循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

伝え、遺す原発ブログ(5)

2011年06月14日 | ハイテク技術
 イタリアで脱原発が決まった。メディア王ベルルスコーニの抵抗もあり、国民投票の成立そのものが危ぶまれたが、56.99%という結果にさすがの彼も敗北を認めざるを得なかった。
だが日本では「(この結果を)わが身に置き換え、熱い高揚感を持って」報道したのは、東京(中日)と毎日だけであり、他のメディアは「異国のできごと」、つまり外報ネタで片づけてしまった。これは6月11日の新宿デモを小さめに「客観報道」した姿勢といっしょである。
日本のメディアはそんなに自前で「脱原発」を唱えるのが怖いのか。

◆朝日の詐術
 それを裏付けるように、朝日はイタリア国民投票にひっかけ、11、12の両日、お決まりの全国世論調査(電話)を実施した。それによると、「原子力発電を段階的に減らして将来はやめる」ことに74%が賛成と答えた。反対は14%だった。朝日はつづけて、原子力の利用に賛成という人(全体の37%)でも、その6割が「段階的に減らして将来はやめる」ことに賛成と答えた。
. だからどうした、である。いまただちに原発をやめたら、「電気料金が上がる」「来るべき猛暑を乗り切れず、熱中症で人が死ぬ」「再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電、小水力発電など)はいますぐに基幹エネルギーにはならない」など、この3ヶ月間、小出しに国民を洗脳してきたのはほかならぬ朝日、産経など、産業界の御用メディアではなかったか。そんな中で「段階的にを減らす」という回答を引き出したところで世界中が不思議がるだけである。日本国民はこれだけ痛めつけられているのに、結局思考停止なのかと――。
 世論調査はイタリアの情勢が不利とわかって仕組んだ朝日の卑劣な世論誘導というほかはない。日本人最高の美徳である「中庸の感性」が逆用されたのである。
 「段階的に原発を減らす」とは手続き上、至極当たり前の話だ。ドイツだって原発を全廃するのは2022年、つまり11年後のことである。いま必要なのは脱原発を選択するかどうかの決意である。いまの日本はヒロシマ、ナガサキ直後の日本といえよう。
目の前で、日本民族の命と国土が人類史上最大の危機に立たされている。そして遂に放射性物質の中でも最強のストロンチウムが姿を現したのである。
5月8日、福島第1原発の敷地や周辺の海からストロンチウム90が検出された。その後、「なぜストロンチウム90のデータが出ないのか?」という声があがったが、東電も原子力安全・保安院も文科省もずっと沈黙を守り通した(4月12日に一度だけ、文科省が浪江町と飯舘村で微量を検出と発表している)。
 ストロンチウム90は核分裂反応によってつくられ、事故現場近くには高濃度で存在する問題は海洋汚染だ。カルシウムと性質が似ているので、イオン化して海水に容易に溶け出し、そのストロンチウム90をせっせと体の中に取り込むのが、コウナゴとオキアミである。食物連鎖メカニズムによって、大きな魚へと汚染が進む可能性が高い。魚も人間も、生物は皆、ストロンチウム90をカルシウムと間違えて、骨に溜め込む。骨に集まったストロンチウム90は、ベータ線を骨髄に向けてピンポイント照射し、白血病を引き起こす。最も深刻な内部被曝と言われる所以である。
 福島第1原発事故、というより事件は目下進行中であり、日を追って深刻化している。菅のバカではないが、どこにも「めど」など存在しない。

◆チェルノブイリ並みとは
大震災から2ヶ月目、政府は福島第1原発1~3号機にメルトダウンがあった事実をはじめて認めた。さらに3ヶ月経って、その一部に「メルトスルー(溶融貫通)」が起きた可能性があることを白状している。その経緯は6月7日、 政府の原子力災害対策本部が国際原子力機関(IAEA)へ提出する報告書の中に書き込まれた。
 だが事故直後の3月半ば、メルトダウンではないかと指摘していたジャーナリストがいた。例の上杉隆氏である。既存のメディアは総がかりで「不安を煽るデマゴギー」と彼を攻撃し、排除した。
政府も東電も忌み嫌った原発用語が二つある。ひとつは「メルトダウン」であり、もうひとつは「チェルノブイリ並み」である。
後者についていえば4月12日、経済産業省の原子力安全・保安院と原子力安全委員会は合同会見を開き、従来の暫定評価のレベル5(3月18日)からレベル7へ引き上げると発表した。事故発生以降の放射性物質の総放出量は、保安院の推計で37万テラ(1兆倍)ベクレル、安全委推計は63万テラベクレルで、レベル7(数万ベクレル以上)に相当するというのだ。ちなみにチェルノブイリ事故は520万テラベクレルである。
 レベル7への引き上げを受け、「最悪『レベル7』チェルノブイリ級」(朝日新聞、電子版)、「最悪レベル7 チェルノブイリに並ぶ」(毎日新聞、同)などと報じられ、関係者は不快さを隠せなかった。
 その一方、ツイッターや2ちゃんねるなどでは、「福島が(レベル)7ならチェルノブイリを8か9にするべき」といった声も出ていた。「放出量はチェルノブイリの1割程度」「チェルノブイリは炉心が爆発した。福島とは大きく違う」といった点から、「チェルノブイリ並み」といった表現に原発擁護派と反対派、双方が違和感をもったのである。

◆横暴・陰険な記者クラブ
ところで上杉隆氏が大手メディアや政府広報などから如何に痛めつけられたか、すでに多くの媒体で氏自身が書いているが、氏のメルマガからその一部を紹介しておこう。
この話はひとごとではなく、かつて小生も講談社・フライデーのカメラマンといっしょに記者クラブの当番記者と大ゲンカした記憶がある。テーマは何だったか忘れたが――。
以下、上杉氏の記述。
《筆者はこの10年間というもの、政府の公的な記者会見への出席を繰り返し求めてきた。そのたびに返ってくる答えは毎度次のようなものであった。「オブザーバーとしての出席
ならば、特例として許可する。しかし、会見中に一切質問はしてはならない」
 オブザーバーとして会見に出席して何の意味があるのだろうか。質問のできない会見に出るくらいならば、パソコンを開いて同時中継を見る方がマシだ。
 こうした論理はもちろん日本以外では通用しない。同業者が同業者を選別して、政府の記者会見を開催する国など世界中どこを探してもないからだ(中略)。
 思い返せば、「記者クラブ」システムとの争いは、文字通りに「不毛」であり続けた(中略)。2001年、小泉政権が誕生すると、首席秘書官に就任した飯島勲氏の配慮で、海外メディアも官邸に立ち入りできるようになった。ところが、知己のスタッフに会おうと官邸内を歩いていたある日、同業者であるはずの新聞記者からの通報によって警護官に尋問され、そのまま門外へ追い出されてしまったのだ。
 2003年、中川一郎政調会長(当時)の核論議容認発言を受けて自民党本部に忍び込んだ時も同様だ。会見で質問した直後、自民党の広報担当と「平河クラブ」(自民党記者クラブ)の幹事がやってきて、「不法侵入者」として私を党本部から摘まみ出したのだ》。
 上杉氏が「不安デマ」を煽ったというなら、大手メディアは「安心デマ」で人心を惑わしたのである。                                                              【以下次回】









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