八王子傷害 2人誤認起訴
ミスの検証結果公表を
毎日新聞の記事(1月6日)10面を読み、恐ろしくなる。
誰でもずさんな捜査で逮捕されるのだと―。
事件は2014年1月に起きた。
八王子市内の繁華街で2人が暴行され、2週間~1か月のけがをした。
48歳の男性と、知人の男性(39)が逮捕されたのは2年過ぎた昨年3月。
2人は一貫して無罪を主張。防犯カメラを調べ、一緒にいた別の友人にも確認するよう警察官に求めたがともに取り合ってもらえず、検察官からは「証人はいっぱいいる。
私はあなたが犯人だと確信している」と言われた。
勾留は113日と98日に及んだ。
ミスはなぜ起きたのか。
取材を進めて見えてきた問題が二つある。
一つが防犯カメラとドライブレコーダーの確認の甘さだ。
犯行の時間帯に2人の姿は映っていなかった。
真犯人が逃走に使ったとみられるタクシーのドライブレコーダーの確認に失敗した。
事件直後、警察が持ち帰ったが、映像を見るためのパスワードが分からずに返却。
この映像には2人とは別の男3人が記録されていた。
弁護士が入手したことが起訴取り消しにつながったが、もし消去されていたら、無実と証明できなかった。
こんなずさんな捜査で人を逮捕、起訴してしまうことに危うさを感じた。
二つ目は目撃者らに複数の写真から犯人を選ばる「写真面割り」の問題だ。
ある目撃者は事件直後、犯人の1人について「顔は覚えてない」と話したのに、2年後には「写真を見て当時の悲惨な状況を思い出し、顔も間違いなく思いだした」として39歳男性を犯人と指摘。
身長や服装に関する証言も突然2人に近いものに変わったが、不自然な証言者の変遷は重視されず逮捕の決め手になった。
「写真面割り」は、富山県で起きた強姦事件「氷見事件(ひみ)」でも冤罪を生んだ。
最高検は2007年に公表した検証結果で「初対面の相手を短時間目にしたに過ぎず、証拠価値を過大評価できない」と指摘。
徹底的に証拠を収集し、慎重に吟味する必要性を強調したが、教訓は生かされなかった。
(では、なぜ教訓は生かされないのか?)
裁判官として逆転無罪判決を20件以上言い渡した元東京高裁部総括判事の原田国男弁護士は「目撃者は善意で証言しても、取り調べによる記憶の刷り込みんどで別人を犯人としてしまう可能性もある。見込み捜査物証の軽視、証言依存注意すべきだ」と警鐘を鳴らす。
ある捜査幹部は「事実が何であるかを見極めた上で捜査にあたらなければいけない」と自戒を込めて語る。
冤罪を生んだ問題の検証を公表すれば、弁護士や裁判官といった司法関係者、研究者を含む社会全体で問題点を共有し、改善策を考えることもできる。
同じミスを繰り返さないためにできることは全てやる―。
そんな姿勢で信頼回復に取り組んでほしい。
東京社会部 小林洋子さん
ミスの検証結果公表を
毎日新聞の記事(1月6日)10面を読み、恐ろしくなる。
誰でもずさんな捜査で逮捕されるのだと―。
事件は2014年1月に起きた。
八王子市内の繁華街で2人が暴行され、2週間~1か月のけがをした。
48歳の男性と、知人の男性(39)が逮捕されたのは2年過ぎた昨年3月。
2人は一貫して無罪を主張。防犯カメラを調べ、一緒にいた別の友人にも確認するよう警察官に求めたがともに取り合ってもらえず、検察官からは「証人はいっぱいいる。
私はあなたが犯人だと確信している」と言われた。
勾留は113日と98日に及んだ。
ミスはなぜ起きたのか。
取材を進めて見えてきた問題が二つある。
一つが防犯カメラとドライブレコーダーの確認の甘さだ。
犯行の時間帯に2人の姿は映っていなかった。
真犯人が逃走に使ったとみられるタクシーのドライブレコーダーの確認に失敗した。
事件直後、警察が持ち帰ったが、映像を見るためのパスワードが分からずに返却。
この映像には2人とは別の男3人が記録されていた。
弁護士が入手したことが起訴取り消しにつながったが、もし消去されていたら、無実と証明できなかった。
こんなずさんな捜査で人を逮捕、起訴してしまうことに危うさを感じた。
二つ目は目撃者らに複数の写真から犯人を選ばる「写真面割り」の問題だ。
ある目撃者は事件直後、犯人の1人について「顔は覚えてない」と話したのに、2年後には「写真を見て当時の悲惨な状況を思い出し、顔も間違いなく思いだした」として39歳男性を犯人と指摘。
身長や服装に関する証言も突然2人に近いものに変わったが、不自然な証言者の変遷は重視されず逮捕の決め手になった。
「写真面割り」は、富山県で起きた強姦事件「氷見事件(ひみ)」でも冤罪を生んだ。
最高検は2007年に公表した検証結果で「初対面の相手を短時間目にしたに過ぎず、証拠価値を過大評価できない」と指摘。
徹底的に証拠を収集し、慎重に吟味する必要性を強調したが、教訓は生かされなかった。
(では、なぜ教訓は生かされないのか?)
裁判官として逆転無罪判決を20件以上言い渡した元東京高裁部総括判事の原田国男弁護士は「目撃者は善意で証言しても、取り調べによる記憶の刷り込みんどで別人を犯人としてしまう可能性もある。見込み捜査物証の軽視、証言依存注意すべきだ」と警鐘を鳴らす。
ある捜査幹部は「事実が何であるかを見極めた上で捜査にあたらなければいけない」と自戒を込めて語る。
冤罪を生んだ問題の検証を公表すれば、弁護士や裁判官といった司法関係者、研究者を含む社会全体で問題点を共有し、改善策を考えることもできる。
同じミスを繰り返さないためにできることは全てやる―。
そんな姿勢で信頼回復に取り組んでほしい。
東京社会部 小林洋子さん
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