夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

昔と今のリンク~1980-81年:地獄の黙示録

2005-10-24 | review

 フランシス・コッポラの映画「地獄の黙示録」は79年の作品ですが、日本では80年の公開だったと思います。“Apocalypse now”(現代の黙示録)という原タイトルですが、「地獄」ってつけたのは、キャッチーではあるでしょうけど、必要以上におどろおどろしい感じ印象を与えたのかなって思います。しかし、むずかしい話は抜きにして、戦闘ヘリで「ヴァルキューレの騎行」をかけながら、機関銃でヴェトナムの住民を打ちまくるシーンに私が異様な興奮を覚えたのも事実です。「2001年宇宙の旅」の「ツァラトストラかく語りき」とともに、その音楽の聴き方に決定的な影響を映画が与えたと言えるでしょう。

 さて、80年2月にソ連のアフガニスタン侵攻を非難して、モスクワ・オリンピックのボイコットを政府が決めたことが大きなショックをスポーツ界に与えました。アメリカに追随したわけですが、マラソンの瀬古さんを始め、かわいそうな目に遭った人が多くいました。

 この時期は田中角栄が突然の76年の逮捕で失脚しながら実質的な権力を持ち続けるという、二重権力状態にあったため、自民党の党内抗争が激しく、そのため少数であるはずの野党が提出した大平内閣への不信任案が自民党議員の大量欠席により可決されてしまうという椿事が起きました。今年の夏の郵政民営化法案をめぐる解散、総選挙と似てなくもないですが、この時は大平さんが衆参同時選挙中に心筋梗塞で倒れ、亡くなってしまい、おかげで自民党が圧勝してしまいました。弔い合戦って、心情に訴えるのか強いんですね。鈴木善幸って、まあキャラの薄い、田中派にとって都合のいい人が首相になって行政改革を進めようってことで、81年には土光さんが会長のいわゆる臨調ができました。それでやったのが国鉄、電電公社、専売公社の3公社の分割・民営化。正式の決定は82年ですが、これまた“歴史は繰り返す”っていう陳腐な言葉を思い出させるような感じです。

 海外ではいろんなことがありました。81年5月には韓国で民主化運動を武力で抑え込んだ光州事件ってのがありました。韓国が軍事政権から民主的な政権になるのはずっと後のことです。ポーランドでもワレサが率いる自主管理労組“連帯”が同じ歳の9月に結成され、ソ連の影響下のヤルゼルスキ政権と対立していました。イスラエルが周りの国に軍事力を行使したりしてまして、81年6月にはイラクの原子炉施設を爆撃したり、レバノンも8月に攻撃しました。こうした事件を並べると“隔世の感”っていうこれまた便利な言葉を使いたくなりますw。

 社会面的な話題では、80年の1月にせっかく来日したポール・マッカートニーが大麻を所持してたってことで、成田で逮捕されちゃいました。拘置所で同席wした諸氏に「イエスタディ」を歌って聴かせたなんて話がありました。4月には大貫さんって人が1億円を拾って、時効までに落とし主が出てこなかったので自分のものになりました。ビートたけしが長くネタにしてた話ですが、落としたって言うか、捨てたのは株の仕手筋の人だとか。ホリエモンとか村上ファンドも落としてくれないかなw。
 7月には「イエスの方舟」事件が起きました。これは千石イエスって人の周りに家出した若い女性が集ったっていう話なんですが、家族側から言うと娘をかどわかされた、娘から言うと救いを見つけたっていうところのようで、かなりマスコミは騒いだし、警察も無理な逮捕をしたりもしたんですが、結局不起訴になったという、ひょっとすると後のオウム事件の時の対応が遅れた原因の一つになったかもって思う事件です。映画にもなったようですが、単純に割り切れない不思議な印象の事件でした。8月の6人が犠牲になった新宿バス放火事件、11月の金属バット両親殺害事件などは、無差別殺人や家庭内暴力という意味で、その後も多く発生し、“ありふれた事件”になってしまいました。

 81年2月のローマ教皇の来日は物語で触れたのでパス。3月には中国残留孤児が初めて日本に来て、このときは47人中26人の身元が判明しました。その後も来日調査は続き、判明率は下がっていきましたし、先日訴訟を起こしたように彼らの日本での生活は厳しいものでした。その原因の一つは“日本語をしゃべれない日本人”に日本の社会はやさしくないということでしょう。12月にはヴァイオリニストとして有名だった芸大の海野教授が偽ガダニーニの鑑定書事件に関与したということで、収賄容疑で逮捕されました。こういうお上品な人のスキャンダルはいつの世でもおもしろいものです。

 さて、歌謡曲ですが、80年は「雨の慕情」、「青い珊瑚礁」、「ダンシング・オール・ナイト」、「昴」などですが、何と言っても山口百恵の引退が大きかったですね。81年は「ルビーの指輪」、「ギンギラギンにさりげなく」などです。薬師丸ひろ子が「セーラー服と機関銃」でデビューしたのもこの年です。

 マンガではちょっとサイトで調べたらその年の少年マンガ雑誌の新年号の掲載作品が載っていたので、ピックアップすると80年新年号のジャンプに「こち亀」、「すすめ!パイレーツ」、「キン肉マン」という名作に「コブラ」、「リングにかけろ」、「私立極道高校」といったものも載っていました。マガジンには「1・2の三四郎」、「おれは鉄兵」「翔んだカップル」、サンデーは「がんばれ元気」、「まことちゃん」などです。81年新年号ではジャンプに「Dr.スランプ」、マガジンに「あした天気になあれ」、サンデーに「うる星やつら」が新たに載っています。こうして見るとジャンプの全盛期ですが、それ以上にこの頃でもまだまだ少年マンガ誌を読んでいたんだなあって感慨をもよおしてしまいましたw。


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2 コメント

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「地獄の黙示録」 (8マン)
2005-10-24 18:27:49
なつかしい映画です。最近になって「デジタルリマスター版」とか何とか…いわゆるノーカット(復刻)版をTVでやったりしていましたね。この映画で印象に残っているのは特命をうけた大尉(?)のセリフで「西洋人は傷つけておいて治療する…東洋人は命がけで…」とか何とかいう内容の部分があって、コッポラも西洋人だな、という感想を抱きました。ベネディクトの「菊と刀」ほど類型化された欺瞞は感じませんでしたが、コッポラが超えようとして超えられなかったものを感じました。もちろん「ヴァルキューレの騎行」が見事にハマッテいたのは監督の秀逸な感性で、そこまでは見越すことができたんだな、と思いました。最後にマーロンブランドが「ホロー」とか何とか、何か重々しいことを匂わせるようなセリフを吐きますが、ちっともピンと来なくて難儀しましたよ^^。いい映画だったのですが、とにかく長すぎますね。「黙示録」だから?
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居心地の悪い映画。。 (夢のもつれ)
2005-10-24 20:33:55
コメントありがとうございます。

本文にも書きましたが、同じアジア人がヘリで機関銃の的になったり、ソンミ村事件のような虐殺されたりされるのが映像としてはおもしろい一方で、道徳的にいけないなって感じが同居してしまうようでした。



私も派手な戦闘シーンのない後半はうつらうつらしてましたw。もう一度見れば感心したりするんでしょうかね。
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