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「新型コロナウイルス感染症はSARSに類似、厳重な警戒が必要」

2020年03月14日 22時11分51秒 | 医科・歯科・介護

SARS(サーズ)と比べコロナは致死率は低い?

識者の眼 日本医事新報

「新型コロナウイルス感染症はSARSに類似、厳重な警戒が必要」菅谷憲夫

菅谷憲夫 (神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センターセンター長・小児科、慶應義塾大学医学部客員教授、WHO重症インフルエンザガイドライン委員)
2020年1月になって、中国武漢での2019 Novel Coronavirus(2019-nCoV)の流行が大きな問題となっている。しかし、日本政府の対策は遅れ、国内での人から人への感染が明らかになった時点でも、中国の感染地域からの団体観光旅行を放置したのは、2019-nCoVの感染性、重症度を過小評価したと考えられる。日本では、コロナウイルスの重症感染症である重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の患者発生がなく、全く経験のなかったことも原因である。
日本のマスコミは、2019-nCoVの重症度は低いと報道してきた。典型的には以下のような報道がされてきた。例えば、「専門家らは、人から人への感染は限られていると指摘し、国内で感染が広がる危険性はほぼないと冷静な対応を求めている」とか、「国内の人は特別な対策は必要ない。手洗いやマスクなど、インフルエンザの予防策を取れば足りると話す」などである(1月20日時事ドットコムニュース)。このような論説が国内で流布したことは、わが国の対策の遅れに影響したと筆者は感じている。国民は、マスコミの断片的な報道に惑わされ、SARSクラスの重症感染症流行の危機的状況にあることを理解しないままに、国内で感染患者が続発している(2月2日現在)。
医療関係者は、確実な論文を基に、コロナウイルスについて理解、判断すべきであると考え、いくつかの論文内容を解説したい。
Lancet論文

最近、Lancet誌に、本年1月2日時点での武漢の2019-nCoV入院41例の詳細な報告があった。この論文の最も重要な内容は、武漢の2019-nCoV感染症は、臨床的に、かなりSARSに類似していると指摘している点である(Chaolin Huang, et al:Lancet. 2020.)。
https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S0140-6736%2820%2930183-5
言い換えれば、中国では、SARS類似疾患が大流行しているので、武漢のような大都市を封鎖してでも制圧を目指しているのである。中国が共産党政府だから、強制的な大規模な対策を取っているのではない。
論文で取り上げた入院患者41例は、全例が肺炎であった。平均年齢は49歳で、32%の患者が基礎疾患を持っていたが、高血圧も含まれ、日本で報道されているように、高齢者や重いハイリスク患者だけが感染、重症化するわけではない。
死亡者は6例で致死率は14.6%(6/41)であったが、これは、今後、確定診断法が普及して軽症例も明らかになれば、低下していくものと思われる。現在は数%であるが(2.2%、259/11791、2月2日現在)、それをもって、2019-nCoVの致死率が低いと報道されているのは誤りである。1918年の悪名高いスペインかぜ(インフルエンザのパンデミック)の致死率は、欧米諸国や日本では、1〜2%であった。2019-nCoVの致死率は、スペインかぜ並みに高いと報道するのが、医学的に正しい。
2019-nCoV症例はLancet論文ではSARSと似た症状を呈すると報告され、41例中13例(32%)がICU入院となっている。日本では、今のところ重症例が出ていないが、今後、日本でも症例数が増加するに従い、呼吸不全など重症例が出てくると思われる。マスコミ主導で、手洗い、マスク着用により、2019-nCoV感染が防げるような報道がされているが、そのような医学的な根拠は全くない。現状では、治療薬のないSARS類似の重症感染症と認識することが重要である。
初発症状は、発熱(98%)、咳(76%)、筋肉痛、全身倦怠などである。発症後8日で、22例(55%)が呼吸困難を訴えている。ICU入院や人工換気までは、発症後10.5日であり、急性感染症としては、比較的に長い経過で重症化することがわかる。日本では、病院へのアクセスが良いので、多くが発症早期に診断されると思われるが、早期症状が軽症であっても油断できない。
検査所見では、ウイルス感染の特徴である白血球減少症、リンパ球減少症が報告されている。プロカルシトニンは正常であった。入院時の肺炎が、細菌性ではなくて、ウイルス性であることがわかる。本論文では、2019-nCoV感染症の高率のICU入院率、致死率がSARSに類似していることが繰り返し述べられている。
医療関係者への感染も認められ、本論文では、2019-nCoV感染症患者の診察には空気予防策が必要で、N-95マスクなど個人用防護具の装備が強く勧奨されている。サージカルマスク着用だけの診察は危険である。現時点では、陰圧室を備えた環境での診療が、医療従事者への感染を防ぐために必須と筆者は考えている。なお本論文では、抗ウイルス薬の併用を治験していることが述べられている。
NEJM論文
New England Journal of Medicine誌にも、武漢の2019-nCoV肺炎の疫学的な検討論文が発表された(Qun Li, et al:N Engl J Med. 2020.)。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001316
2019年12月から本年1月の最初の425例を対象としている。患者の年齢は59歳(中央値)で、潜伏期間は平均5.2日(95%CI:4.1〜7.0)と報告された。また感染力を示す基本再生産数(Basic reproduction number、R0)は、2.2 (95%CI:1.4〜3.9)であった。
基本再生産数は今回、マスコミでも取り上げられているが、SARSやインフルエンザに近く、ワクチンや治療薬がない現在は、国内で流行が起きれば、多数の患者が発生することになる。マスク着用、手洗いを勧奨することは良いのだが、それで感染拡大を防げるという報道は誤りである。
さらに、同じNew England Journal of Medicine誌に、ドイツから潜伏期に感染した症例が報告されている。33歳の健康ドイツ人が1月24日に咳、発熱があり、一時39度まで発熱したが、26日には回復し1月27日に仕事に戻った。この時点で、2019-nCoVと診断された。この患者は1月20日、21日に上海から来たビジネスパートナーと会社で会った。ビジネスパートナーは、この会合時は無症状であり、翌日、ドイツから上海へ帰国の機内で発症し、1月26日に上海で2019-nCoVと確診された。1月28日には、ドイツで、さらに3名が発症した。
潜伏期といえども、発症の前日であり、感染性があるのは十分に理解できる。さらに2019-nCoVが強い感染力を持つことに驚かされる。上海からのビジネスパートナー(Index case)から、4名のドイツ人が発症している。また33歳のドイツ人の検体からは、仕事に戻った時点でも、108/mLと高濃度のコロナウイルスが検出されている。単純には比較できないが、成人のインフルエンザのウイルス排出に比べて、100倍か1000倍はウイルス量が高濃度である。臨床的に回復しても、かなりウイルスは残存し、感染性は残る可能性がある。
まとめ

