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検証 治安維持法: なぜ「法の暴力」が蔓延したのか

2025年04月23日 09時55分30秒 | 社会・文化・政治・経済

1925年5月に施行された「治安維持法」。
国体の変革または私有財産制度の否認を目的とした結社を処罰することをその主な主旨として成立した。
当初は反社会的な運動を取り締まるものであったが、次第に政府の政策を批判する者や自由主義者、労働運動なども取り締まりの対象となった。
1945年に日本の敗北とともに撤廃されるまで20年間その運用は続き、国内外での検挙者数は10万人以上におよんだ。
本書では治安維持法の「悪法」性を正しく捉えるべく、現代的かつ多角的な視点からのアプローチを用いて深く検証する。

《目次》
序章

第一章 治安維持法小史――施行から廃止まで
1 前史
2 治安維持法の成立
3 治安維持法の「改正」
4 一九三〇年代前半の運用
5 一九三〇年代後半の運用
6 新治安維持法の施行
7 治安維持法の廃止

第二章 治安維持法はだれが、どのように運用したのか
1 検挙から送致へ――特高警察
2 起訴――思想検察
3 予審――裁判所1
4 公判――裁判所2
5 行刑・保護観察・予防拘禁
6 軍法会議による処断

第三章 戦時下抵抗と治安維持法による「法の暴力」
1 唯物論研究会事件
2 京大俳句会事件
3 神戸詩人クラブ事件
4 横浜事件と細川嘉六
5 3人の弁護士たちによる弁護活動

第四章 朝鮮における治安維持法
1 治安維持法の運用開始
2 全開する治安維持法
3 拡張する治安維持法
4 暴走する治安維持法
5 治安体制の崩壊

第五章 台湾における治安維持法
1 治安維持法の運用開始
2 治安維持法運用の全開
3 戦時体制下の治安維持法
4 治安体制の解体

第六章 「満洲国」の治安維持法
1 関東州と在満外務省警察の治安維持法運用
2 反満抗日運動の取締法制定
3 暫行懲治叛徒法運用の全開
4 「満洲国」治安維持法の猛威
5 治安体制のなかの行刑・矯正輔導
6 「満洲国」治安体制の終焉

第七章 治安維持法の威力の震源=「国体」とは何だったのか
1 治安維持法への「国体」の組込み
2 治安維持法における「国体」の確立
3 「国体」変革観念の拡張
4 特高警察・思想検察と「国体」
 

著者について

1953年埼玉県生まれ。82年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
小樽商科大学商学部教授を経て、2018年定年退官、同大学名誉教授。専門は日本近現代史。主な著書に『思想検事』『特高警察』(ともに岩波新書)、『よみがえる戦時体制─治安体制の歴史と現在』(集英社新書)、『治安維持法の歴史』全6巻(六花出版)、『小林多喜二の手紙』(編集、岩波文庫)などがある。
 
 
  • 治安維持法は中型国語辞典で見出し語として採用されています。
    それくらい悪法として有名だということなのでしょう。

    本書に触れることによって、踏み込んだ事項を多く知ることができます。、
    日本国内おける治安維持法の適用状況を知ることになったり、裁判がどうやって進行
    したのか、朝鮮、台湾、「満州国」における適用状況もわかります。
    直接書かれていないことでも、条文そのものはネット上に存在するので目を通すこと
    ができました。
    いろんな意味で具体的に知ることで、書いたり話したりする際に役立ちそうです。
     
  • 本書は「治安維持法の悪法性=『法の暴力』(p15)を「検証」(書名)するものです。
     それなら「治安維持法」の条文を本書に掲載すべきでしょう。条文全文を読まずして法律を理解することはできません。
    また、日本における「戦後治安体制の速やかな復活」(p481)や「『新しい戦前』の進行」(p489)を著者が懸念されているなら猶更のこと“悪法”の全文を紹介すべきでした。"こんな条文でも「悪法もまた法なり」(p17)と言うのかね"と。
    ★一つ減点とした理由です。
     条文全体を知りたい向きは『治安維持法小史』(奥平康弘著、岩波現代文庫)をお勧めます。この書の巻末に「治安維持法関連法律・法律案条文」(pp303-325)が載っています。
     ところで「新しい戦前」という言葉は「タモリ氏による発言に触発されて注目」(p13)とありますが、かつては羽仁五郎、家永三郎がよく使ったフレーズです。
    両人それぞれの講演会で「今やまさに新しい戦前」云々と語ったので、「どんな点が戦前ですか」と尋ねようしましたが、質問は受け付けられませんでした。
    前者に至っては開口一番「諸君、すでに戦前と言っていい時代を迎えた」。会場は大きな拍手に包まれたことを思い出します。
 
 
 
 

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