金城哲夫と上原正三を比べると

　BSプレミアムでOAされた ふたりのウルトラマンを見ていると
ウルトラは金城哲夫が作り上げ、上原正三が後世につないだとい
う事が分かる。

　共に沖縄出身の両者を見ていると、金城哲夫と上原正三の2人
の違いがよく分かって来る。

　金城哲夫は東宝のキングコング対ゴジラ以降のゴジラシリーズ
の脚本を担当した関沢新一に師事しているので確かに作風が似て
いて楽観的な理想主義なのに対し、上原正三は一般の現実を冷徹
に描いているケースが目立つ。

　両者の違いは第1期ウルトラのウルトラマン&セブンと、帰って
きたウルトラマンを見比べると分かりやすい。

　特にウルトラセブンに登場するヤマオカ長官以下極東基地首脳
と、ほぼ同じ俳優が演じるMATの岸田長官や佐竹参謀を見ると全
く対応が違うし特にグドン&ツインテール編が顕著だ。

　つまり現場をあまり信用せず上層部でグドン&ツインテールを
都心部ごと焼き払う兵器スパイナー使用を計画し、MATの最終作
戦をなかなか許可せず甥っ子の岸田文夫が懇願してからようやく
最終作戦の許可が出る始末。

　また前半で郷秀樹と岸田文夫隊員の対立も目立っていたわけで、
基本的に隊員達の仲がいい科学特捜隊やウルトラ警備隊との違い
には子供心に困惑したものだ。

　まぁ私自身社会に出るとMATのようなパターンの方が多く科特
隊やウルトラ警備隊のような組織の方が理想的過ぎるわけで、こ
れこそ金城哲夫ワールドと上原正三ワールドの違いなのだろう。

　関沢新一と特撮映画でコンビを組んだ本多猪四郎監督について
黒澤明監督は‘猪ちゃんは善人だから理想が入る、普通なら怪獣な
どが迫っているのに警察官や自衛隊員が整然と避難誘導するなど
ありえないんだが、猪ちゃんは真面目だからそうあって欲しいと
思ってやるんだろうね’と語っていた。

　つまり関沢ー本多コンビの流れを汲む金城哲夫の世界はこれで、
科特隊やウルトラ警備隊は理想的なぐらい仲がいい。

　帰ってきたウルトラマンの製作が決まった時に金城哲夫はいな
いので、第1期と同じ流れで作ってもダメだから敢えてメインラ
イターの上原正三色の強い現実主義的な世界になったのだろう。

　とはいえ理想主義と現実主義は両方必要なので、両方の世界を
子供の頃に見る事ができたのは幸運だったと思うのだ。