世界保健機関(WHO)が、緊急事態を宣言するかどうかを検討した23日の会合で緊急事態を宣言しなかったことは、世界に対して、2019-nCoVは重大な感染症ではないという誤解を生み、各国の対策が遅れたのは残念であった。結局、1月30日、WHOは2019-nCoV流行を緊急事態と宣言した。
武漢の病院の状況を見ると、患者があふれ、まるで、新型インフルエンザの大流行を想像させる。実際、中国での2019-nCoV流行による混乱を見ると、1918年のスペインかぜ大流行と似た事態となっている。100年後の現代、医療体制の整備された中国の大都市でさえ、SARS類似の感染症が蔓延し、治療法も予防法もないとすれば、結局、スペインかぜ当時の混乱が再現されている。
米国でのスペインかぜ流行時、1918年10月から多くの都市で、学校、映画館、劇場、バー、教会までも閉鎖され、商店の開店時間も制限、集会も禁止された。衛生当局は、特に有効な対処法がないので、道路に消防車から絶え間なく水の散布を試みた。多くの町で、マスクを着用しないとバスなどの公共の交通機関には乗車できず、サンフランシスコではマスク着用を義務とし、従わない場合は逮捕された。全ての病院が満床となり、廊下に患者があふれ、多数の医師、看護師がインフルエンザに罹患した。患者を収容できないので、各地で、教会などの大きな建物は臨時の病院となった。これらの光景は、今、武漢周辺で実際に起きていることでもある。
中国では、2019-nCoVに対して、大規模な、そして徹底した都市の封鎖、外出禁止などが実施されている。ワクチンや治療薬がないからである。もしもインフルエンザ並みの感染力があり、SARS類似の重篤な疾患が流行すれば、わが国でも、手洗い、マスク着用だけではなく、感染地域からの入国禁止、集会、イベントの禁止など、強力な政府主導の対策が必要となるであろう。
スペインかぜでは、世界中で封鎖が実施されたが、大流行を抑えることはできず、世界で数千万人が死亡した。筆者が注目しているのは、武漢や中国各地で実施されている封鎖、外出禁止で2019-nCoV流行を抑えることができるかどうかである。 

菅谷憲夫(神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センターセンター長・小児科、慶應義塾大学医学部客員教授、WHO重症インフルエンザガイドライン委員)[新型コロナウイルス]


クルーズ船のコロナウイルスは欧州から? 遺伝子解析で「正体」判明

2020年03月14日 22時07分57秒 | 社会・文化・政治・経済

3/6(金)  現代ビジネス


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ノンフィクション作家・山根一眞氏が、呼吸器ウイルス感染症の大御所を直撃する大好評緊急企画。沖縄にて最新データをもとにあぶり出した、新型コロナウイルスの意外すぎる姿とは──。(本文中の写真:山根一眞)
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呼吸器感染ウイルスの大御所、根路銘(ねろめ)国昭さんにインタビューしたコロナウイルスに関する2つの記事が大きな反響を呼んでいる。

 そこで、あらためて沖縄県名護市に根路銘さんを訪ね、2日間にわたりインタビューを、そして意見交換を行ってきた。

 折しも、安倍総理大臣が専門家による検討をせず独断で3月2日から全国の学校の臨時休校を指示、大きな社会的な混乱を引き起こしたが、沖縄入りはその翌日だった。根路銘さんは、この異常事態をどう見ているのだろうか。

 那覇市から高速道路で約1時間半で名護市に着く。このルートは沖縄県の最大の観光スポットで沖縄にとって欠かせぬ経済資源でもある美ら海水族館への道でもあるが、この施設も政府の意向を受けて3月2日から臨時休館中だった。

 羽田から那覇への飛行機もガラ空きだった。沖縄県の観光の経済波及効果はおよそ2兆円で雇用誘発効果も大きいため、政府の対応によるダメージははかりしれない。

 名護市郊外にある生物資源研究所のエントランスには、アヒルとニワトリのケージがある。私の姿を見た2羽のアヒルが「グァーグァー」とけたたましい鳴き声をあげ続けたのには驚いた。その大きな鳴き声で私の来訪を知り迎えてくれた根路銘さんはこう言った。

