循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

伝え、遺す原発ブログ(6)

2011年06月19日 | ハイテク技術
◆削岩機で壊す
6月8日から16日まで読売新聞が特集した連載コラム「検証・原発危機」の中で「原子力の技術者は意外に電気システムに詳しくない」(原子炉メーカー幹部)との件りがあって、やっぱりと思った。「事故は高度な先端技術ではなく、日常の基礎部分で起きる」というセオリーどおりだからである。基礎部分を必死で維持しているのは先ごろ「幻の名著」として有名になった「原発ジプシー」たちであり、その部分に知的エリートたちが手を出すことはない。
 先のブログで紹介した平井憲夫氏のコメントにも次のような記述がある。
【原発にしろ、建設現場にしろ、作業者から検査官まで総素人によって造られているのが現実ですから、原発や新幹線、高速道路がいつ大事故を起こしても不思議ではないのです。 日本の原発の設計も優秀で、二重、三重に多重防護されていて、どこかで故障が起きるとちゃんと止まるようにはなっています。しかし、これは設計の段階までです。施工、造る段階でおかしくなってしまっているのです。仮に自分の家を建てる時に、立派な一級建築士に設計をしてもらっても、大工や左官屋の腕が悪かったら雨漏りはする、建具は合わなくなったりしますが、残念ながら、これが日本の原発なのです】。
 13年前、都市ごみ焼却炉の清掃を請負っている会社を取材したことがある。いわゆるオーバーホール(年1回の定期点検)のとき入るのだが、「とにかく汗がダラダラ流れてメガネがくもって、マスクなんかしていられません」「焼却炉の中はごみが溶けて固まって内壁に厚くビッシリこびりついているんです。それがクリンカというやつで、そうなったら削岩機でドドドっと削って壊すしか方法がありません」。
 ひととおり説明が終わったあと、若い主任が「興味があるなら明後日の朝6時にここへいらっしゃい。炉内清掃作業を経験させてあげます」といったが、さすがに年齢も考慮して丁重にお断りした。

◆技術の階層性
 同じ時期、ガス化溶融炉の取材で試運転に当った現場技術者や作業員たちから匿名で話を聞くことができた。旧NKK(現JFE)のコークス型直接溶融炉である。
「僕らみんな予防注射を打ってから働いていました。炉のフランジ(継ぎ目)の締め付けが甘いとコークスなどの副資材投入口からCOガスが逆流する危険があります。炉内は負圧に保つことが原則ですが、炉の状況によっては炉内のガスの方が高くなることが結構あります。とても設計通りにはいきません。うっかり炉の中を覗き込むとガスを吸い込んで死ぬ可能性もあるんです」「危ないところにはCOガスの警報装置が設置してあって、作業員が検知器を携行することもありました。警報のパトライトが廻ったり、検知器がピ、ピ、ピと鳴ったら一目散に逃げます」「ごみの投入口が一度詰まるとダンパ(仕切り板)が閉まらない。ガスを吸い込まないように気をつけてそれを除去するとか、まさに非科学的な原始労働の世界ですよ。プラントが動くっていうのはそういうことなんですよ」。「高カロリーの廃棄物、たとえばシュレッダーダストなんかが入るとどうしても炉が不安定になる。特にバグフィルターの温度管理が難しいんです。高温になり過ぎるのを止められなくてバグがイカれたこともあった。そんなとき、バグを取り換えるのは生身の人間なんです。真っ白毛になってね」「鉄をつくる溶鉱炉作業で、昔は毎月のように人が死んだそうだ。溶けた鉄の鍋に落っこちたり、連続作業だから修理中の機会に巻き込まれたり、だから『金と命の日本コーカン』といわれた。毎年9月1日に、鶴見の総持寺で労災で死んだ社員の合同慰霊祭をやるんです。でもこれは正社員だけ。さすがに最近は死ぬ人は減ったけれど、労災で死ぬのは下請けが圧倒的に多い」(以上、拙著「検証・ガス化溶融炉」(緑風出版2000年11月発行より)。
 先のブログでも白状したが、長いこと原発について不勉強だった。というより無知だった。「止める」「冷やす」「封じ込める」の三つの関門、五つの安全保護の壁を日頃から電力会社が豪語している。その全部を信じたわけではないが、少なくとも「一般のごみ処理施設のようなお粗末なこと」にはなっていないとは思っていた。しかし平井さんの手記を持ち出すまでもなく、そこには確実に「技術の階層性」なるものが存在していたのである。
現在、最高学府(古いね)で原子力を学んだ知的エリートが約3万5,000人いて、約5,000人が各電力会社の「いい位置」にいるという。だが彼らのうち何人が「汗まみれでメガネがくもり」「検知器の音に怯えて一目散に逃げた」ことがあるのだろうか。
 ここにあるのは「技術にも階層性がある」という現実である。高度な原子力知識をもったエリートたちが電気周りに弱い、なんて普段ならシャレで済ます話だが、今回は通らない。通してはならない。まさにその階層性が犯罪的結末を生んだということなのだ。
その具体的事例が前々回のブログで紹介した平井憲夫氏の手記に数多く見ることができる。再び引用しておきたい。

