弁護士辻孝司オフィシャルブログ

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共謀罪って?何それ?

2014-10-02 16:04:34 | 社会・経済

今年度、京都弁護士会に「共謀罪新設阻止プロジェクトチーム」という委員会が作られました。

どういうわけか私がプロジェクトチームの座長(責任者)ということに...

共謀罪問題に詳しいということよりも、企画力を買われたようです。

ところで、「共謀罪」って、何のことかよくわからないですよね。

 

話し合って合意しただけで逮捕されてしまう!?

そんな法律が作られようとしているのです。それが「共謀罪」です。

近代刑法は心の中で犯罪をしようと考えただけでは処罰せず、その犯罪を現実に実行してはじめて処罰するのが原則です。
例外的に殺人や強盗などの重大犯罪は犯罪を実行しなくても準備しただけで予備罪として処罰されます。
ピストルを撃って相手を殺せば殺人罪、撃ったけれども相手が死ななければ殺人未遂罪、ピストルを準備しただけなら殺人予備罪になるのです。
「誰かを殺してやろう」と考えただけでは処罰されません。

ところが「共謀罪」は「誰かを殺してやろう」と二人以上で話し合い、合意しただけで処罰する法律なのです。

なぜ、共謀罪が問題なのでしょう?
犯罪をしようと話し合って合意することは悪いことだし、その後で本当に事件を起こすかもしれないから、被害を未然に防ぐために処罰してもいいような気もします。

しかし、悪いことを考えた人がみんな犯罪を実行するわけではありません。多くの人は思いとどまります。
殺してやりたいと思う人はたくさんいても、実際に人殺しをする人はほとんどいないのです。
酒の席で気に入らない奴の悪口で盛り上がり冗談で「ぶっ飛ばしてやろう!」と言っても、本当に殴りに行くことはないでしょう。
犯罪になると知らずに話し合い、あとで法律を調べたら犯罪と分かったからやっぱり止めたという場合もあるでしょう。
「共謀罪」ができるとこういう場合まで処罰されるおそれがあります。私たちはうかつには話もできなります。

盗聴されちゃう!?

実際に「共謀罪」を処罰するには、「話し合い」「合意」という「会話」が証拠になります。
そのために盗聴が必要になります。
電話やメール、SNS、会社や自宅での会話が盗聴されるかもしれません。
店舗や街角にたくさんの防犯カメラが設置されていますが、これからは高性能マイクを組み合わせて誰がどんな話をしているかまで監視されてしまいかねません。
いつ、どこで「会話」されるかわからないので、私たちの日常生活すべてが網羅的に盗聴や監視の対象となります。
潜入捜査やおとり捜査も行われるでしょう。
仲間の中にスパイがこっそり潜んでいたり、居酒屋で盛り上がっている時でも隣のテーブルで潜入捜査員が録音しているかもしれません。
共謀しても自首したら罪を免れるという制度になれば、嘘の密告で人を陥れることもできてしまいます。
犯罪を持ち掛けられて勢いで合意してしまったら実はおとり捜査だったということもあるでしょう。
「共謀罪」は、盗聴、監視、密告、おとりという手法を警察という国家権力が利用すること認めることになるのです。

これまで「共謀罪」は内乱予備・陰謀罪などごく例外的な場合に限られていました。
しかし今、政府が考えている法案は共謀罪の対象を法定刑が長期4年以上の犯罪すべてに広げるものです。
この法案だと殺人などの重大犯罪だけでなく、窃盗、詐欺、傷害、恐喝など大部分の犯罪が「共謀罪」の対象になってしまいます。

暴力団だけじゃない!?

政府は、国連越境組織犯罪防止条約に批准するための国内法整備に「共謀罪」が必要だと説明しています。
この条約はマフィアによる組織犯罪を取り締まる条約であるにもかかわらず、わが国で作られようとしている「共謀罪」は暴力団やテロ組織のみを対象とするわけではなく、
対象犯罪も幅広く、条約の目的をはるかに超えています。日本の刑法にはすでに予備罪があり、犯罪を実行していない人も共謀共同正犯として処罰でき、
銃刀法で凶器の所持が処罰されるので、新しく法律を作らなくても条約は批准できるとも言われています。

「共謀罪」は、私たちの日常生活に大きな影響を及ぼします。
いつ、どこで、だれに覗かれているかわからず、常に警戒しなければならなくなります。
処罰を恐れて、自由に考え、発言をすることができなくなります。

これまで「共謀罪」は国会で三度も廃案になりましたが、今の国会情勢ではいったん法案が提出されれば多数与党に押し切られ成立するおそれが十分にあります。

京都弁護士会では2014年11月22日(土)午後2時~平岡秀夫元法務大臣をお招きして共謀罪を考えるシンポジウムを開催します。

どなたでも参加いただけますのでぜひお越しください。

お問い合わせは京都弁護士会
https://www.kyotoben.or.jp/event.cfm#887