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長野県製造業パワーの衰退に歯止めをかけよ!

2005年09月22日 | 長  野  県  政

ますます深まる、田中県政の混迷。それを憂うる長野県出身の経済アナリスト・市川周氏が、次期知事選を睨んで停滞する長野県にカツ!を入れる。氏の分析は一部読者の間で根強い支持を得ている。「2006」となっているのは、次期知事選が行われる来年を指している。
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         『市川周の長野2006  No.5

     長野県製造業パワーの衰退に歯止めをかけよ!
       = 官民連携こそ地域経済再生の鍵 =

 長野県の製造業パワーは田中県政がスタートした2000年(平成12年)以降、衰退の一途を辿っている。そのシンボリックなデータが8月下旬に県が発表した県内製造品出荷額だ。製造品出荷額は2000年を100とすると2002年には80を切ってしまった。ここ2年間は若干の回復傾向にあるが、昨年の指数で88と依然低迷している。

この現象を長野県の中だけで議論しておれば、そのうち景気も回復するだろう式の楽観論で終始してしまいがちだが「県間競争」という視野から考察すると我が長野県の後退は極めて深刻である。 

★「稼ぐ力」を弱体化する県内製造業従業者
 長野県の一人当たり県民所得は驚くべきことに2000年の全国12位から2002年には20位まで急低下してしまった。一方、この過程で我々を颯爽と追い抜いていった県が存在する。例えば、三重県や隣県の富山県だ。三重県は2000年の15位から2002年には9位に、富山県は17位から10位へ躍進した。要は、この2県が県民1人当たりの「稼ぐ力」で長野県を大きく上回ったわけだが、そのことを前述した製造品出荷統計で見ると歴然として来る。

 製造品出荷額から「稼ぐ力」を示すデータを割り出したのが、製造品出荷額等から原材料使用額や減価償却額等を差し引いた「付加価値額」である。長野県はこの「付加価値額」を2000年の2兆5900億円から2003年には1兆9700億円へと6200億円も減少させてしまったのに対して、三重県は2兆5700億円から2兆6000億円へ300億円、富山県は1兆4000億円から1兆4900億円へ900億円それぞれ増大させた。

 これを従業者が10人以上いる事業所における一人当たりの「付加価値」創出額で見ると、同期間、長野県が1217万円から1024万円へと200万円近く減らしているのに対して、三重県は1457万円から1531万円へとさらに厚みを増し、富山県は1146万円から1290万円へと150万円近く増大させ長野県を完全に突き放している。 

★官民連携で県間競争を勝ち抜け
 我が県の製造業パワーが他県に比して衰退して来ている理由は何か?個々の企業の経営力、技術力といった問題も当然、考えなければならないが、県行政の指導力低下も看過出来ない問題である。製造業に元気のある三重県、富山県に共通する点は知事が県内産業の革新・振興の陣頭指揮に立っていることであり、そのための産学官一体化した推進組織がしっかりと機能していることである。(財)三重県産業支援センターや(財)富山県新世紀産業機構がこれにあたるが、当然、両組織とも理事長は知事である。

 長野県の場合、(財)長野県テクノ財団が同様な組織的役割を担うことになるが、理事長は産業界出身の萩本博幸氏(多摩川精機会長)であり、県庁からは7人の副理事長の末席に商工部長の名前があるだけだ。その上、田中県政は「効率的・効果的な行政サービスの実施及び、県民益の極大化」を目指したという県出資等外郭団体見直し(対象54団体)の中で、2004年2月、長野県テクノ財団に対する「県関与の廃止」を決めてしまった。

 小泉政権は今回の総選挙圧勝で国内経済運営における「官から民」への転換を国政レベルでは一層、推し進めることになろう。企業も地域経済も弱肉強食的競争原理が強まる中で、47都道府県間の県間経済競争に一段と拍車がかかろう。この結果、むしろ県ベースでは官民の連携強化が勝ち残りの鍵となる。稼げる県産業の育成があってこそ、県民の所得は上がり、税収は上がる。「恒産なければ恒心なし」がこれからの県政の要諦である。
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【市川周】1951年長野県南木曽町(旧三留野宿)生まれ。祖母は松代出身。1975年一橋大学経済学部卒業。三井物産入社。米国・アジアの海外拠点で新規事業開発等を手がけた後、(株)三井物産貿易経済研究所創設に参画、コンサルティング事業室長を経て1997年に独立。企業及び自治体を対象にした人材開発コンサルティング会社市川アソシエイツを設立。一橋総合研究所常任理事。多摩大学非常勤講師。著書に最新作『羊のリーダーで終わるか ライオンリーダーになるか』(中経出版)の他、石原慎太郎氏との共著『宣戦布告「No」と言える日本経済』(光文社)等がある。2002年夏、田中康夫知事の失職選挙に長野県経済再生を掲げて出馬し第3位に入る。 


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