<定期点検工事も素人が>
 原発は1年くらい運転すると、必ず止めて検査をすることになっていて、定期検査、定検といっています。原子炉には70気圧とか、150気圧とかいうものすごい圧力がかけられていて、配管の中には水が、水といっても300℃もある熱湯ですが、水や水蒸気がすごい勢いで通っていますから、配管の厚さが半分くらいに薄くなってしまう所もあるのです。そういう配管とかバルブとかを、定検でどうしても取り替えなくてはならないのですが、この作業に必ず被曝が伴うわけです。
 原発は一回動かすと、中は放射能、放射線でいっぱいになりますから、その中で人間が放射線を浴びながら働いているのです。そういう現場へ行くのには、自分の服を全部脱いで、防護服に着替えて入ります。防護服というと、放射能から体を守る服のように聞こえますが、そうではないんですよ。放射線の量を計るアラームメーターは防護服の中のチョ
ッキに付けているんですから。つまり、防護服は放射能を外に持ち出さないための単なる作業着です。作業している人を放射能から守るものではないのです。だから、作業が終わって外に出る時には、パンツー枚になって、被曝していないかどうか検査をするんです。体の表面に放射能がついている、いわゆる外部被曝ですと、シャワーで洗うと大体流せますから、放射能がゼロになるまで徹底的に洗ってから、やっと出られます。
 また、安全靴といって、備付けの靴に履き替えますが、この靴もサイズが自分の足にきちっと合うものはありませんから、大事な働く足元がちゃんと定まりません。それに放射能を吸わないように全面マスクを付けたりします。そういうかっこうで現場に入り、放射能の心配をしながら働くわけですから、実際、原発の中ではいい仕事は絶対に出来ません。
普通の職場とはまったく違うのです。
 そういう仕事をする人が95%以上まるっきりの素人です。お百姓や漁師の人が自分の仕事が暇な冬場などにやります。言葉は悪いのですが、いわゆる出稼ぎの人です。そういう経験のない人が、怖さを全く知らないで作業をするわけです。
 例えば、ボルトをネジで締める作業をするとき、「対角線に締めなさい、締めないと漏れるよ」と教えますが、作業する現場は放射線管理区域ですから、放射能がいっぱいあって最悪な所です。作業現場に入る時はアラームメーターをつけて入りますが、現場は場所によって放射線の量が違いますから、作業の出来る時間が違います。分刻みです。
 現場に入る前にその日の作業と時間、時間というのは、その日に浴びてよい放射能の量で時間が決まるわけですが、その現場が20分間作業ができる所だとすると、20分経つとアラ-ムメーターが鳴るようにしてある。だから、「アラームメーターが鳴ったら現場から出なさいよ」と指示します。でも現場には時計がありません。時計を持って入ると、時計が放射能で汚染されますから腹時計です。そうやって、現場に行きます。
 そこでは、ボルトをネジで締めながら、もう10分は過ぎたかな、15分は過ぎたかなと、頭はそっちの方にばかり行きます。アラームメーターが鳴るのが怖いですから。アラームメーターというのはビーッととんでもない音がしますので、初めての人はその音が鳴ると、顔から血の気が引くくらい怖いものです。これは経験した者でないと分かりません。ビーッと鳴ると、レントゲンなら何十枚もいっぺんに写したくらいの放射線の量に当たります。ですからネジを対角線に締めなさいと言っても、言われた通りには出来なくて、ただ締めればいいと、どうしてもいい加滅になってしまうのです。すると、どうなりますか。

