Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ナマコブームの背景

2007-04-21 09:42:28 | ひとから学ぶ
 「生活と自治」4月号の「現場の真相」という記事でナマコのことが触れられている。「現場の真相」なんていうタイトルを見ると、どこかのテレビでやっていそうなタイトルだ。さすがに生活クラブ連合の記事だから、ウソではないと思うが、この記事に日本らしい現象を見て納得してしまうとともに、いつまでたってもこの国は救えない国だ、と思ってしまうわけだ。

 記事によると4、5年前には浜値で1キロ300円だったナマコが、今では2500円を越えるという。未曾有のナマコブームの背景は、もともと中国に輸出されてきた日本の特産品であるが、中国での富裕層増加に伴い、ナマコの消費が増加している①ためだという。もちろんそんなことだから、暴力団の密漁が始まり②、そうした密漁に必ず漁師が関わっているといい、ナマコで生計を立てようとしている漁師たちも疑心暗鬼となる③。そしてナマコは育つまでに5年以上かかることから、小さいものは海に戻すという配慮があったのに、乱獲状態で減少してきている④という。減少の対策として北海道漁業組合連合会は、ナマコの品薄をカバーすべく近縁種のフジコで代替輸出を企てた⑤というが、味は似ているものの身が薄く堅いという意見が輸出先から届いているようだ。さらには、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際会議でこのナマコが検討されているというから、漁師たちはますます笑ってはいられない。

 ここに動きについて①から⑤のナンバーを振ったが、こうした流れはナマコに限ったことではなく、ほかのものにも現れている現象だろう。とくに「富裕層の増加とともに消費増加」というケースは、かつては国内の動きだったかもしれないが、最近は中国の動向に左右されるわけだから、さらに怪しくなってくる。海外がらみには密漁がからんでくるし、加えて稼ぎになるからといって見境のない商戦となってゆく。動植物には限度というものがあるから、人間の食事量に合わせて捕る量を合わせていたら絶滅する種だって出てくるだろう。以前にも書いたが、マグロを中国人が食べ始めたら日本人の食べる分なんてなくなってしまうだろう。マグロを食べるのが日本の食文化というのなら、いずれは文化の格差が生じてくるわけだ。食を文化なんて言っているうちはまだ平和で、先々を見渡す限り、「食の文化」という言い回しは世の中の流れに迎合していないのではないか、なんて思えてくる。

 さらに問題なのは、銭になるからといって道漁連がナマコの代用品を持ち出したことだ。ブランド化しようとすることを優先するからそうした行動に出る。もちろんそうでもしない限り、地域ブランドを売り出せない、という悩みはあるかもしれないが、このごろの地方は、何でもいいから銭になることを画策しすぎている。地方が活発になろうとする限り、①から⑤という同じようなパターンは、全国あちこちで起きるはずだ。
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