ムダな道路造りの仕組みを変えるためにも廃止すべき
右へならいのマスコミに言論の多様性はない
最値上げは悪徳業者の思うつぼ
▼福田首相の too late too little
福田首相は3月27日になって道路特定財源の「2009年度からの一般財源化」を言い出したが too late too little の典型だ。遅すぎるし、少なすぎる。
今さら一般財源化するといっても不十分だし、税率を下げるとは言っていないので野党の反応は冷めたものだ。与党内からも「聞いてない、福田首相が勝手にやってること」という声まで出た。
去年夏の参院選で民主党が多数を占めた時点で今日の事態は想定できたわけで、それをいままで放置してきたきたことの責任は大きい。
ガソリン税はそもそも暫定だ。いつかやめるときが来るのはわかっていたはずだ。それなのにそのときのことを政府が考えていなかったことが今の混乱の元にある。
混乱が起きるからこのままガソリン税を続けよう─みたいなことを政府与党は言っているが、服に身体のほうを合わせろというようなもので話が逆だ。やめる気があったのか?と思う。
来年、福田さんが首相でいる可能性はほとんどない。その人の約束にどれほどの意味があるのだろうか。
だが、各新聞の社説は揃ってこれを評価している。
▼右へならいのマスコミ
各紙社説は「混乱を回避せよ」といった論調で右へならいだ。自民党の”現実的対応”に理解を示し、野党に妥協を迫るものとなっている。これを政府与党は利用している。民主党はマスコミ批判をタブー視して反論できないでいる。
国会であれだけ対立している問題で新聞論調がみな同じというのは不思議なことだ。半々ぐらいに意見が分かれれるのが健全な姿だが、我が国マスコミにそれを求めるのはないものねだりだ。読者のほうもこの異常さに慣れていないか問いたい。現状追認ならマスコミはいらない。批判のためにマスコミはある。
過去に遡れば我が国マスコミは大きな問題になるといつも歩調が一致する。他紙と違ったことを言ってはずれたら困る─という横並び意識が根底にあるのだ。一紙ぐらいガソリン税廃止を主張してもいいはずだが、そういうものは見当たらない。ここに言論の多様性はない。これでは新聞はいくつもいらないではないか。
社説比較サイト
http://massacre.s59.xrea.com/othercgi/shasetsu/index.xcg?event=565
▼民主党はマスコミ批判をすべき
野党と与党の言い分が真っ向から対立している。互いに批判しあっている。どっちの言い分が正しいのかわからない国民が多くいる。マスコミがどう報じるかが大事だが、マスコミはいつもの通り中庸だ。中庸は中立ではない。声の大きなほうに引っ張られ、現実重視路線をとっている。一時的にはそれでいいかもしれないが、長期的にみたらガソリン税が今のままでいいわけがない。
民主党はマスコミを批判すべきだ。政治家はしっぺ返しを恐れて、内心では不満でもマスコミ批判をしない。しかし、マスコミは批判に弱い。批判に慣れてない。政党が性根をすえてマスコミ批判をしたらマスコミは困るだろう。マスコミは一種のアンタッチャブルになっている。これはおかしなことだし、日本国のためにもならない。マスコミを批判するのも政治家の使命だ。
▼ガソリン税は麻薬、混乱は禁断症状
ガソリン税はこれまでその恩恵に与っていた人にとっては麻薬みたいなものだ。止めろと言われても、おいしすぎるのでなかなか止められない。中毒のようになっている。混乱といわれているのは、言い換えれば禁断症状のようなものだ。いままで長年やっていたことを止めれば影響はあるに決まっている。だからといって、それを避けていては、手術を嫌がる病人の治療をしないようなものだ。ときには苦い薬を呑まなければ病気は治らない。
▼最値上げは悪徳業者の思うつぼ