<放射能垂れ流しの海>
 冬に定検工事をすることが多いのですが、定検が終わると、海に放射能を含んだ水が何十トンも流れてしまうのです。はっきり言って、今、日本列島で取れる魚で、安心して食べられる魚はほとんどありません。日本の海が放射能で汚染されてしまっているのです。海に放射能で汚れた水をたれ流すのは、定検の時だけではありません。原発はすごい熱を出すので、日本では海水で冷やして、その水を海に捨てていますが、これが放射能を含んだ温排水で、一分間に何十トンにもなります。 原発の事故があっても、県などがあわてて安全宣言を出しますし、電力会社はそれ以上に隠そうとします。それに、国民もほとんど無関心ですから、日本の海は汚れっぱなしです。
 防護服には放射性物質がいっぱいついていますから、それを最初は水洗いして、全部海に流しています。排水口で放射線の量を計ると、すごい量です。こういう所で魚の養殖をしています。安全な食べ物を求めている人たちは、こういうことも知って、原発にもっと関心をもって欲しいものです。このままでは、放射能に汚染されていないものを選べなくなると思いますよ。
 数年前の石川県の志賀原発の差止め裁判の報告会で、八十歳近い行商をしているおばあさんが、こんな話をしました。「私はいままで原発のことを知らなかった。今日、昆布とわかめをお得意さんに持っていったら、そこの若奥さんに「悪いけどもう買えないよ、今日で終わりね、志賀原発が運転に入ったから」って言われた。原発のことは何も分からないけど、初めて実感として原発のことが分かった。どうしたらいいのか」って途方にくれていました。みなさんの知らないところで、日本の海が放射能で汚染され続けています。

<内部被爆が一番怖い>
 原発の建屋の中は、全部の物が放射性物質に変わってきます。物がすべて放射性物質になって、放射線を出すようになるのです。どんなに厚い鉄でも放射線が突き抜けるからです。体の外から浴びる外部被曝も怖いですが、一番怖いのは内部被曝です。
 ホコリ、どこにでもあるチリとかホコリ。原発の中ではこのホコリが放射能をあびて放射性物質となって飛んでいます。この放射能をおびたホコリが口や鼻から入ると、それが
内部被曝になります。原発の作業では片付けや掃除で一番内部被曝をしますが、この体の
中から放射線を浴びる内部被曝の方が外部被曝よりもずっと危険なのです。体の中から直接放射線を浴びるわけですから。
 体の中に入った放射能は、通常は、三日くらいで汗や小便と一緒に出てしまいますが、
三日なら三日、放射能を体の中に置いたままになります。また、体から出るといっても、人間が勝手に決めた基準ですから、決してゼロにはなりません。これが非常に怖いのです。どんなに微量でも、体の中に蓄積されていきますから。
 原発を見学した人なら分かると思いますが、一般の人が見学できるところは、とてもきれいにしてあって、職員も「きれいでしょう」と自慢そうに言っていますが、それは当たり前なのです。きれいにしておかないと放射能のホコリが飛んで危険ですから。
 私はその内部被曝を百回以上もして、癌になってしまいました。癌の宣告を受けたとき、本当に死ぬのが怖くて怖くてどうしようかと考えました。でも、私の母が何時も言っていたのですが、「死ぬより大きいことはないよ」と。じゃ死ぬ前になにかやろうと。原発のことで、私が知っていることをすべて明るみに出そうと思ったのです。

