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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

忖度から学びへ

2018-03-19 23:06:46 | ひとから学ぶ

 森友問題が再び脚光を浴び、国会では“忖度”が再来している。“汚れた「忖度」”でも触れた通り、悪名のごとき“忖度”は一人歩きしている。再度記すが、“忖度”は「他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること。「作家の意図を忖度する」「得意先の意向を忖度して取り計らう」 (デジタル大辞泉)という意味だ。ところが“忖度”は「上位者の意向を推し量る意味」で使われることで、庶民的には悪者に。しかし、考えてみれば世の中は、社会は、こうした“忖度”によって成り立っていると言っても過言ではない。階級があからさまになる世界では、下の者は上の者に深々頭を下げる。上位者が頭を下げるときは、選挙の時くらい。そもそもこうした上下関係を話すことも汚らわしいと思う人もいるだろう。しかし、現実社会はそれによって成される。もちろんそうしたしがらみ的環境にない人たちも少なからずいるから、すべての場面とは言わない。“忖度”の解説にもあるように、お客さんの心を推し量って配慮するわたしの生業にも、多分に“忖度”は登場する。仕事ができる人とは“忖度”のできる人、ではないだろうか。おそらくそれができない人は、巷では「自分勝手な人」になる。あえて悪名を消し去るとしたら、上位者が下位者の思いを推し量ることで、それは前進する。今の行政世界の上下関係を見る限り、解消できない関係かもしれない。

 仕事の関係で知事を囲む政治懇談会なるものに参加した(もちろん知事選が近いから)。こういう場面に身を置くことは一生ないだろうという環境にあった者が身を置くには、保ちにくい世界ではあるが、最近は仕事上政治との関わりが少しばかり多くなった。せっかくなのだから何かを学ぼうと思っていたら、知事は終盤「学び」という単語を連発された。もうひとつ「自治」という単語も。県という行政機関のトップなのだから当たり前の「自治」ではあるが、広い意味で県民が直接的に「自治」に関わってほしいという「自治」なのだ。ふたつを合わせて「学びと自治」、これをもってこれからの長野県を築いていく、それが知事の考えであり、集まった人たちにも「共感してほしい」と願った。

 考えてみれば「学びと自治」、最も危うい状況にある世界ではないだろうか。人口減少時代にあって、10年後20年後の危機的状況は、それ以後のまた10年後20年後を壊滅的に想像させる。しかし、それを前向きに何かしない限り、さらに人々のこころは果てしない底に陥ってしまう。だからこそ回避すべき策を講じなければならないということになる。が、しかし、このことは日記で何度も触れていることだし、一昨日も「マチの中の自治会費」で触れたように、今まで通りの人づきあい、あるいは自治であっては、限られた人手ではこなせなくなる。根本的に人づきあいは考え直さなくてはならないが、「自治」のトップにある行政には踏み込めない世界であるし、踏み込もうともしないし、さらには、いまだ旧態依然とした不合理も多ければ、責任回避のための言葉が度々発せられる。その原点こそ「学び」であり、そこから見出す新しい社会だと思うが、その実践にはほど遠い。また、それを行政という階級社会が解決策を発せられるとはとても思えない。この思いをどう下々の者が「共感」できるかにかかるのだろう。だからこそ、「共感してほしい」、は適した言葉なのかもしれない。

 「学び」という面で知事の頭の中にはない一つの私的提案がある。それはまさにわたしたちが実践しているものにある。ようは郷土史や文化活動だ。「学び」を上から示すだけのものではないとすれば、自発的に行われている「学び」がより大事と言える。知事も公民館活動に若干触れたが、それだけではなく、自発的に行われている「学び」は、それこそ長野県特有のもの。とりわけ郷土史に関しては特筆すべきことは今までにも何度も触れてきた。しかし、それを取り巻く現状は寂しい限り。人口減少時代に入って、そこに興味を示す絶対数が減るのは致し方ないとしても、自発的にそうした取り組みに関わろうとする人が昔に比較したらとても少なくなった。若者の意識変化もあるだろうが、「なぜ」という疑問符を持つ人々は少ない。これほど知事が「学び」という単語を発しているのに、自発的な「学び」の組織を行政が把握しようという動きは皆無だ。かつて教育県と言われた背景に、旺盛な郷土史への取り組みがあったのも事実。高齢化したそうした自発的動きを消さないための施策はなぜ行われないのか、そもそも認識があるのか、と問われる。


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