 「アヒルもニワトリも研究用ではなくうちの門番だな。僕はああいう鳥がとっても好きなのでね」

 十数年前、ここの近くのまだ仮設施設だった同研究所を訪ねた時も、敷地内にニワトリのケージがあったことを思い出した。生物に対するそんな眼差しを持つ根路銘さんは、同じような眼差しでインフルエンザ、そしてコロナのウイルスを見ているように思えた。
世界が「脅しに負けてしまった」
 山根 先の2回の記事で、根路銘さんは、コロナウイルスは窓を開放して風で「鬼は外!」と外へ追い出せばいいとおっしゃいましたが、あれから3週間も過ぎた今ごろになって、専門家たちがしきりに「窓を開けろ」「風で追い出せ」と発言しはじめたのには驚いています。根路銘先生の助言を知ったとしても、遅すぎませんか? 
 根路銘 「鬼は外!」はコロナウイルス追放の大事な手です。もっと早くそういう注意喚起をするべきだったんですよ。もちろん、今からでも大事な予防策ではありますが。

 山根 新型コロナウイルスの感染拡大が始まっておよそ3ヶ月ですが、その後の推移をどう見ていますか? 
 根路銘 コロナウイルスは、子孫を増やすために、増殖するために、試しにヒトの中に入ってみた。しかしヒトの中は居心地が悪かったので、「これでは増殖は無理だな」と思いはじめていますよ。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界での感染者数は9万3000人、死亡者は約3000人(WHOデータ、3月4日)。日本での感染者はおよそ300人、死亡者は6人です。

 新型コロナウイルス(2019-nCoV)が病毒性が強いインフルエンザウイルスのようなものであれば、すでに世界で数百万人が感染し、数十万人が亡くなっているはずです。

 意外かもしれませんが、この新型コロナウイルスの感染力、病毒性は、たとえば1918年から世界的な大流行をしたインフルエンザ、スペイン風邪(推定死者5000万人以上)と比べればとても小さいんです。

 それはなぜなのか。

 新型コロナウイルスがヒトに無駄な戦争を仕掛けたものの失敗したことが明らかだからです。コロナは今月末になればなりをひそめると私はみています。

 一方、先にお話ししましたが、昨年12月から今年にかけて、アメリカではインフルエンザウイルスで1万2000人が亡くなっています。日本でも毎年、イフルエンザが引き金となって亡くなる方がおよそ1万人です。しかしそれには関心を抱かず、蚤のような小さな存在のコロナウイルスを、国とマスコミがゴジラのような怪物に仕立てているとしか思えません。
報じられていない系統図
 生物資源研究所の「所長室・遺伝子設計室」で根路銘さんは、研究者仲間や弟子の研究者たちから、続々と届く今回のコロナウイルスに関する情報を繰っている。新型コロナウイルスが勢力を拡げている世界を、あたかも宇宙から拡大鏡で覗いているかのようだった。

 そして「これをご覧なさい」と、数ページからなるレポートを見せてくれた。

 それは、中国の武漢から世界に広まったとされる新型コロナウイルス「2019-nCoV」の系統樹だった。各国の感染者から得たコロナウイルスの身元(遺伝子)を整理し、それぞれの関係を描いた円形の「家系図」だった。

 こういう円形の系統図は生物の進化図ではよく見るが、新型コロナウイルスの膨大な情報がこれほどきれいに整理されているとは驚きだった。

 この家系図の左には、「Japan Cruise Ship」(日本のクルーズ船)のコロナウイルスも記載されていた。

 山根 この進化系統樹、どこが作ったものですか? 
 根路銘 GISAIDです。GISAIDは、2006年8月、当時猛威をふるっていた鳥インフルエンザの対策に取り組んでいた世界の医療関係者が設立した組織で、正式名称は「鳥インフルエンザに関する情報共有の国際推進機構」です(GISAIDは、Global lInitiative on Sharing All Influenza Dataの略)。

 ウイルスの猛威に対抗するためには、世界の研究者が最新のウイルス情報を抱え込むことなく、共有し自由にアクセスすることが大事だ、という趣旨で発足した組織です。そして2007年3月、スイスのバイオインフォマティックス研究所(Swiss Institute of Bioinformatics、SIB)がGISAIDと合意のうえでデータベース構築を開始しました。

 この系統樹は、そのGISAIDで公開されているものなんです。

 ワクチンの開発も、こういう情報共有があってこそ可能です。

 もっともこの情報が違法行為に使われないためなど、データベースの利用には厳しい約束事がありますが、IDの交付を受けた専門家であれば自由に閲覧、利用ができます。
「ダイヤモンド・プリンセス」に起きたこと
 GISAIDのデータは、新型コロナウイルスに関して最新の、そして最も信頼できるものだった。

 とすれば、ダイヤモンド・プリンセス号で感染を拡げた新型コロナウイルスの由来もわかるかもしれない。根路銘さんを訪ねた初日の夜、私は投宿先のホテルでこの系統樹とクルーズの日程を照らし合わせる作業を試みた。

 ダイヤモンド・プリンセス号は、日本の三菱重工長崎造船所が建造した過去最大のクルーズ船で総トン数は11万5875トン。日本の最大級の護衛艦(いずも型)の6倍近い巨大船だ。

 船籍は英国、運営は米国で、今回のクルーズ「初春の東南アジア大航海」の費用は最安で25万円と通常の海外旅行パッケージ料金なみだった。客室、食事、ショーなどすべて含めて1日1万6000円で楽しめることもあって人気を集めたのだろう。この船にかぎらず大型クルーズ船の旅が身近な時代を迎えているだけに、今回の事態は今後のクルーズ船にありように多くの教訓をもたらしたと思う。

