なぜ働き続けられない?

2019年03月04日 10時29分41秒 | 社会・文化・政治・経済
 
社会と自分の力学 

 

商品の説明

内容紹介

働く女性は全体の半数近くを占めるのに、本人が望んでも働き続けられないのはなぜなのか。なぜ非正規雇用が多いのか。雇用均等処遇、男女共同参画社会の中での「軋轢」を描きながら、当事者の声とともに今後を問う。

2019年2月19日 
wan-wan
政府の主導で女性活躍推進が始まり、5年が経った。
女性就業者の増加など一定の効果はあげているものの、当事者である女性の反応もどこか冷ややかで誰による誰のための改革なのかがよく分からない。追い風が吹いても、なぜ女性はその力を仕事で存分に発揮できないのか。
新聞記者、大学研究者、政府の男女共同参画審議会委員として40年近く働く女性を間近にみてきた著者が冷静に分析してくれている。主観に陥らず、豊富な調査・統計データを盛り込んでいるので説得力も十分。
結局、いまだ社会構造や個人の意識に残る性別役割分担意識が女性の活躍を阻む主犯のようだ。
平成も終わろうとしているのに昭和の価値観を引きずっている状況は誠に残念。著者が理想として提示する「自らの意思で自由に生き方を選べる」時代は、いったいどれだけ時間をかければ実現できるのだろう。昭和の宿題をいつまでも次世代に残さないでほしい。
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安倍政権、誕生直後から「女性の活躍」言ってるけど「どうよ」って言うのが本書の言いたいことかな。
著者は、働く女性に「活躍」という形容表現としてついて回ったのは、この30数年間に2回ほどあったと指摘する。
第一波は、均等法制定の1985年、第2波は安倍政権の言う「一億総活躍」の中の「女性の活躍」。
第一波の均等法制定に際しての女性達の闘いと、期待を裏切る法整備。その中身は、女性差別を隠蔽する雇用管理・人事制度を均等法に仕込んだ財界のもくろみや、女性が保護されていた長時間労働規制を取り払い、男性並みに長時間労働に耐え、転勤可能を要件とすることで、耐えられない女性労働者が一般職や非正規雇用を選んだと分析。
著者は、第一波では「女性の人権保障」という思想が時の財界、保守政権からの横やりで、その本筋からそれたものとなった指摘。今の安倍政権の「女性の活躍」は経済政策としての女性の活用であり、世界の共通目標である「ジェンダー平等」からはほど遠く、女性の人権尊重は感じられないという。それは、昨年「働き方改革」と称された一連の労働法制の「改正」の中身を見てもそうだろう。
労働時間の規制をなくす「高度プロフェッショナル労働者」をつくり、高度プロフェッショナル以外の労働者の「残業の上限規制をしました」って言っても、年間960時間、単月100時間未満まで残業させてもいいとなっているんだから、女性は、ますます正規雇用から排除される。
「同一労働同一賃金法」と言われていたものは、人材活用の仕組みが違えば賃金格差を固定化するものになっており、均等法制定時に盛り込まれた雇用管理区分によって、差別を固定化する同様の仕組みが非正規と正規の間でも敷かれたということだ。
非正規雇用を選らばざるを得ない女性はますます差別化されていくことになるだろう。「女性の活躍」イコール女性を安く「活用」する法整備が行われてしまったというのが実情だ。
この30年の男女平等に対する施策、国民意識について、本書は概括的に振り返り、今、何を論点に男女平等を推進していかなければならないのかを指摘するものとなっている。
それは、古くて新しい問題「性別役割分担」意識とそれを補完する、社会慣行、税制、労働法制の施策にある。税制・労働法制は、いわゆる女性は家事育児を主に担うものとして設計されてきたというのである。そうだろうと私も思う。
女性が管理職になりたがらない。
専業主婦願望が強まっているのは、男性の働き方が異常であるばかりか、男性なみに女性も働けば、家庭や子育てを維持することが出来ないからだ。
「女性は経済的な自立を必要としない存在」に押し込めるこうした施策は、母子家庭の困窮を生み出し、さらに高齢期の女性の貧困をもたらしていると指摘している。
性別役割分担は、男性の長時間労働も肯定して、男性差別となっていることも指摘しておきたい。
昨年、東京医大で女性は長時間労働ができないと入試で差別していた事件が明るみになった。
いま、医師の過労死問題も含めて、医師の労働時間規制が議論となっているらしい。しかし、「時間外労働の上限1900~2000時間」なんて案が出ているらしい。
「新たなステージに向けて」、男女ともに仕事も家庭も大切にする働き方の構築が求められている。
 

 

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