厚生労働省の職員の方に無罪判決が出たと大きく報道されています。
捜査段階では、何人もの関係者が検察官に対して、
その職員の方が事件に関与したと供述しました。
それなのに、みんな、裁判では関与していなかったと証言を翻したのです。
どうしてこんなことになったのでしょう?
警察や検察での取り調べは、密室の中で、捜査官と取調べを受ける人だけで行われます。
逮捕されていると、朝から晩まで、最長23日間も、密室の中で取り調べられます。
そして、犯人であると決めつけられて、
いくら弁解をしてもすべて否定されて、言い分を聞いてもらえない。
ひどいときには、家族もおまえが犯人だと言っている、おまえはクズだなどと
暴言を浴びせられ、机やイスを蹴ったり、殴ったりもされるようです。
事件のことを何も知らなくても、捜査官が巧みに誘導して、
全く経験もしていない事件をあたかも経験したかのような調書が作られ、
これにサインしておけば罪が軽くなると言われることもあります。
そういう取り調べの中で、無実の人でも、絶望してしまい、自暴自棄になり、
ウソの自白をしてしまうのです。
近時でも、志布志事件、氷見事件、足利事件、布川事件という無罪事件では、
いずれもウソの自白がありました。
死刑判決に対する再審請求が問題になっている袴田事件でも、
捜査段階ではウソの自白がされています。
本来、誘導や、脅迫、暴力によって得られた自白は、
”任意性” がないとされて、証拠とすることはできません。
ところが、取り調べが密室で行われているため、
裁判でいくら主張しても、裁判官にはわかってもらえません。
裁判官は、何もしていない無実の人が、わざわざ自分が罪に問われるような不利なことを
言わないだろうと単純に考えてしまうのです。
こうしたことを防ぐためには、密室での取調べをすべて録画しておいて、裁判になってから、
取調室でどんなことがあったのかを検証できるようにしておくことが必要です。
公正な裁判のために、取調べの可視化が一日も早く実現されなければなりません。