 今回のクルーズは、1月20日に横浜を出発し2月4日に横浜へ戻る16日間だった。

 寄港地は少なく、鹿児島、香港、チャンメイ、カイラン(いずれもベトナム)、基隆(台湾)、那覇の6ヵ所のみ。

 そこで、それぞれの寄港地では、いつ新型コロナウイルス肺炎が発生していたかなどを調べて付き合わせてみたが、乗客が寄港地で観光のため下船し、市中で感染したとは断定しにくい印象だった。

 たとえば、ベトナムでは中国で研修を受けた人が帰国後に感染していることが明らかになったが、感染者の都市と寄港地はだいぶ距離があり、市中感染の可能性はかなり低い。

 1月25日に香港で下船した乗客が感染元ではないかと言われてきたが、この乗客が咳をしはじめたのはクルーズ中の1月23日からだった。鹿児島を出た翌日で次の寄港地、香港まではまだ2日あったので、この2日間に感染が広がった可能性は大きい。

 この乗客は下船後の30日に発熱。新型コロナウイルスに感染していることが判明したのは2月1日だった。

 その日、クルーズ船は最後の寄港地である那覇に入港していた。

 沖縄観光のために下船した4人の女性乗客が利用したタクシーの女性ドライバーが、後に(13日)に新型コロナウイルスに感染したことが確認された。

 もし香港で下船した乗客の検査が速やかに行われ、感染情報がクルーズ船に迅速に伝えられていれば乗客たちの下船観光は制限され、女性ドライバーが感染することはなかったろう。

 それは、情報の迅速な共有が重要というGISAIDの願い、趣旨を思い起こさせる。

 横浜に帰着後、クルーズ船の乗客乗員およそ3600人は下船が許されず、船内に閉じ込められ、感染者は706人(約20%、延べ4089名の検査結果)に達し6人が死亡し、世界に衝撃を与えた(感染者の死亡率は0.85%)。

 もっとも乗客乗員のうち、無症状のウイルス保有者は延べ392名(55.5%)だったので、発症した人ははほぼ半数のみだったことになる。

 新型コロナウイルスを侮ってはいけないが、根路銘さんが言うように、強毒インフルエンザのウイルスと比べれば蚤のように小さな存在だということを物語っている。

 一方、このダイヤモンド・プリンセス号で感染拡大したコロナウイルスが、どこから入ったのかは不明のままだ。それが無用の疑心暗鬼や下船者への差別をもたらすことにもなっているのではないか。

 だが、GISAIDの「系図」からは、その一部を読み取ることができるのだ。
「ウイルスの旅路」を読みとる
 沖縄取材の2日目、根路銘さんにこう尋ねた。

 山根 クルーズ船のコロナウイルスはフランスやイタリア、英国ともつながっていることに驚きました。

 根路銘 そう、欧州にも起源があることがわかる。

 では、英国やイタリア、フランスのコロナウイルスはどこから来たのか。

 それは中国です。中国から欧州に移動したウイルスがクルーズ船のウイルスとつながっていることがわかります。

 しかし、それを誰が船に持ち込んだかはわかりません。すでに感染していた人が横浜からクルーズ船に乗船したのかもしれません。感染しても自覚症状が出るまでの時間差が大きいからです。

 山根 中国が感染開始時から情報をすべて公開していれば、クルーズ船も安全策をとることができたのでは? 
 根路銘 GISAIDのリアルタイムに近い情報の公開と共有が目指すところがそれでしょう。

 山根 もし、多くのコロナウイルスに対応できるワクチンが実現すれば、クルーズ船の乗客はワクチン接種者に限る、という措置もとれますね。

 根路銘 まさに、私たちウイルス感染症の研究者に課せられた大きな課題ですが、そういう議論が出ていないのは残念です。

 山根 GISAIDの新型コロナウイルスの進化系統図は、3月に入って初めて明らかになったものですか? 
 根路銘 違います。この系統図はGISAIDが日々更新をしており、インフルエンザウイルスの専門家たちは日々チェックをしています。

 これには「2020-03-01_0400 UTC」と記してあります。日本時間の3月1日13時に更新されたものとわかりますが、このデータは連日、新たなデータが書き加えられているんです。

 もっとも、この系統樹を見たからといって、効果的な対策が可能というわけではない。しかし、少なくともそのコロナがどこから来たのかという「ウイルスの旅路」は読み取れます。船内に閉じ込められたままだった乗客の皆さんも、ウイルスの旅路の片鱗がわかれば少しは納得されるでしょう。

進化という「遺伝子の複製間違い」
 山根 それにしても、なぜ同じ中国発の新型コロナウイルスなのに国や地域で違いがあるんですか? 
 根路銘 ウイルスの増殖とは、自分と同じ遺伝子を持ったものを複製することですが、その複製を間違うからです。

 コロナウイルスは、もともと変異しやすいRNA(リボ核酸)という遺伝子を持つタイプのウイルスです。

 ヒトの肺胞の細胞にとりつくと、外殻(エンベロープ)を脱ぎ捨てて、RNA(遺伝子、リボ核酸)という自分の設計図をヒトの肺胞の中で働かせる。もちろん、それに至るまでの初期の旅路では、上気道という鼻や気管支といった細胞への感染も行ってのことですが。

 子孫を増やすために自分は死ぬが、設計図だけは送り込むわけです。

 そして、人の細胞の中で材料をかき集めて子孫である複製をたくさん作らせます。こうして誕生した子孫が細胞からたくさん外に出ていくんです。外に出る時には、ちゃっかりと細胞の膜をちょうだいし自分の殻に利用して。

