帰ってきたウルトラマンでは第1期とも、エース以降の第2期とも違う監督が
2人いる。
それは円谷プロの創始者・円谷映二の盟友・本多猪四郎と東映の冨田義治
監督で本多監督については言うまでもないが、東映でキャプテンウルトラや
柔道一直線の監督だった富田義治がウルトラを担当するのは意外だった。
富田監督の作品を見てみると最初がグドン&ツインテール編の5・6話、
続いてシーモンス&シーゴラス編の13・14話、キングストロン編・ザゴラス編の
24・25話にブラックキング&ナックル星人編の37・38話の計8話だが、24・
25話を除けば前後編モノになっているし特にグドン&ツインテール編とブラック
キング&ナックル星人編は帰ってきたウルトラマンを代表するEPだ。
更に8つのEPのうち25話のザゴラス編以外は全て上原正三が脚本を担当して
いるのも特徴で、柔道一直線でコンビを組んでいたという事だから上原正三と
富田義治は相性がよかったようだ。
夕陽の中ウルトラマンがグドンとツインテールから挟撃されてピンチに陥って
いるシーンが帰ってきたウルトラマンでは最も印象的なシーンだし、ブラック
キングとナックル星人のタッグの前に敗れたのも夕陽の中での戦いだったの
だがこれらの演出を富田監督が担当している。
グドン&ツインテール編では郷と岸田の対立だけでなく、ツインテールの卵の
影響で地下道に閉じ込められた人達の救助を優先するためにMATを辞職する
郷に対しMAT以外に身寄りのない上野がMATに戻るように説得するシーンや
最終決戦でスパイナーを使用する事を伝えに来たMATのメンバーに対し坂田が
疎開を拒否して静かに抗議するシーンにMATに戻る事を決意する郷といった
重厚な演出。
そしてブラックキング&ナックル星人編では郷の恋人である坂田アキと師匠で
ある坂田健がナックル星人によって殺害され、怒りに燃えた郷が敵を討ちに行って
敗北するまでの心理描写なども印象的だった。
こうして見ると帰ってきたウルトラマンで第1話と最終話を担当したのが本多
猪四郎で13話と最も多く担当したのは筧正典だが、帰ってきたウルトラマンを
代表する作品を担当したのは富田義治だというのは面白い構成だと思う。
そして富田監督はブラックキング&ナックル星人編を最後にウルトラを離れて
刑事くんに戻り、ウルトラの監督をする事はなかったのだった。