先週ホークスの連覇で終わった今年の日本シリーズは両チームと
も強力な打線と磐石のリリーフ陣が突出した先発の柱不在をカバー
するという共通点があるなど似た者同士と思っていたが、違うのが
キャッチャーの起用法だった。
ホークスが高谷裕亮・細川亨・鶴岡慎也という3人を使い分けてい
たのに対し、スワローズは中村悠平のみの一人捕手状態。
巷ではOB達を中心にキャッチャー固定性の必要性を説き、その
象徴である中村を絶賛するコメントが相次いでいたのだが今回の
シリーズでは一人捕手制の弱点がモロに出た形だった。
G3までホークスは高谷を先発マスクで起用していたのだがG3では
山田哲人から3打席連続HRを浴びると、摂津正が先発したG4で細川
がマスクを被り巧妙なリードで山田を含めたスワローズ打線を封じ
優勝を決めたG5でもジェイソン・スタンリッジに鶴岡を組ませて
完封勝ちし優勝に花を添えた。
キャッチャーが替わる事でリードも変わり前日初めて本来の力を
発揮したスワローズ打線の勢いを完全に殺した形なのだが、これは
一人捕手では厳しいのが現状だろう。
長いレギュラーシーズンではケガが多いポジションだけに一枚捕
手制ではレギュラーがケガでリタイアすると致命傷になるし、スワ
ローズが古田敦也全盛時に連覇がなかったのも古田が好調な年は優
勝するもののケガなどで不調の年は4位に落ちるというパターン
から抜け出せなかったのが象徴的だ。
更にレギュラー捕手との相性が悪い投手の場合は一枚捕手制では
厳しいが、ホークスのような複数捕手制なら相性のいい捕手がいる
可能性があるので人材の有効利用にもなる。
また先述した古田やドラゴンズの谷繁元信のように1人の捕手が
長くレギュラーを張り続けると当然ながら後釜が育たずに、レギュ
ラー捕手の衰えと共にチームも戦力ダウンするわけだからOB達を
含めたマスコミが主張するほど一枚捕手のメリットはないどころか
リスクの方が高いといえるだろう。
リスク管理を徹底しているMLBは複数捕手制が基本だし日本でも
スワローズとライオンズに田村龍弘を育成しているマリーンズは一枚
捕手制に拘っているのだろうが、他のチームは結果的ではあるものの
複数捕手制で戦っているのが現状だ。
そういう意味で時代の流れでもある複数捕手制を否定し一枚捕手
制に拘る面々の考えは、投手の球数制限を否定し先発完投に拘る
考えと同じなのではないだろうか。