 そうして誕生した子孫たちには親と同じRNAも入っていますが、その複製を作る時にちょっと間違える。その間違いの部分を調べることで、どこで増えたものかという「ウイルスの旅路」がわかるんです。

 山根 コロナウイルスの大きさを、私がテニスボールで作った模型とすると、人の大きさは頭が岩手県の花巻市、足の先は福岡市になる。それほど小さなウイルスが、そんな精密な作業をしているとは驚くばかりです。

 根路銘 ウイルスはとてつもない仕事をしている。一方、大事なことは、この複製の間違いがウイルスの「進化」というものだということです。その「進化」によって、病毒性が強いものが出たり、感染性が低いものになったりする。

 それはね、地球に誕生した最初の微少生命体が、進化という「遺伝子の複製間違い」を重ねて数千万種という現在の生物世界を築き上げてきた、生物の地球進化史と同じことをしているのだということです。

 山根 非常に興味深いです。コロナウイルスとはいえ、その拡散は「進化」というダイナミズムと裏腹なんですね。

 ところで、GISAIDのウイルス系統樹ですが、これは親から生まれたちょっと顔が違う子孫たちの「つながり」を表現している? 
 根路銘 この図はウイルス遺伝子の型を見てつながりを描いたものでとても役に立ちますが、ウイルスだけを見ていてはいけない。

 ウイルスによる感染症は「ウイルスの旅路」を見抜かないといけない! 

 大きなウイルス感染症を抑え込むには「ウイルスの旅路とその顔色」を明らかにすることが第一なんです。

山根 一眞(ノンフィクション作家)

 


消毒用アルコールがないときは 医科大の主任教授がアドバイス

2020年03月14日 21時32分14秒 | 社会・文化・政治・経済

 感染拡大とともに、問題の長期化も心配される新型コロナウイルス。日常生活の注意点や、不安な場合の対処法などを、兵庫医科大学の竹末芳生主任教授に聞いた。

【動画】あの歌2回歌い終わるぐらい 石けんでの正しい手洗いは?

 -予防の基本は。

 「患者の分泌物を自分の目や鼻、口に持っていかないことが重要なので、手指の衛生状態をきれいにしておくしかない。消毒用のアルコールがなくても流水で石けんを使って15~20秒、ちゃんと手指を洗うこと。換気が悪い場所に行かないことも自己防衛になる」

 -休校園の期間がどんどん長くなっている。

 「子どもを感染から守る意味に加えて、感染しても発症していない子どもが帰宅して、お年寄りにうつさない効果もある。たくさん人が集まるような場所でなければ、公園などの屋外で遊ぶのは問題ない」

 -感染者が増え、少しの体調変化で「自分も感染したのでは」と不安になる。

 「肺炎などで呼吸困難になった感じが、一つの基準。風邪症状ぐらいだと普通は病院に行かない。それと同じぐらいの判断でいい。ただ合併症がある人は見極めが難しい。高齢者は症状を訴えない人もいるので気を付けなければならない。まずは各地域の相談センターに電話してほしい」

 




米国からの警告!「日本は衛生上、危険なことだらけ」

2020年03月14日 21時19分41秒 | 社会・文化・政治・経済

 【間違いだらけの感染症対策】

 新型コロナウイルス感染症をめぐる日本の対応は米国からはどのように見えるだろうか。米シアトルに研究拠点を置く窪田良医師は「日本は衛生上、危険なことだらけ」と警鐘を鳴らす。

【表】感染連鎖を防ぐための「べからず行動集」

 その一つにトイレに設置されている、手を乾かす温風乾燥機(エアタオル)を挙げる。「この時期、手洗いが不十分な場合、ウイルスを飛散させ、空中感染やエアロゾル感染(空気中に浮遊する粒子に混ざってウイルスを吸引)を引き起こす可能性があります」

 米国ではどうだろうか。「私の知る限り、公共施設やショッピングセンターのトイレには温風乾燥機も一部ありますが、ペーパータオルは必ず備え付けられ、大半の人はペーパータオルを使用しています。ごみは出ますが、エアロゾル感染のリスクは少ないといえます」

 日米では医療機関の患者対応にも大きな違いがあるという。

 窪田医師によると、コロナウイルス関連のニュースとして、ロボットが受付を代行するワシントン州の医療機関が全米のテレビで紹介された。

 「実は米国の医療機関でロボットの活躍は珍しくありません。感染症の病院はロボットを使って診察(問診)をするところもあります。医療従事者の感染リスクを減らすためです」

 そもそも米国では病院にかかる時は必ず電話で予約するシステムが普及しており、感染症の疑いのある患者がいきなり病院に来ることは少ないという。

 「電話での受け付け時に、医学的な専門知識を持った特定看護師などが患者のトリアージ(緊急性、重症度に応じて選別)をします。年齢、基礎疾患の有無や症状を確認して緊急性がなければ、まずは自宅待機です。熱が高くなったら市販の解熱剤を飲んでもらい、それでも熱が下がらなければ、病院に来てもらう手順です」

 米国の待合室は原則、感染症と一般の患者とは別に分けられ、「日本のように一般の待合室でせきをしながら診察を待っている光景はまず見かけません」。

 感染症が確認されれば、指定された地域の専門病院に送られる。「シアトルでも新型コロナウイルス患者が出ていますが、入院・治療は専門病院で扱っています」

 窪田医師の専門は眼科で、米航空宇宙局(NASA)と宇宙飛行士の眼疾患の早期診断機器を共同開発していることでも知られている。その眼科医の立場から、新型コロナウイルス感染症で盲点になっている点をこう指摘する。

