最短キャリアでの世界獲得に何の価値がある？

井岡が世界挑戦＝デビュー７戦目、２月に―ＷＢＣミニマム級(時事通信) - goo ニュース

　前日本Lフライ級王者の井岡一翔が2月11日にWBCミニマム級王者のオーレ
ドン・シッサマーチャイに神戸ワールド記念ホールで挑戦する事が決まり、勝てば
辰吉丈一郎や名城信男の8戦目でのタイトル獲得よりも1試合早い7戦目での獲得
という事になる。

　井岡陣営は意気軒昂だが、個人的に‘またか’という思いの方が強い。

　そもそも最短キャリアでの世界奪取に何の価値があるのだろうか？
　
　世界奪取の最短キャリアは3戦目でWBCのJウエルター級を制し通算8度の
防衛に成功した‘タイの荒法師’センサク・ムアンスリンで、次が辰吉丈一郎を
2度に わたって完膚なきまでに叩きのめしたタイのウィラポン・ナコンアンプロ
モーションの4戦目となっている。

　つまり最短の上位2人はタイ人で いずれもムエタイ上がりという特殊事情が
あるし、2人ともタイトルを奪取してセンサクは2度目のウィラポンは初防衛戦で
敗れているのを忘れてはいけない。

　日本では後のWBC・WBAでミニマム級王者になった大橋秀行や日本ミニ
マム級王者の八重樫東が7戦目で世界に挑戦して敗れているのだが‘150年に
1人の天才’といわれた大橋ですら失敗し、獲得したミニマム級タイトルも1度防衛
しただけという状況だ。

　また最短キャリアでタイトルを奪取した辰吉は眼疾という不運もあって防衛は
2度で世界戦も5勝6敗と負け越しているし、名城もアレクサンドル・ムニョスや
ウーゴ・カサレスに完敗しているのを見るとタイトルを取った後の方が大事では
ないかと思うのだ。

　最年少王者で有名なウィルフレド・ベニテスは17歳で10度防衛していたアント
ニオ・セルバンテスに勝ってタイトル奪取したのは26戦目で、80年代のスーパー
スターのシュガーレイ・レナードも26戦目での奪取だし、あのマイク・タイソンも28戦
目と少なくとも25戦以上のキャリアを積んでの初挑戦だ。

　ちなみに先日2階級制覇した粟生隆寛も最初に世界挑戦するまでは17戦を
戦っている。

　世界タイトルは取るだけでなく、取ってからが大事。
　自分の長所のみで戦って勝てる相手と勝てない相手が当然出てくるが、勝て
ない相手を忌避し世界を取ったところで必ず防衛戦では苦手な相手と戦わざるを
えなくなるのは当然の事。

　だからこそ世界挑戦の前に いろんなタイプの相手と試合をしてキャリアを積む
必要がある。

　辰吉が16戦目でダニエル・サラゴサに挑戦するまで1度もサウスポーとの
対戦がなく、ただでさえ変則でやりづらいサラゴサから一方的にやられたのを関係
者は忘れたわけではあるまい。

　井岡にとって会長でもあり叔父の井岡弘樹もミニマムとLフライは取ったものの
防衛回数は2度づつで、17回防衛していた柳明佑に勝ったもののリターンマッチで
完敗しているし3階級目を狙ったフライ級とSフライ級で4度挑戦しながら敗れている
のを見ると世界挑戦する前に もう少し強敵や あらゆるタイプと戦ってキャリアを
積んでいたらセーン・ソーンプルンチットやホセ・ボニージャには勝てたのではない
だろうかと思ってしまう。

　目先の記録に拘って肝心の世界王者として大成できずに終わるという愚挙
だけは繰り返して欲しくないと思うのだが・・・・・