‘元祖沖縄の星’上原康恒の戴冠から30年

 今から30年前の今日80年8月2日は‘元祖沖縄の星’と言われた上原
康恒がデトロイトで10度の防衛に成功していたサムエル・セラノを6RでKO
してWBA:Jライト級王者になった日である。

 当時‘もろに敵地ではないとはいえデトロイトで勝つのは厳しいし、ましてや
上原のライバルで日本屈指のテクニシャンと言われたバトルホーク風間が
完敗しているので無理だろう’という予想を見事に覆しての勝利だったのだ。

 破格の強打を誇り9戦目でWBC:Jライト級王者のリカルド・アルレドントに
ノンタイトル戦で勝ったものの対戦を逃げられ、WBA王者のベン・ビラフロア
に敵地・ハワイで挑戦して2RKO負け。

 その後 日本王者に就いて1度失うが、すぐに取り返して世界1位にランクを
上げていた。
 ところがプエルトリコ人のセラノは自らがテクニシャンではあるが、打たれ
モロさがあるという事で上原の強打を警戒し なかなか挑戦を受けようと
しない。

 しかも丸木孝雄やバトルホーク風間の挑戦を日本で受けているのに、上原
戦は‘プエルトリコでしかやらない’と言い張り、最終的にデトロイトで行わ
れたホセ・クエバス対トーマス・ハーンズ戦のアンダーカードでセラノ挑戦が
決まったのだった。

 1Rからジャブを主体にしたセラノの攻撃に全くパンチが当たらず迎えた
6Rに上原が左フックを振るいながらセラノをロープに詰め打ち込んだ右
フックが、左アッパーを突き上げて逃げようとしたところに見事なタイミングで
炸裂して大逆転の6RKOで歓喜のタイトル奪取となったのだ。

 このタイトルは1度防衛した後にセラノから判定負けして失うのだが、今に
して思えば上原は日本で挑戦していたらタイトル奪取は無理だったかもしれ
ない。

  というのも自らの打たれモロさを自認しているセラノは日本での防衛戦
なら150-135勝ちを狙った試合運びをするのだが、アメリカ進出を狙うと
なれば15ポイント差で勝つなら倒すかストップするぐらいでなければと
考えたのかもしれない。

 実際にデトロイトではロープに詰められると体を入れ替えて脱出しながら
左アッパーを突き上げてヒットさせダメージを蓄積させていた。
 だからこそ6Rに見事なタイミングで右フックが当たったし、リターンマッチ
では後半に入り何度か右フックがヒットしたもののグラつくだけで倒せなか
ったのは判定勝ちOKの姿勢で重心が後だったからだろう。

 試合前にセラノがプエルトリコ開催を主張した背景には上原が30歳になる
だけに今回がラストチャンスだし、前回の挑戦も敵地だったので ‘ラスト
チャンスを国内で’という上原陣営の事情を見透かした駆け引きだったの
だろう。

 にも拘わらずデトロイトでの挑戦を忌避せずに乗り込んで行ったのが最後
に奇跡を起こす要因になったのだから、ボクシングは面白い。
‘世界王者になるには運が必要’という言葉がボクシング界にあるが、 30年
前の上原の戴冠は そういう運に恵まれた例の1つだろうと思う。  

コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
朝刊読んで (屯田兵)
2010-08-03 10:04:03
嬉しい気分になったの 覚えているね セラノ、クエバス、違う土地でセルバンデスまで負けた番狂わせの夜でしたね
それに比べ今は、暫定だTBSタイトルが当たり前の時代 大場のタイトルと亀2タイトルが同じものなんてあの当時の感激、感動なんて戻ってこないのですね
 
 
 
亀2が負けたら (屯田兵)
2010-08-03 10:07:21
亀1対坂田でやって行くんじゃないっすか台本的に
 
 
 
ニュース見て思わず (吉法師)
2010-08-03 16:24:44
「ヤッター!」って叫んじゃいましたよ、あの時。
日曜夕方のニュースで「日本の上原選手が王者・セラノ選手に6RKO勝ちで新王者に」というコメント共に、ロープに片手を引っ掛け「サヨナラ」しているように横たわるセラノと、それを見下ろす上原の画像が放映されたのを見たんです。ホント嬉しかったなあ…
セラノに関してはこの年の4月に、風間の挑戦を13RKOで退けた時の談話「(風間は)根性はあったが技術が足りない」「日本のボクサーは技術が足りない。もっとボクシングを勉強しなさい」のコメントを、プロ野球ニュースで佐々木信也さんが紹介したのを聞いた時から「誰でも構わないから、あの野郎を叩きのめしてくれ!」と思っていましたので、それを日本人の上原康恒がやってくれた事は本当に嬉しかった。
再戦ではセラノの術中に嵌められてしまった感がありましたが、それでも終盤にロープ際で右強打を見舞い、追い込む場面も作った上原、セラノが王者時代に完全にやられた試合は上原(1)とロジャー・メイウェザー(フロイドの叔父さんですね)の2試合しかなかった訳ですから、やはり王者になって然るべき選手だった、と言えると思います。
 
 
 
書き込み御礼&レス (こーじ)
2010-08-03 23:34:23
>屯田兵様
 圧倒的に30年前の方が世界タイトルの価値が高かった時代ですからね。
 そういえば上原は協栄ジムなのにTV中継はNTVだったですね。 

>吉法師様
 私も夕刊で結果を知った時は‘やった!’と思いましたよ。
 風間を翻弄したセラノを一撃で倒せるなんて、やはり凄いと思いますよね。

 風間がセラノに完敗したのは凄いショックでした。
 前日突貫ファイター型の磯上修一がパナマのルハン
から惨敗した時も‘磯上はテクニックを云々’とルハンから言われたのは仕方なかったですが、日本きってのテクニシャンの風間ですら同じ事を言われる屈辱を
味わいましたからね。
(突然‘秘密兵器’のサウスポーへのスイッチという
暴挙もありましたけど)

 そういう意味ではデトロイト開催をのんだ金平会長の英断も大したものだと思いましたよ。
 
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