Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

マチの中の自治会費

2018-03-17 23:46:55 | ひとから学ぶ

 飯田市街地である丘の上の店で農村部ではありえないような話を聞いてびっくりしたが、考えてみれば、農村部でも似たような例がないわけではないとも感じた。

 主税町にあるその店の方は、店とともに住居を併設されている。町の中だから住居は別という方も少なくないだろう。ということもあって、町内会にある隣組も、居住されている方たちで編成される。その方の隣組は4軒と少ない。しかし、同じエリアに店を構えている人もいて、実際に町内会費を納めてもらっている方は10軒以上あるという。丘の上は昭和22年に「飯田の大火」に見舞われた。中心部の商店街、約60万m2が焼失したと言われ、これを機に火災復興において「裏界線」なるものが作られた。幅2メートルほどのもので、裏道のような空間である。「裏界線」については「“裏界線”の道祖神」で少し触れたことがある。飯田の街の中を歩く際には、よく利用させてもらっている空間だ。大火後に町内が定められてこの裏界線を境にして町内が分かれている。ということで、店の方は当初は主税町にのみ土地と住居を持っていたようだが、裏界線を越えた隣接地を購入して、後に住居の一部を隣の町内に構えたという。住居に限らず、土地があれば町内会費を払う対象になるという。したがってその方はふたつの町内に会費を払っているという。その話を聞いてびっくりしたわけだ。よく聞くと、いわゆる町内会の行事は主な方である主税町だけで、隣の町内会の行事には参加されないという。というか案内も来ないようだ。「同じ町内会費を払っているんですか」と聞くと、そういう場合の町内会費は、主たる町内を編成されている方たちとは差があるという。ようは同一会費というわけではなく、多様な例に合わせて金額を決められているようだ。とはいえ、住宅に限らず土地があればその所在している町内会にも会費を支払う義務が生じるという話を聞いて、これは農村部ではありえないと思ったわけである。

 町内会費は月単位で徴収され、隣組長が毎月集めるのだという。年間にすると1万から2万円くらいになる町内会費を、毎月決められた額を集める。「何に使うのですか」と聞くと、いわゆる町内会の行事の飲み食いが中心になるらしい。家がはみ出ている、あるいは駐車場が隣の町内会にある、そんな場合にも自分が暮らしている町内ではない別の町内会費を払う。別の町内会の話を聞いたことがないから、どこの町内会も同じようなことをしているかは分からないと言われる。「ちゃんとみんな払ってくれるのですか」と聞くと、やはり払わない人もいるという。大きな店を構えている方でも、払わない人は払わない。強制ではなく協力金的なものなのだろう。主税町の隣の銀座では、建物はあってもみな東京に行ってしまって誰も住んでいない人に、町内会費だといって、月に1万円以上も払ってもらっている例があるという。

 農村部でも、今や住居はあっても住まう人がいなくなった家は少なくない。妻の実家もそうだが、家は残り、農地も残る。結果的にそれこそ丘の上に住居を置いている弟が、地区のつきあいをして、同様に区費なども収めている。考えてみればこの例と同じかもしれない。しかし、土地が少しはみ出ている程度でよその町内会費を払ったり、土地があるからと町内会費を払うとしたら、場合によってはふたつどころか三つ四つと町内会費を払わなければならないことも生じる。逆に捉えれば、これからの人口減少時代には、今まで当たり前のようにやっていたことを考え直さないと、暮らしにくい空間になってしまうこと必然である。


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