夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

スペシャリスト/自覚なき殺戮者:Un spécialiste, portrait d'un criminel moderneは何を表現しているのか?

2016-09-14 | review
 この映画はhuluで見たんですが、その解説によるとナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判を捉えた350時間にも及ぶテープを、ハンナ・アレントの著作「イェルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告」を踏まえて編集した幻の傑作で、ユダヤ人追放のスペシャリストとして頭角を現したある男の、その実像をあぶり出したものとのことです。原題のフランス語を直訳すると専門家・現代の犯罪者の肖像となるでしょう。 . . . 本文を読む

北朝鮮において客観的な歴史は可能か?4.

2016-06-20 | review
 重村智計は書の末尾を「国際教養の時代――翻訳・通訳文化からの脱皮」と題して、次のようなことを書いています。  古典を読め、リベラル・アーツで真の教養を身に着けろと言うのは1945年生まれの人らしいお説教ですが、フクヤマの「歴史の終わり」を現代の古典に挙げている時点で、お里が知れるといったところです。ということで、彼自身の教養の内実を見てみましょう。  ヘーゲルの原典を読んでもさっ . . . 本文を読む

北朝鮮において客観的な歴史は可能か?3.

2016-06-17 | review
 6/5の21時から放映されたNHKスペシャル北朝鮮”機密ファイル”はいろいろな意味でおもしろいものでした。  まず番組制作者の意図に沿って簡単にストーリーというか、プロットを紹介すると、情報が封鎖された北からとっても重要かつプリントアウトすると1万ページにも及ぶ大量の情報が台湾ルートでUBSメモリーによってもたらされた。それを日米のインテリジェンスのOBが分析していくと、北の支配体制は盤石で . . . 本文を読む

北朝鮮において客観的な歴史は可能か?2.

2016-06-10 | review
 東大名誉教授の和田春樹について、重村智計によると「北朝鮮による日本人拉致を否定してきた」人物です。2001年に岩波書店の『世界』に和田は「北朝鮮は、横田めぐみさんを拉致していない」との論文を投稿したのに、2002年に当時の金正日総書記が拉致を認めたため、ウソがばれて信用をなくしたにもかかわらず、韓国の左翼勢力に受け入れられるという奇妙な現象が生じたそうです(251ページ)。こういう人が韓国では「 . . . 本文を読む

北朝鮮において客観的な歴史は可能か?1.

2016-06-08 | review
 先日、八重洲ブックセンターで北朝鮮の歴史に関する本を探しました。歴史的にも地理的にも関係の深い国であるにもかかわらず、これといった文献はなかったんですが、せっかく足を運んだんで何冊か買い求めました。  この重村智計の本は『はじめに――北朝鮮は戦争できない』となっているように、北の核を恐れることはない、だって彼らは石油がないからという主張で一貫しています。日本のマスコミとかは今にも北が戦争を始め . . . 本文を読む

人口減少をこの国の有識者たちはどのように理解し、どのような反応を示しているのか?【結論】

2016-05-09 | review
鬼頭宏は「歴史人口学から見た日本」において、「少子高齢化は日本だけの現象ではない。どの国でも、豊かになるにつれて死亡率が改善される。それにしたがって出生率も低下していく。これが人口転換である」という人口学の常識を述べ、日本では1920年頃から1960年代にかけて人口転換が始まり、実現したと言います。 ところが、その後も日本を含む主要先進国において、さらに出生率が低下し、合計特殊出生率TFRが2. . . . 本文を読む

人口減少をこの国の有識者たちはどのように理解し、どのような反応を示しているのか?【仮説の論証】

2016-05-04 | review
松元雅和の「子育ての負担は誰が負うべきか」は子育て負担をめぐる公平性の議論について、Rジョージに倣って「子どもの存在は社会にとって一種の『公共財』として考えられる」と主張したものです。しかしながら、ちょっとウィキを見ただけでも公共財Public goodという経済学的用語の理解において、彼は理論的にも実際的にも、あまり真剣に考えていないか、そもそも勉強不足じゃないのかという疑問を持たざるを得ません . . . 本文を読む

人口減少をこの国の有識者たちはどのように理解し、どのような反応を示しているのか?【仮説の提示】

2016-05-01 | review
世界思想社が発行している小冊子がたまたま送られてきたので読んでみたら、なるほど人口減少という既に始まっている問題を各分野のいわゆる有識者たちはこういうふうに理解し、反応しているのだということが改めてわかったような気がしました。もちろんもっといろんな考えの人がいるのかもしれませんが、典型的なパターンがよく出ていておもしろいなと思った次第です。 巻頭の鬼頭宏は日本を代表する歴史人口学者なので後回し . . . 本文を読む

AIはいつマークスの山が書けるか?