政府与党はすでに最値上げを口しているが、これこそ混乱の元で売り惜しみを招くものだ。最値上げは悪徳石油業者を利するばかりで、弱いものいじめとなる。せっかく下がっても短期間の間にまた上がるかもしれないとなったら、あくどい石油業者はどうするか。蔵出し税を上積みした価格を最大限遅くまで表示し、その一方暫定税率復活となったら直ちに価格に反映させるのではないだろうか。ガソリンに色はついていない。消費者には課税されているものかどうかの見分けはつかない。ものの値段は下がるのは時間がかかるが、上がるときはすぐだ。
再値上げが、”あるかもしれない”というだけで売り惜しみは起こる。こんなことを今から口にする政治家は国民のことなど考えていないのだろう。石油業者を選べる都市部の住民はまだいい。しかし、田舎に住んでいるものは選択の余地が少ない。結局高いガソリンを買わされるはめになるだろう。
ものの値段が1ヵ月の間に約25円も上下するのは経済常識ではあり得ないことだ。それを政治の都合で引き起こしたらどうなるか?というのは未体験ゾーンで意外なことが起こるかもしれない。
▼道路造りの仕組みを変えるべき
ガソリン税は道路が本当に足りなかった時代に、全国規模で道路を造るためにできたものだ。地方の道路が足りないというのなら、それはガソリン税とは別の手当てをすべきだ。いまのままの体制ではいつまでたっても地方の欲しいところに道路はできないだろう。道路は政治家の力関係で優先順位がつけられているのは否定しがたい事実だ。
道路族議員のドンといわれる古賀誠選対委員長の地元福岡県八女市上陽町にある「朧(おぼろ)大橋」は地元民の間では「誠橋」と言われている。
全長293メートルで総工費約43億円。町道の一部として建設したが、国や県が費用を負担して町の負担はない。通行量は1日2000台を見込んでいたが実際は1日200台だと国会で議論にもなった。無駄な橋の見本だろう。こういうものがあっちこっちにあって、ガソリン税が使われている。道路族議員が自分たちの都合のいいようにガソリン税を使える仕組みを変えなければダメだろう。
▼混乱しているのは行政側
混乱といわれているが、混乱しているのは行政側で、国民はたいした混乱はない。強いて言うなら、期待感があるぐらいか。これは活力に分類すべきもので混乱とは呼ばない。
地方自治体はガソリン税を見込んで予算を組んでいるので混乱する─といわれているが、実際そんなことにはならないだろう。予算を組みなおすのに担当者が残業する時間が増えるぐらいか。足りなければなんとかするのが役人の腕だし、そういうことをさせたらうまいのが役人だ。なかったら使わなければいいだけの話だ。実際、ガソリン税不要をいう中川暢三市長がいる兵庫県加西市では、その分の予算がなければ予算を組みなおすだけだ─とこともなげに言っている。
国民が混乱するわけではなく、税金を使う側の役人が慌てているだけではないのか。
▼老タカ・村井知事のでしゃばり
長野県の村井知事はこの問題で3月24日急遽会見を開き「このままでは国民生活が混乱する」という緊急声明を発表した。
http://www.pref.nagano.jp/hisyo/press/20080324.htm
元官僚らしい村井知事の発想で、25円安くなる国民からの視点はない。一地方の知事が緊急に会見を開いてこういうことを言うのも珍しいことだ。なぜにこんなことを急にやりだしたのか不可解だ。国会議員時代の、仲間への援護射撃のつもりなのだろうか。言動全般をみていると、村井知事のタカ派体質がうかがえる。高みから国民を善導してやらなくては─といった思いがにじみ出ている。県民目線というものはなく、支配者意識の強い人だなと改めて思った。
村井知事の役目は田中康夫を長野県知事の座から引きずりおろすことだった。それ以上のことは誰も望んでいない。へたにやる気など出されるのは迷惑だ。反対が少ない人─ということで選ばれたにすぎない。自民党だけでなく、民主党支持者の票も多く流れている。こういうことをすると民主党の反発をかうだろうが、次はないと本人は思っている。だから、批判を恐れない。批判を恐れない政治家というのは何をするかわからない。
田中康夫が似非ハトなら村井さんは老いたタカか。