 「新型コロナウイルスは接触感染飛沫感染ということで口と鼻からの伝染に注意が向き、目からも感染し、結膜炎を起こすことが忘れられがちです。今の時期はたかが結膜炎と軽視しないで、新型コロナウイルスの可能性を疑って診察することを米眼科学会では勧告しています」

 米国では新型コロナウイルス感染症の患者を扱う医療関係者は防護メガネ(ゴーグル)と防護服の着用が義務付けられているそうだ。医療関係者、検疫官まで感染者が出た日本ではこうした徹底さが欠如していた。

 電車通勤を続けているビジネスマンはゴーグルとまでいかなくても、つり革などを触った手で目をこすることには気をつけたいものだ。(佐々木正志郎)

 ■窪田良(くぼた・りょう) 医師、窪田製薬ホールディングス代表。1966年、神戸市出身。慶応大医学部卒。現在、同医学部客員教授を兼務。

 




ロシアが初開示 “シベリア抑留“日本人自筆の記録

2020年03月14日 19時07分46秒 | 社会・文化・政治・経済
2020年1月28日(火)NHK 掲載

ロシアが初開示 “シベリア抑留“日本人自筆の記録

第2次世界大戦の終結直後、ソビエト軍は、旧満州などで60万人ともいわれる元日本兵や民間の日本人を拘束、シベリアに抑留した。このうち、約5万5000人が亡くなったとされているが、正確な人数や一部の人の名前は分からないままとなっている。

そんな中、去年(2019年)11月、ロシアがある文書を初めて日本側に開示。抑留された日本人自身が、当時収容所での生活や心情をつづった文章や絵画をまとめた資料を、つぶさに見ていく。

「極寒」「重労働」「飢え」絶望の記録

開示された「在ソ旧日本軍俘虜(ふりょ)生活記録」

今回、ロシアが開示した資料のうち、「在ソ旧日本軍俘虜生活記録」は、極東ハバロフスクの収容所にいた日本人が終戦から2年後の1947年に編集。ソビエト軍の監視の下で当時の心情などを書いたものとみられる。

開示された資料に含まれていた写真

中には、ソビエト軍の見張りにたばこをもらった友好的なエピソードなども記されていたが、実際に収容所で元日本兵たちを襲ったのは「極寒」と「重労働」それに「飢え」の三重苦だった。

「在ソ旧日本軍俘虜生活記録」

記録を読み進めると、過酷な環境の中で常に死と隣り合わせに生きていたこと、そして先の見えない収容所での生活を絶望視する気持ちが克明につづられている。

「あの男が数日前までは元気で居たのに、凍って寝ているのだ」(「在ソ旧日本軍俘虜生活記録」より)

「我々は銃殺されるのだろうか。昨夜のうちに逃亡していればよかった」(「在ソ旧日本軍俘虜生活記録」より)

「死、死」(「在ソ旧日本軍俘虜生活記録」より)

「ああ、オレの命もこれで終わりか。父さん、母さん、そして妹弟よ、元気でいつまでもいつまでも仲良く暮らして下さい。俺は名もなき山の中で死んでゆくでしょう。みんなさようなら」(「在ソ旧日本軍俘虜生活記録」より)



約1万5000人の死亡者が未特定

開示された資料に含まれていた絵画

こうした個人の文章や、当時の収容所の様子を詳細に描写した絵画などが日本政府に開示されたのは今回が初めて。

モスクワ 国立軍事古文書館

資料が見つかったのは、約740万点の軍事関連資料が保管されているモスクワの国立軍事古文書館だ。日本の厚生労働省は1991年から、収容所の日本人名簿などをもとに、亡くなった日本人の調査を行ってきた。これまでの調査で、死亡したと見られる日本人のうち約3万8000人が特定されたが、依然として1万5000人とも言われる人の特定ができないままだ。

厚生労働省 社会・擁護局擁護・業務課調査資料室の礒邊憲室長補佐(邊のしんにょうの点は1つ)

厚生労働省の担当者は、今後の活動について次のように説明した。「戦後70年あまりが経過して遺族も高齢化しています。抑留中の死亡者のお知らせをご遺族に1日でも早く届けられるようにロシア側と協力しながら、今後も取り組んでいきたいと思っております」(厚生労働省 礒邊憲室長補佐)。

国立軍事古文書館 コロタエフ副館長

日本側の希望を考慮し、ロシアの国立軍事古文書館は個人の名前が記されている今回の資料の開示を決めたという。「日本の厚生労働省は、資料に出てくる人物や絵などの作者に関心を持っています。今後も厚生労働省との協力は続けていきます」(国立軍事古文書館 コロタエフ副館長)。



“日本人のシベリア抑留”日ロの温度差

モスクワ郊外 戦争の捕虜をテーマにした博物館

一方、ロシアの人たちが日本人の“シベリア抑留”について知る機会は限られている。モスクワ郊外にある戦争の捕虜をテーマにした博物館の展示品のほとんどは、ナチス・ドイツに勝利した旧ソビエトをたたえるものだ。

戦争の捕虜をテーマにした博物館 日本人抑留者所持品などの展示物

その一角のわずかなスペースに、日本人の抑留者が所持していた小物や、写真などが紹介されている。ここを訪れて初めて日本人の抑留者がいたことを知るロシア人も少なくない。高齢の女性訪問者は、「日本人の抑留者のことは知りませんでした。学校でもあまり教えていなかったと思います」と話していた。

