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旭川いじめ報告書

2025年04月02日 09時03分44秒 | 事件・事故

旭川中学生いじめ凍死事件の再調査報告書 事態悪化の原因は苦痛への理解不足対応だった

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危機管理/広報コンサルタント
 
北海道旭川市の女子中学生が性的いじめを受け自死した問題について、再調査委員会はいじめと自殺の因果関係を認めるとした結果を記者会見(2024年6月)と最終報告書(2024年9月)によって公表しました。いじめは2019年4月で自死は2年後の2021年2月13日。調査そのものも紆余曲折であり、長い年月がかかりました。
再調査委員会の報告書は、加害生徒の問題行動のみ認定し、被害生徒の心身の苦痛を理解する指導をしなかった初動の誤りを厳しく指摘した内容となりました。

 

いじめ認定より事件終結を急いだ市教委と警察

この事件は、当初教育委員会が設置した第三者委員会で調査が進められましたが、内容が被害者目線ではないとされ、再調査委員会によって報告書が公表されました。筆者が専門とする最悪の事態を防ぐ初動における関係者の情報共有、クライシスコミュニケーションの視点から、どこで判断を誤ったのか、今後の教訓は何か、2つの観点から考察します。

 

事件は2019年の4月に遡ります。中学校に入学した当該生徒はクラス外の男女数名から性的画像の送付や自慰行為の強制を受けるようになり、6月22日には10人に囲まれ川に入水するという事件が起きます。かけつけた警察は児童ポルノ法に抵触する行為として事件化するかどうかを検討する一方、生徒らに連絡して画像を消去させました(一部残る)。

 

被害生徒は事件後入院し、6月23~26日、被害生徒の母親が学校と市教委に相談し、市教委は警察を訪問。7月11日、入院中の被害生徒に対して警察は立会人がいない中で事情聴取を行い、本人が「忘れた」と回答したことから、7月18日に警察は事件終了の報告を市教委に行いました。これは結論ありきの聴取であり、フラッシュバックの原因となりました。8月20日から転校先での生活が始まりましたが、被害生徒はPTSDを発症。入院と通院を繰り返します。

 

■動画解説 リスクマネジメント・ジャーナル(日本リスクマネジャー&コンサルタント協会提供)

翌年2020年1月5日、被害生徒の母親が子供支援センターに「学校がいじめを認めない」と相談。さらに1年後の2021年2月13日、母が出かけた後、被害生徒は氷点下17度の中、家を飛び出して失踪。直前に友人に自身が受けたいじめについてメッセージを残す。3月23日公園で凍死した状況で発見。4月15日、文春オンラインで報道されたことから苦情が市教委に殺到。4月22日に第三者委員会が設置され、翌年2022年3月27日、ようやく第三者委員会が6項目のいじめを公式に認定したものの、この時点ですでに発生から3年。

 

同年5月31日に遺族が「十分ヒヤリングされていない」とする所見書を提出したものの、「いじめと自死との因果関係は不明」と結論づけた報告書が9月20日に提出されました。

 

10月7日、市議会は再調査委員会を議決し、市長直属の再調査委員会が12月22日に発足。1年半後の2024年6月30日に再調査委員による記者会見を経て9月13日に報告書が公表されました。実に5年の歳月を費やしたことになります。

 

■時系列一覧

2019年4月、当該生徒が中学校に入学(まもなく性的いじめが始まる)

2019年6月22日、当該生徒が10人に囲まれ川へ入水、入院

        母親が学校と市教委員に相談

        市教委が警察を訪問

2019年7月11日、警察が入院中の被害生徒に事情聴取(立会人なし)

        →激しいフラッシュバック

2019年7月18日、警察が事件終了の連絡を市教委に行う

2019年8月20日、被害生徒は転校して新しい学校に通い始める

        PTSD発症。入退院を繰り返す

2020年1月5日、被害生徒の母親が子供支援センターに「学校がいじめを認めない」相談

2021年2月13日、被害生徒が失踪(直前にいじめについてメール送信)

