Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

高校再編問題から

2005-11-29 08:13:49 | ひとから学ぶ
 長野県では高校再編案が地域ごとに議論されていている。県教委は、全日制89校を再編して75校に、定時制23校を再編して13校にする予定で、今年になって県教委としての再編案を提示して、たたき台をもとに地域で議論してきた。簡単にいえば高校を削減するわけで、たたき台である県教委案がいきなり提示されたときには、県内が大騒ぎになった。「なぜいきなり対象高校名を出すのか」と。削減されるとされた高校には、まだ歴史の浅い学校もあれば、伝統校もあった。とくに伝統校にあっては、卒業生も多く、地域を担っている人たちの母校もある。削減ありきで進められた県教委のやり方に、不満は続出したとともに、もちろん在校生からも「おれたちの高校をなくさないでほしい」という意見が出て、先行きを案じる声が多かったが、いかんせん人口が減少しているとともに、子どもの減少はさらに顕著で、将来を考えれば致し方ないという雰囲気があった。そのため、たたき台ありきではなく、改めて地域ごとの再編を議論してきている。
 実は県教委再編案によるところでは、わたしの母校は廃止ということであった。わたしは高校時代がとてもつまらない3年間だったということもあるが、母校に対して特別な気持ちもなく、なくなっても仕方がないという気持ちはあった。伝統校であるから、卒業生がたくさんいる。ましてや高校野球の優勝校であるから、反発は多いだろうという印象はあった。しかし、予想したほどの反発はなかったように思う。わたしが普段遠い地にいるからそれほど声が聞こえなかったのかもしれないが、むしろ他の地域の方が反対の声は大きかった。さまざまな反論はあったが、冷静に案をみれば、意外にも順当な案であったように思う。校舎が新しく、敷地の広い高校を優先して、その近在にある高校を廃止するという案で、視点を変えれば、そんな理由で廃止するのか、という意見もあるだろうが、経営側にとってみればごく自然な流れである。
 さて、南信地域では、当初上伊那で1校、下伊那で1校廃止という案であったが、縦に長い地域性ということもあるのだろう、諏訪でも1校廃止して各郡1校減という案でまとめようということになった。年内にその検討結果を報告するようにという県教委の指示にもよるが、時間がないということもあって、この23日の推進委員会では、各郡の削減案によって校名を示すというような流れであったという。ところが諏訪と上伊那は対象校名を発表したが、下伊那は発表しなかった。このことに対して発表した地域が、下伊那の対応を批判して、推進委員会がもめているようだ。公開で議論している下伊那のやり方では時間的に間に合わない、という批判なのである。もともと削減対象でなかった諏訪も1校減でいこうと理解したはずなのに、もたもたしていたら、共通認識すら覆されかねないという危惧なのだろう。
 再編に対しては、知事の意向も強かったのだろうが、県教委案が出たときも、口数は少なかった。地域の批判が出る問題なので、知事はあまり表に出てこなかったといえよう。ある意味県教委が悪者になりきってでも、再編せざるを得ないという現実を思い知らされる。県立高校というものはたくさんあるが、経営者はひとつなのである。だから、ランク付けされていれば、まず進学校はその対象からはずされる。あいまいな高校は、先のようにその立地上の環境で削減対象になる。ここが大きな問題なのである。私立のように学校ごと経営が違うのなら、それぞれの学校ごとに特徴を持たせなければ経営が成り立たない。ところが県立高校は、県が経営者だから、特徴はといえば学力のランク付け程度である。私立の佐久長聖高校が、スポーツの名門に加えて進学校としての特徴をすでに見せている。こうした経営感覚は、県立高校にはない。真に高校教育の再編を目指すのなら、統合されようが母校がなくなろうが、これからの子ども達のことを考えて、どうすればよい環境が整えられるのかを考えるべきで、どこの高校を廃止、あるいは統合するかなどという目先のことを考えていてはだめである。おそらく県教委もそのくらいのことは認識して再編しようとしているのだろうが、地域の考えはどうしても目先にいってしまう。なによりわたしが憤慨するのは、意外にもこうした地域の再編の推進委員は、いわゆる進学校の出身者が多く、かれらにとっては対象校に対しては当事者ではないということである。これからの子ども達のことを優先して、よく考えてもらいたい。これは、削減対象校出身者としての気持ちである。
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