今から40年前の1月に行われたWBAフライ級タイトルマッチの
ベツリオ・ゴンサレス-大熊正二は、試合全般を通じて挑戦者の
大熊が積極的に攻勢をかけて4年ぶりの返り咲きかと思われたが
以外にも三者三様の引き分けに終わった。
当時のマスコミは‘不当判定’と書き立てレフェリー&ジャッジ
達を批判したのだが、RING誌のレポーターをしていたジョー小泉
氏は別角度からの見方をしていたのが印象的だった。
大熊は過去5回の世界戦では手数が少なく消極的な試合運びが目
立っておりミゲール・カントにタイトルを奪われた試合は再戦で
敗れた試合など‘手数が少なく消極的な試合運びだから際どい判
定を落してしまう’的な書かれ方をしていたのを覆すかの如く、
ゴンサレス戦は積極的に前に出て手数も多く度々王者をロープに
詰めて連打を浴びせるシーンが多かった。
ところが大熊は力んでパンチを打つためバランスを崩しがちで
打ち終わりに右のカウンターを浴びるシーンが度々あり、そのた
めジャッジの印象が悪くポイントをロストしていたと記していた
のだ。
この頃の大熊は日本や東洋圏のボクサー相手には鮮やかに倒す
のに世界戦になるとダウンの1つも取れない事に対する疑問を呈
しており、対戦したゴンサレスやカントにアルフォンソ・ロペス
という3人の世界王者は巧みにシフトチェンジしてヒットポイン
トをずらしてしまうテクニシャンだったので倒せなかった。
しかもコンビネーションが単調なため途中から攻撃パターンを
読まれてカウンターを狙われやすく、手数を出しづらい展開にな
っていたという事だったのをマスコミは‘手数が少なく消極的’
と批判していたわけでメキシコのボクシング誌は大熊を典型的な
ブルファイターと評していたとの事。
こうしてみると日本のマスコミというのは40年経った今でも同
じ角度からしか判断しないような報道を繰り返しており、それが
レベルアップを阻害している感は拭えない。
例えば野球では3-2で負けた試合を‘3点取られたから負けた’
と‘4点取れなかったから負けた’という2つの見方があるのだが、
日本のマスコミはロースコアゲームが好きだから‘3点取られた
から’という見方しかしないのが実情だ。
そういう意味でいろんな立場から見る角度を変えて分析すれば
より面白く、レベルアップもしていくのではないかと思うのだが。