国立軍事古文書館 コロタエフ副館長

ロシアではあまり知られてこなかった日本人のシベリア抑留の実態を伝えようと、国立軍事古文書館の副館長は、日本人が書き残した資料を公開できないか検討していている。「展覧会や出版など、従来の方法に加え、インターネット公開などさまざまな方法で知らせることが可能だと考えています」(国立軍事古文書館 コロタエフ副館長)。



迫る“タイムリミット”さらなる資料開示のために

開示された「在ソ旧日本軍俘虜生活記録」

日本の厚生労働省は、今回、国立軍事古文書館が開示した資料をもとに、日本人の特定を急ぐとともに、シベリアに抑留された本人やその遺族などが見つかった場合は軍事古文書館から写しを受け取ったうえで提供したいとしている。また、軍事古文書館では、まだ具体化はしていないが、抑留をテーマにした日本の資料館と共同で展示会を開催するなど、日本側とも協力して取り組みを進めたいとしている。70年以上封印されてきた収容所での心の叫びが今、ようやく人々の心に響こうとしている。

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女たちのシベリア抑留

2020年03月14日 18時47分35秒 | 社会・文化・政治・経済

女たちのシベリア抑留の画像

作者:小柳ちひろ

作品情報

1945年8月の敗戦後-旧満州から関東軍の兵士ら約60万人がソ連やモンゴルの収容所に連行された。

そして強制労働に従事させられた。

その中には1000人規模の女性(主に看護婦や交換手)などもいた。

陸軍病院の看護婦約150人が捕虜としてハバロフスクへ。

薪取りや丸太運びの苦役を命じられた。

極寒の中、薪を背負い、軍歌を歌い行軍した。

監視兵が鞭を振ることもあったという。

「みんな、二度と日本には帰れないと思っていた」

2014年にNHK・BS1スペシャルで放送されたドキュメンタリー「女たちのシベリア抑留」担当女性ディレクターが綴る、本格ノンフィクション。

戦後70年以上、長く沈黙を守ってきた女性たちをインタビューすることに成功し、「女たちのシベリア抑留」は、文化庁芸術祭賞優秀賞、放送文化基金賞奨励賞、ATP賞テレビグランプリ優秀賞、ギャラクシー賞奨励賞、NHK放送総局長特賞など、その年のドキュメンタリー部門の賞を総なめにした。

ロシア側から初めて提出された女性抑留者の記録「登録簿」の内容も明らかになる。終戦直後、満洲や樺太などにいた軍人や民間人など60万人近い日本人がソ連によって連行された「シベリア抑留」。

その中に数百人から千人近いの女性捕虜が存在したことは、長く歴史の影に埋もれていた。関東軍の陸軍病院で勤務していた従軍看護婦や軍属として働いていたタイピストや電話交換手、開拓団の民間女性や受刑者たちが、極北の地シベリアに送られていたのである。

その中には「女囚」として10年を超える抑留生活を送った女性や、日本に帰る場所もなく異国の地で人生を全うした者もいる。帰国を果たした女性たちにとっても、故国の人々のまなざしは決して温かいものではなかった。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

小柳/ちひろ
ドキュメンタリーディレクター。1976年秋田県生まれ。同志社大学卒業後、映像製作会社テムジンに入社。
2008年よりNHK「戦争証言プロジェクト」に参加し、「引き裂かれた歳月 証言記録 シベリア抑留」(2010年放送文化基金賞受賞)、「三つの名を生きた兵士たち~台湾先住民“高砂族”の20世紀」(2012年ギャラクシー賞他)、「原爆救護 被爆した兵士の歳月」(2016年ATP賞グランプリ他)などの作品を製作する。
戦争の時代に生きた女性たちに焦点を当てたドキュメンタリーとして、「女たちのシベリア抑留」(2014年文化庁芸術祭賞優秀賞他)、「NHKスペシャル 女たちの太平洋戦争 従軍看護婦 激戦地の記録」(2015年放送文化基金賞他)、「サハリン残留 家族の歳月」(2017年ギャラクシー賞)、「戦争花嫁たちのアメリカ」(2019年)を製作。
2015年度放送ウーマン賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
 
 
昭和20年8月9日。
日ソ中立条約の存在があるため、絶対にソ連からの攻撃はないと信じて、ソ満国境地帯に暮らす民間人に対し
突然ソ連の爆撃機や戦車などの地上軍が襲い掛かった。
日本軍は8月15日の終戦宣言により、武装解除したが、戦利品として約50万人が苦役のためシベリアに送られ、その苛烈な環境下、一割の5万人が命を落とした。
この、シベリア送りとなった日本人の中に、数千名の女性が居た。
本書は主として、日本赤十字、日本軍に所属していたプロの看護婦たちと、プロではないが看護婦として勤務していて女性たち(菊水隊)約150名の記録である。
行く先も知らされずに貨車や船に乗せられ、ダモイ(帰国)と称してシベリア送りとなり、苛烈な環境下、ソ連兵に牛馬のごとく追い立てられ、肉体労働に従事させられた。なかにはソ連兵に連行され、そのまま帰ってこない女性もいた。
しかし、日がたつにつれ、彼女たちの看護婦としての能力と毅然とした態度により、ソ連軍看護婦として使役され
徐々にソ連側の信頼を得るに至った。彼女たち、従軍看護婦は過酷な目に遭った女性もいるが、多くは当時の捕虜としては優遇され、やがて一二年のうちに帰国できるようになった。
しかし、最終章にて語られる村上秋子さんのように、当時の北朝鮮で芸妓として働いているうちに、スパイ容疑で逮捕され、ソ連島最北端、死の収容所として恐れられているマガダンの収容所に送られ、のちに釈放されても帰国の道を選ばず、シベリアの墓に葬られている人もいる。
著者は、これらの人々をソ連側公文書に基づき丹念に取材、足跡を調べ、帰国している女性がいれば会いに行って直接話を聞くなどして、貴重なルポルタージュを作成している。
著者は本件をNHKBS1スペシャルとして放映したものだが、それをさらに補充取材したものである。このほかにも数々の優れた取材作品をドキュメンタリーとして作成放映し、多くのの賞をうけていることを付記しておきます。
 