2016-03-27 | review
マークスの山をhuluで見てて古くさいステレオタイプの作品だなって思いました。 あいも変わらず、悪は権力者で、そいつらは学閥でこの国を牛耳ってきた。正義は一介の刑事や一介のジャーナリストにある。そんなことを骨格にして原作者の高村薫はせっせとたくさん書いたのでしょう。一介のを2回言ったのは大事なことだからです。でも、残念なことに彼女が考えているような正義感はそんな連中にはありません。嘘だというなら . . . 本文を読む

「重力の再発見」と中二病

2012-05-18 | review
中学1年だったと思うけど、相対性理論についての概説書を読んでた。 ブルーバックスとは言え、翻訳だったので偏微分方程式とかテンソルとか出てくるから、わかるわけはなかった。 その頃に相対論だけじゃなく、ハイゼンベルクの不確定性原理とかシュレディンガーの猫の話を読んで、関心は哲学、すなわち認識論とか存在論の方へ向かった。 というのはウソで、数学の点数が悪かったから。 言い訳めくから簡単に言うと数学の授 . . . 本文を読む

モーツァルトとバッハの音律

2012-05-12 | review
「音律と音階の科学」の続きだが、歴史的には5倍波を中心に組み立てられたミーントーンが登場する。 具体的には純正律で作られたC、D、E、G、Aのそれぞれに上下2全音(長3度)の音を5/4の比に取る。 純正律でもCとE、FとA、GとBは既にこの関係にあったから、新たに作るのはCからA♭(G♯)、DからB♭(A♯)とF♯、EからG♯、GからE♭(D♯)、AからC♯である。 これをさらに例えばF♯とA♯の . . . 本文を読む

歓喜天とガネーシャ神~宗教とセックス

2012-05-11 | review
この本を読んだ動機は、宗教とセックスとの微妙で密接な関係を考えてみたかったからだ。 歴史の古層において、宗教行事や祭礼の目的は子孫繁栄や農耕・牧畜の豊穣を祈願することであり、生殖行為が直接又はシンボリックに表現されていたはずである。日本の神道やその深層の土着的神事にはその気配が濃厚である。 ところが、キリスト教に典型的に見られるように「聖なるもの」が純化されていくにつれ、セックスは排除されていく . . . 本文を読む

音楽と数学の葛藤

2012-05-09 | review
長年、音楽を聴いてるとそんなつもりはなくても調性だの和声だの旋法といった言葉と付き合わされる。 それで楽譜を見たり、音楽辞典を読んだりするけれど、ドとレが全音で、ミとファが半音なんて五線譜の間隔を変えておけと思ったり、長3度や増4度なんてバラバラな言い方はやめて4半音とか6半音って言えばいいじゃないかとイライラして放り出してしまう。 それとは別にアカペラで歌われる宗教曲の響きの美しさは格別のものが . . . 本文を読む

なぜ三島由紀夫が気になるのか?

2012-05-06 | review
昭和45年(1970年)に三島由紀夫が自決してから、40年以上が経つけれど、未だに彼への関心は薄れない。実際、彼の文学がどれほど若い人たちに読まれているのかは知らないが、あの異様な死に方は「自殺した作家」の系譜に燦然と輝くものがあるだろう。 この本は「豊饒の海」の最終巻「天人五衰」を創作ノートなど、多くの資料を元にありうべき別の形で書こうとしたものだ。その試み自体は(読めば誰でも感じるように)失 . . . 本文を読む

「カラス なぜ遊ぶ」

2012-04-19 | review
この本を読むと確実にカラスへの見方が変わる。 カラスは遊ぶ、カラスはキレイ好き。カラス撃退グッズは効果がない。カラスは人間が見えない色も見える。…… 哺乳類の頂点が人間だとすると、鳥類の頂点はカラスだということが自然とわかる。 カラスが頭がいいということは誰でも知っているけど、それは脳の大きさ、構造からも裏付けられる。 図形や数を区別し、概念思考すらできることが根気の要る実験で明らかになる。 . . . 本文を読む