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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ある地域の自治組織

2024-08-02 23:06:32 | ひとから学ぶ

 ある地域での話を聞いた。約250戸くらいあるという集落は「区」である。その下に常会が8あり、「ゴコ」と称されているいわゆる隣組に当る集まりが25ほどあるという。区の役員は「耕地総代」とも称されるようだが、4つの集落から一人ずつ4人選出されるという。そして区長はその4人で話し合いで決められるという。一人は区長、ほかに副区長、総務、会計という役員となる。耕地総代4人の互選で区長が決まる、というのは意外だったが、ここまではごく普通な姿かもしれない。そして何と言ってもこの区の構成には、通常神社の氏子総代と言われる人が「文化保存伝習部」という名称で区の役員に加わることだ。神社総代が区の役員に入るというのは、きっと違和感があるだろうことは容易にわかる。政教分離は、国家と宗教団体の分離の原則をいう。神社という宗教性の高いものが、自治組織の中では分離されて当然なのかもしれないが、実は自治組織の中で、意識されていても、従来通り自治組織の役員のように捉われている例は多い。寺は檀家制度によって集落全ての人が同じ寺に属すことはなく、また集落ごと寺があるわけでもない。そのいっぽうで神社は、集落単位で氏子になっていることがほとんどだ。自由に神社を選択しているなどという例は聞いたことがない。したがって神社総代を決めるには、自治組織の役員との重複を避ける意味でも、自治組織の役員選考に合わせて行われるケースが多くなる。とりわけ農村部はこの形が一般的かもしれない(長野県内では)。

 ということでここで例示した区では、神社総代ではまずいから、という意識もあったのだろうが、前述したような名称を付して、実際氏子総代と同様の役を担っているという。しかし、「文化保存伝習部」という名がついていることで、むしろ氏子総代以上に自治活動にかかわることが多いよう。まさに自治組織を担う一役員なのである。耕地総代と文化保存伝習部、合わせて8名については、常会からの推薦というようなスタイルをとっているようで、8常会の常会長は、区の役員を決める選考委員になるのだという。これら8名の役員の任期は2年で、任期が切れるとそっくり変わるのだという。したがって役員が次期重なることがないため、けっこう大変だという。そして何と言っても事業が多い上に、とりわけ耕地総代と言われる4名は出席する日数が多く、役員の負担が大きいという。あまりに役員の負担が大きいため、役員のなり手がいなくなると懸念されていて、現在の役員構成に限らず、区の様々な問題を検討しようということで、「検討委員会」が編成されたという。

 かつてこの地区の祭礼について何度となく足を運んで調べたことがあったが、当時からその祭礼に行われる芸能への力の入れように驚いたもの。地域の一体感がなければなかなかできないことと思ったものだが、今回自治組織の役員の実態を聞いて、この徳の役員の大変さを実感したわけである。わたしの周辺の地域と違い、都市近郊である。にもかかわらず、氏子総代が自治に大きくかかわり、そして隣組を「ゴコ」という。地域の自治とは、見た目以上にその地域の特殊性があり、都市近郊でもつきあいが強い地域が意外に多い。もちろんあくまでもこの区らしいものであって、隣もそうだというわけではない。地域社会がとても多様だという例である。


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