2021年3月23日、被害生徒は公園で凍死した状態で発見

2021年4月15日、文春オンラインが本件を報道

2021年4月22日、市教委による第三者委員会設置

2022年3月27日、第三者委員会記者会見 いじめを認定

2022年5月31日、遺族からの意見書「十分ヒヤリングされていない」

2022年9月20日、第三者委員会最終報告書「いじめと自殺の因果関係は不明」

2022年10月7日、市長直属の再調査委員会設置を議決

2022年12月22日、再調査委員会発足

2024年6月3日、再調査委員による記者会見「自殺といじめの因果関係を認める」

2024年9月13日、再調査委員会による最終報告書公表

 

被害生徒の苦痛理解なしの形式的謝罪

調査報告書の中では「学校の調査は出来事に関与した生徒の問題行動の調査にとどまっている」「いじめの調査においては、それがどれほどの心身の苦痛を与えているかを評価することが不可欠となってくるが、本件においてはこの点の対応がされていない」(P169)。加害生徒に対しても被害生徒の「心身の苦痛への理解を促すような指導はなされていない」。学校は「警察沙汰にまでなった重大性の認識に留まって」いることが、被害生徒の母親の疑念を生み、「母親の疑念が解消されないまま『謝罪』という形だけが先行した。いじめとは何か、いじめの解決とは何かを学校が理解していない結果と言わざるを得ない。この点については市教委についても同様である」。謝罪の場も加害生徒が被害生徒の「心身の苦痛に向き合うというよりは、自己の破廉恥な行為を反省するというものにとどまった」(P192)と報告されました。ここに初動の誤りと失敗の本質があると言えます。

 

「いじめを受けてから1年たちそうなのに私はなにもできません」「ずっとひきずっている」等とする被害生徒が残した言葉の分析と失踪直前にいじめのことを知人に送信していることから、調査委員会はいじめと自死の因果関係を認めました。「いじめがなければ重大事態が起こらなかったかどうかという観点で原因を見極め、そう理解できる場合にはいじめが主要な原因になっている、と判断する必要がある」と結論づけました。

 

学校が近視眼的になってその場対応に追われてしまうのを防止するために市教委がありますが、「市教委がいじめ防止対策推進上のいじめに対する専門的知見を持っていたとはいいがたい状況」(P194)でした。学校、市教委だけではなく、立会人なしで入院中の被害生徒に聴取させた病院と警察の行動も全て被害を悪化させる対応でした。教訓は、学校、市教委、専門医、警察が連携し、地域でいじめ問題への体制づくりを進めていくことです。

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石川慶子

危機管理/広報コンサルタント

東京都生まれ。東京女子大学卒。国会職員として勤務後、劇場映画やテレビ番組の制作を経て広報PR会社へ。二人目の出産を機に2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。

リーダー対象にリスクマネジメントの観点から戦略的かつ実践的なメディアトレーニングプログラムを提供。リスクマネジメントをテーマにした研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱。有限会社シン取締役社長。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長。社会構想大学院大学教授

【24時間子供SOSダイヤル】

https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm

 

<参考>

旭川市いじめ問題再調査報告書・公表版(2024年9月13日)

https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/kurashi/218/266/270/d080391.html

 

旭川市いじめ問題再調査委員会 記者会見(2024年6月30日)

旭川市いじめ問題再調査報告書(公表版)について

情報発信元 子育て支援課

 最終更新日 2024年9月13日
 
本報告書は、令和4年12月22日にいじめ問題再調査委員会に対して諮問し、令和6年9月1日に答申を受けたものについて、個人情報保護法及び本市の情報公開条例のほか、文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を踏まえ、一部表現を調整し、作成しています。

再調査報告書(公表版・全文)

再調査報告書(公表版・全文)(PDF形式 16,615キロバイト)

再調査報告書(公表版・分割)

目次(PDF形式 262キロバイト)

はじめに(PDF形式 131キロバイト)

第1章(PDF形式 172キロバイト)

第2章(PDF形式 4,702キロバイト)

第3章(PDF形式 970キロバイト)

第4章(PDF形式 3,708キロバイト)

第5章(PDF形式 3,694キロバイト)

第6章(PDF形式 3,039キロバイト)

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お問い合わせ先

旭川市子育て支援部子育て支援課

〒070-8525 旭川市7条通9丁目 総合庁舎3階
電話番号: 0166-25-9128 | ファクス番号: 0166-26-5722 | メールフォーム
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午前8時45分から午後5時15分まで(土曜日・日曜日・祝日及び12月30日から1月4日までを除く)


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