夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

AIはいつマークスの山が書けるか?

2016-03-27 | review
マークスの山をhuluで見てて古くさいステレオタイプの作品だなって思いました。

あいも変わらず、悪は権力者で、そいつらは学閥でこの国を牛耳ってきた。正義は一介の刑事や一介のジャーナリストにある。そんなことを骨格にして原作者の高村薫はせっせとたくさん書いたのでしょう。一介のを2回言ったのは大事なことだからです。でも、残念なことに彼女が考えているような正義感はそんな連中にはありません。嘘だというなら例えば公安警察が何をしてきたか、何をしているか書いてみたらどうでしょう? マスコミが巨悪よりもずっと多くの政治家やタレントたちのどうでもいいようなスキャンダルに血道をあげてきたか、中学生でもわかっているんじゃないですか? 中にはマジメな人もいるというなら、どんな腐敗した企業や集団だってマジメな人はいます。問題は全体にあるんで、個別は関係ありません。高村は自分と読者が感情移入しやすいから、それがみんなの願望や妄想なので、それに狎れ、媚びただけです。

特権階級なるものがあって、それが国家を牛耳るなんて、松本清張と龍が如くのカクテルですか? 陰謀史観は晩年ゴーストライター任せだったとしか思えない松本でおしまいにすべきでしょう。高村はポスト団塊世代のはずなのに新旧左翼的発想から一歩も出れないし、もっと若い世代の、ミステリー作家も変わらないんじゃないかと懸念されます。山手線の中の代々木の共産党本部と神田やお茶の水のカルチェラタンの間をいつまでうろうろしてるんでしょう。旧社会党本部があった国会近辺に騙されやすい世間知らずの学生や主婦を集めてみても何も変わらないと気づかないのは不可思議で、よほど教養がないか、商売の必要上わかっちゃいるけどやめられないの類いでしょう。

しかしながら、三等重役シリーズで人気を博した源氏鶏太が晩年自著が次々と絶版となったのを嘆いたことは、今や平均余命が伸びたあらゆる作家のリアルな現実でしょう。おそらくほとんどすべての作家は同じ運命をたどるどころではなく、年収200-400万円から経年的に貧困層に落ちていく宿命でしょう。その表面的な原因は電車の中で本を読んでいた人がスマホをいじるようになったからですし、根本的なそれは書くこと自体の労働価値が減少の一途をたどっているからでしょう。ニュースがスマホでタダで読めるようになり、アニメや実写のドラマや映画にならない限りまず元が取れないようじゃ劣化のスパイラルは不可避です。

つい先日、コンピュータが書いた小説が星新一賞の1次選考を通過したというニュースに接しましたが、これが端的な予兆でしょう。高村でもどっちの村上でもいいんですが、彼らの全作品をコンピュータに読み込ませて、梗概かシノプシスを与えればご本人以上に端正でおもしろいものが量産される日は近いでしょう。プロ棋士がコンピュータに勝てなくなれば彼らが失職することはないと思いますが、かつて星一徹がツルハシで道路を掘っていたのがパワーショベルに取って代わられたのと同じようなことになると想像できないようでは手筋のヨミが甘いのではないですか? ぼくはラダイト運動というのはそんなにバカげたことだとは思いませんし、直感的に彼らが感じたことはまぎれもなく現実となったと思います。そういう波にいわゆる知的労働者がのみ込まれないと思う人は自分の知性を疑った方がいいでしょう。

もちろんそういう波はすべてにいっぺんに襲いかかるわけではなく、つまらないもの、価値の低いものから順にでしょう。その判別はぼくにとってはとても簡単です。100年生き残ったものはとりあえずだいじょうぶです。例えば出版当時、純文学作家から蔑視されていただろう江戸川乱歩の今の読者はほとんどの同時代の作家より多いでしょう。貧困とアル中のエドガーアランポオに至ってはおそらく不滅と言えるでしょう。ずいぶんえらそうなことを書いてきましたが、ぼくはいいAIだかアプリがこのブログを読み込み、ぼくの死後も悪態を吐き続けてくれることを一日千秋の想いで待っています。




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