澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

ハリウッド・フェスティバル・オーケストラ演奏会

2015年01月24日 11時12分59秒 | 音楽・映画
 ハリウッド・フェスティバル・オーケストラ(The Hollywood Festival Orchestra)の演奏会に行く。
 年配の音楽ファンなら、「ロンドン・フェスティバル管弦楽団」「ハリウッド・ボウル交響楽団」といった名前をご存じのはず。この二つのオーケストラを足して割ったような名前のこのオケ、実際にはどんな演奏をするのか、率直に言ってさほど期待はしていなかった。
 
 そもそも「フェスティバル」はお祭り(祝祭)なので、この名前を冠する楽団は実在するわけではなく、お祭りのために臨時的に結成される。したがって、指揮者や演奏者の資質ややる気によって、音楽の質は大きく左右されてしまう。

 演奏曲目は、次のとおり。



 上記の曲目の他、アンコール曲として、「見果てぬ夢~ラ・マンチャの男より」「レット・イット・ゴー~アナと雪の女王より」「星に願いを~ピノキオより」が加わった。

 楽団の編成は、純然たるクラシック音楽のもの。総勢が32名で、その内訳は…
【弦楽器 21】 バイオリン13 ビオラ3 チェロ4 コントラバス1
【木管・金管】  フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルン
         トランペット、トロンボーン、チューバ 各1
【パーカッション】 ドラム、ティンパニなど 2
【キーボード】   電子ピアノ1


 これは「一管編成」(トロンボーンの数でオケの規模を示す表示)というべき規模で、クラシックの交響楽団のミニ版という感じ。電気的な増幅(PA=Public Address)をしなくても、バランスのとれたオーケストレーションが可能な編成である。
 イージーリスニング音楽といっても、ポール・モーリア、レイモン・ルフェーブル、カラベリといったポップス系の音楽とは異なり、マントヴァーニ、パーシー・フェイスと類似点が多い。



 指揮者のステファン・シャルピエ(Stephan Charpie)は、60代、穏やかで神経質そうな、さも音楽家という風貌。とかくありがちな「ドサ周り」の音楽会だからと舐めているような素振りは全くなくて、音出しや盛り上げるところでは、きっちりと役目を果たす。
 メンバーは、ほぼ白人だけで構成。ストリングスには高齢者が多く、何処かで演奏家をしていた人なのかなと思った。弦のアンサンブルはイマイチだが、誠実に演奏しているのは見ていて分かった。対して、管楽器には若い女性もいて、特に栗毛色の長い髪をしたホルンの女性は、映画音楽には必須アイテムのホルンの音を終始目一杯出し続けた。これは賞賛に値する。フルートのラテン系美人にはちょっとどきっとした。

 曲目では、美男のコンサート・マスターをフィーチャーした「ニュー・シネマ・パラダス」「ムーン・リバー」「魅惑のワルツ」が特に心に残った。ゲストのビリー・キングという巨漢の黒人歌手が「慕情」「ゴッド・ファーザー」やアンコール曲を唄ったが、その歌唱力は素晴らしかった。ちょっと気に障ったのは、「クワイ河マーチ~戦場にかける橋より」がプログラムに入っていて、聴衆に手拍子を”強制”したこと。周知の通り、史実の評価が分かれ、かつ我々の父母、祖父母が当事者の映画であれば、脳天気に手拍子などする気分にはなれない。

 会場を見渡すと、ほぼ団塊の世代以上の聴衆ばかり。あと10年もすれば、この人達はコンサートにも来なくなるだろうし、そもそも外出して消費するような生活行動は取れなくなるだろう。そのときが、まさにこのコンサートで演奏されたような映画音楽、ムード音楽が死滅するときだろう。それは遠くない近未来だ…と実感。

 現在、マントヴァーニ楽団(The Mantovani Orchestra)が中国公演中だという。何年か前、北京の人民大会堂で演奏する「栄誉」に浴し、「世界三大オーケストラ」(中国ではポール・モーリア、ジェームス・ラスト、マントヴァーニが”三大オケ”なのだという)に祭り上げられた途端、米国で臨時編成された、この「マントヴァーニ楽団」は、日本など見向きもしなくなった。私の印象では、このハリウッド・フェスティバル・オーケストラの演奏は、件の「マントヴァーニ楽団」よりかなり優れていると思う。「パーシー・フェイス楽団」には及ばないけれども…。

 世界の人達が日本は素晴らしいと言っている…こんなTV番組の氾濫とは裏腹に、音楽の世界においても、日本外しは確実に進んでいる。そんなことまで考えたが、それはまあ、考えすぎでしょうが…。
 ともあれ、久しぶりに生(アコースティック)のオケの音に満たされて、幸せなひとときだった。この種のオーケストラ音楽がいつまでも続くことを願わずにはいられない。


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