Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

当事者でない人たちの合併論議

2005-11-09 08:12:30 | ひとから学ぶ
 ホームページを旅していて、大変気になるページをみつけた。近くのある村の出身者が東京で開いているページで、その人の掲示板にたどりついたのである。そのページは出身地の村を扱ったページで、年に何度も帰省しているようで、その際に取材した村の様子や写真を中心に掲載している。ページそのものは普通というか、格別気になったわけではないが、掲示板の書き込みが大変興味深いと思ったことと、反面田舎に住む者にとっては、少し反論したくなる面もあった。
 最近この村にあった出来事として、合併問題があった。その村は、それまでおこなった住民意向調査では、合併に反対が多かったものの、最終段階の合併意向調査で賛成が反対を上回った。しかし、他の合併対象市町村において、反対票が多かったため、合併はご破算となった。ページには、この合併に対しての書き込みがいくつかあって、村から離れた人たちが、郷愁感覚で反対であるというような書き込みをしているのである。たとえば「○○村と○○が合併して、その名前がなんと『○○市』になるって事みなさんどう思いますか?それで良いと思うのなら仕方ないですがもしおかしいなと思ったら、今からでも遅くはないですから反対の意志表示をして頂きたいと思います」の書き込みは、内容から村の人か、村から出た人なのか、はたまた合併にかかわっている他の市町村の人かは判断できない。しかし、その書き込みに対して、「新聞に載っていたのを見まして目を疑いました。私は賛成できないに1票。東京で周りの方々や海外の方々に話しても皆さん、そんなの無いでしょう、なぜ?との返事。そうですよねー。なぜもっと日本文化を尊重しないのでしょう?」と答えた人は、村を出て東京に住む人である。また、「○○が今のまま出来る限り存続していくことを望むばかりです」 とか、「○○村というところは、なかなか骨のある人物が多いところだから、安易に合併しないですよね!!! それにしても、この平成の大合併のご時世に、やっぱり○○はがんばっていますね」というような具合に、村に住まない者が、かつての村がなくなることを憂いているのである。幸い、ページ管理をされている出身者が「でも最優先すべきはお住まいの方々のご意見でしょうから見守っていたいと思います」と結んでいたので、少しほっとしたのである。
 また、掲示板にこんなことも書かれていた。「昔、Aは武家方(北朝)、Bは宮方だった。そのためかAは進歩的でBは保守的な土地柄だ。南北朝時代からの歴史的背景を挙げて説明されても感心・・・しました。戦で武家方として討ち死にした祖先の話のついでに出た話です。今回の合併話を宮方と戦い討ち死にした先祖はどんな思いで見ているやら」。これに対して、管理者は「初めて知りました」とコメントしている。このAとBは村を二分した地域を言っていて、もともとこの二分された村が、昭和の合併で一緒になった際にも、なかなか融合できなかったことを例にとってその地域性を物語った話なのである。ここに、意外にも管理者である出身者は、村の歴史的背景をほとんど認識していないことと、今を存続していってほしいというイメージで現在を捉えているものの、存続していく「今」をあまり認識していないのではないか、ということが見えてくる。往々にしてこういうケースは多いのだろう。村から出た者は、出た時点で村の姿が止まっている。そのままふるさとイメージされた姿を継続していくには、合併という形で村がなくなることは大きな問題なのである。まず村が残っていなければ、ふるさとを思っていた心が失われてしまう。いや、本当は、村の名が消えようと、自分が思う地域は残っているはずなのに、願わくばという希望なのである。
 さて、この村は前述したように、昭和の合併後も、村の内が溶け合うには時間がかかった。いまだに、二分された地域の環境の差が大きいために、両者を対比してものを言う地域性が残る。そんなある意味、どろどろな部分があっても、そこに住む人たちは、なんとかしようと努力してきた。外へ出た人たちが、郷愁だけで村を思うのではなく、本当の「今」を見て、合併問題がどれほど深刻なのかを理解することが必要ではないだろうか。縁あって、この村に入り、多くの人たちの言葉を聞いた。それでもわからない姿があるとともに、村に住んでいても、先に述べたような歴史的背景をあまり知らない人は多い。

補足 実はわたし次男だったから、地元の町を離れて近隣に家を建てた。この合併話の仲間なのだが、確かに、合併せずにいてほしいと心の中で思っていた。しかし、自律を選択した場合は、住んでいる人たちが当事者になるわけだから、その人たちが決めること。だから、地元の合併に対しては他人には一言もコメントした覚えがない。
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