時間軸を現在に置き換えれば、まるで3・11以後の福島第1原発事故を見るような記述である。「最高学府で学んだ原子力の専門家たち」は平井憲夫氏の手記を“ド素人のタワごと”と切って捨てた。少なくとも3・11以前までは――。

◆ホットスポットという名の目くらまし
 そしていま、我々の日常は確実に放射性物質に取り巻かれている。元原子力安全委員会専門委員の武田邦彦中部大学教授は、自身のブログで2011年5月10日、「柏、松戸、流山、三郷のホットスポット」として千葉、埼玉両県のケースを取り上げた。原発に詳しい民間有志の調査で、これらのスポットは、以前の基準、年間許容量1ミリシーベルトを超えていたというのだ。もっとも、事故発生後、文科省は暫定的として年間の許容被ばく線量の目安を「20ミリシーベルト」に変更した。
それ以降の経緯を6月3日の朝日新聞が以下のように伝えている。
「武田氏は、テレビでもお馴染みだけに、『子供を守ってください』と呼びかけると、住民から不安が高まった。千葉県柏市では、主婦ら約200人もが1万人分の署名を集めて、6月2日に市に提出。子どもが関わる全施設の線量測定や除染を要求する事態にまでなった。こうした動きを受けて、千葉県は、県内6市で5月31日と6月1日に大気中の放射線量について独自調査を行った。その結果によると、柏市では、1時間当たり0.54マイクロシーベルトと最も高い値を示した。年間にすれば、以前の許容量超の2.8ミリシーベルトだ。 文科省がさらに南にある千葉県市原市のモニタリングポストで行っている計測では、5月31日に0.044マイクロシーベルト。県の独自調査の方が、10倍以上も高かったわけだ。理由としては、原発からの距離といった地域的な違いのほかに、計測地点に置ける高さの違いもあったようだ。文科省が地上から7メートルで測っているのに対し、県では日常生活空間に当たる50センチで測っている。こうした経緯は、テレ朝系で6月5日に放送された『サンデー・フロントライン』でも紹介された。番組では専門家の話として、風向きや雨によって放射性物質がホットスポットに集まったのではないかと分析している」。
 筆者の住所は千葉県鎌ヶ谷市。隣の柏市とはヨーロッパなみの地続きだ。これまで正直、被曝地は200キロ向こうの福島と、どこかで割り切っていた。だがいまや日々の現実となり、雨が降るたび事態は深刻化する一方なのだ。
 それにしても、またお騒がせの武田邦彦先生がホットスポットの名付け親らしい。しかし行政までがそれを正式タイトルにするのは許せない。グルメ情報じゃあるまいし、なぜハッキリ「放射能汚染地域」と呼ばないのか。名指しされた地域以外でも数値の高いところがいくつもある。それも3ヶ月過ぎたいまごろになって、だ。これも「ただちに影響がない」の正式回答なのか。
 すでに我々はかなりの放射線量を浴びている。その地域に住んでいる子供や妊娠中の女性にとっては一刻も猶予できない現実である。おまえは年寄りだから関係なかろう、という向きもあるが、年寄りだから免疫も落ちている。被曝したら同じことなのだ。
それにしても孫正義や枝廣淳子らお追従分子に囲まれてハイテンションになっている菅直人の見苦しさは何だ。「再生可能エネルギーで直接全量買取り」という新たな利権のタネが生まれつつあるようだ。      
                                                    [以下次回]









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