喫して終盤は背中を向けて逃げ回る醜態を見せな
がら、突如ハーフポイント制などを持ち出し判定勝ちで防衛に成
功させる奇跡的な勝利を挙げている。

 地元判定の厳しい韓国でダウンをして逃げ回りながらも勝てる
のは、ある意味快挙ではあるのだが・・・

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