Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

林立する防霜ファン

2007-04-30 14:22:58 | 農村環境


 おとといの夜、霜予報が有線で報じられていた。そして翌朝、みごとに霜が降りた。ことしの4月期、霜の降りそうな朝が多かった。今までならそんなことに気がつかなかったが、犬の散歩をするようになって、朝方の様子を毎日のように感じながら、今までここに暮らし始めてあまり意識していなかった世界を見ることになった。

 わが家のすぐ隣は果樹園である。いや、わが家のある場所も、十数年前までは果樹園だった。それだけではない。隣接するどの土地も果樹園であった。しかし、南も西も、そして北も東も、今ではどの土地も空き地となっている。先日も梨の花が盛んに咲いているなか、今年の花つけの準備が始まるのかと思っていたら、いきなりチェーンソーの音が1日中鳴り響いていた。何を切っているのだろうと思いきや、花の咲いた梨の木を伐採しているのである。この時期に伐採するほどだから、よほどの理由があるのか、切る時期を逸していてこの時期になってしまったのか、定かではないが、花つけ寸前の伐採のというのも痛々しいものである。果樹農家ではないわたしにはその心持はわからないが、こうして周辺の果樹はどんどん消えてゆく。

 そんな切られた果樹園にもたくさんの防霜ファンが立ち並んでいる。数年前まではそんな防霜ファンが、この季節時おり夜中に鳴り響くことがあった。すぐ近くで回る防霜ファンは、けっこうな騒音である。霜が降りる兆しを、そんな防霜ファンの音で感じ取っていた。しかし、その防霜ファンも、今年は一度も回ることはなかった。当たり前といえば当たり前で、果樹が切られてしまえば、回す必要もない。木々は切られても、防霜ファンだけは林立している。切られたあとの果樹園がどう利用されるかによって、いずれまた利用される時がくるやもしれない。だから撤去費もかかりそうなそうした施設が取り除かれることはない。

 犬の散歩に行きながら気がついたのは、わが家から聞こえる場所で防霜ファンが回ることはなかったが、そうではない場所では毎日のように防霜ファンが回っていた。それほど防霜ファンが有効に回る年は多くはないだろう。わたしの記憶では、ここに住むようになって防霜ファンが毎日のように回り、「うるさいなー」と感じたことはなかった。もちろん果樹がまだ切られる前のことではあるが。さすがに果樹園が多いだけに、見通しのよい場所に出ると、防霜ファンがたくさん立っていることがわかる。林立したたくさんの防霜ファンが、わけもなくたたずんでいる場所が多くなった。果樹の町として売り、また知られてもいるが、いつそんな看板が降りるとも限らないの現状が、この姿から読み取れる。
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