 
女性がシベリアに抑留されていたとは知らなかった。綿密な取材を元にNHKスペシャルを2014年に放送したが、その5年後に詳細な本にまとめたもの。確かに良く取材していると思うが、ほとんどが看護婦の足跡を追ったものであり、待遇は比較的恵まれていたようだ。しかし資料の残っていない女囚のことには部分的にしか触れられていないが、かなり過酷な運命を送ったのだろう。
この本の物足りないところは、ソ連軍の強姦や残虐行為などの事実がオブラートに包まれた表現になっているところだ。帰還者やその家族に配慮しているのだろうが、もっと事実を生々しく書いてほしかった。それがジャーナリズムではないのかと思う。長々と書いている割には少し中途半端な感じがする。
 
 
当然女性も抑留されてたと思ってたので勉強になりました。
こういうのも学校で教えないといけません、教科書に載せないといけません。
戦争の悲惨さを知らない平和ボケの日本人ばかりになりました。
スマホバカばかりになりました。
日本の未来は暗いですよ、だから少子化なんです。
大変な問題なのに、政府は特に何もしませんね、終わってますわ。
 
 
 
 
 

定年消滅時代をどう生きるか

2020年03月14日 18時26分16秒 | 社会・文化・政治・経済

定年消滅時代をどう生きるかの画像

作者:中原圭介

内容紹介

すべての日本人の人生にとって、深く関りがある本を書きました。

2020年は日本の雇用が大変革を遂げる年になるからです。

AIなどのデジタル技術の普及に伴って、若手にとっても、
中堅にとっても、ベテランにとっても、高齢者にとっても、
無縁ではいられない雇用の流動化が起ころうとしているのです。

これからの日本では、大学を卒業後に就職して70~75歳まで働くことになるので、
個人の会社員生活は50年前後と、今の定年より10~15年程度も長くなります。

現在24年にまで縮まってきている企業の平均寿命が将来的に20年を切るようになったら、
会社員生活は企業寿命の2.5倍を超える長さになってしまうというわけです。

平均的な働き方をする日本人であれば、
計算のうえでは人生で3つの仕事や会社を経験しなければなりません。

そこで充実感のある人生を歩み続けるためには、どうすればいいのか――。

「人生で3つの仕事や会社を経験する時代へ」
「10年先を見据えて豊かな人生の礎を」
「人生100年時代は変化を楽しむ未来志向で」
「年金受給開始年齢は75歳に?」
「定年引き上げが終身雇用の終わりを招く」
「必要なのは“仕事は楽しみながらする”という価値観」
「転勤の廃止で就職希望者が10倍に」
「“新卒社員でも年収1000万円”の背景」
「会社の人材育成には頼らず、自分でキャリア形成を考える」
「好業績で人手不足なのに“早期退職”を募る理由」
「世界でも突出して学び直しをしない日本人」
「人生と仕事を何度もやり直しができる世界」
「人生を豊かにするためのヒント」
「1000人に1人の希少性を持つ裏技的な方法」
「リカレント教育の活用と就職氷河期世代」
「ハイブリッド人材が求められる理由」
「スマートフォンを使うことの代償」
「絶対に廃れない基本的な能力」
「ITの世界から離れることの効用」
「MBAの陥穽と感性の重要性」
「“読解力”と“論理力”を身に付けるには」
「ビル・ゲイツが設けている“考える週”」
「無意識のうちに自らの視野が広がる」
「高度な専門知識よりも大切なこと」
「日本人全体の底上げが豊かな社会をつくる」

【本書のおもな内容】

第1章 日本から「定年」が消滅する
第2章 大きく変わる企業の採用
第3章 トヨタ「採用の半数が中途」の衝撃
第4章 人材育成の仕組みを再構築する
第5章 これからを生きるための最大の武器

内容(「BOOK」データベースより)

10年先を見据えた「自らの価値を高める方法」「これからの働き方」とは?

 

作品情報

【好業績で人手不足なのに、なぜ大手企業は早期退職を募っているのか?】

【転職「35歳限界説」が過去の俗説と化した理由とは?】

【1000人に1人の希少性を持つ裏技的方法!】

【絶対に廃れない基本的な能力って何?】

【頭を「使う人」と「使わない人」の経済格差とは?】

2020年 日本型雇用改革元年 

2020年代 通年採用拡大&70歳が定年に 

2030年代 中途採用5割超え&75歳が定年に  

終身雇用・年功序列が完全崩壊!

「トヨタが変われば日本が変わる」「3年でひとつのプロを目指す」

「定年を撤廃する大手企業」「年金の受給開始年齢は75歳に!?」

「人材獲得競争の勝敗を決めるもの」「転勤の廃止で就職希望者が10倍に」

「世界でも突出して学び直しをしない日本人」「少なすぎるAI人材とAI教員」

「ハイブリッド人材が求められる理由」「ビルゲイツが設けている「考える週」」

すべての日本人の人生にとって、深く関りがある本を書きました。

2020年は日本の雇用が大変革を遂げる年になるからです。

AIなどのデジタル技術の普及に伴って、若手にとっても、中堅にとっても、ベテランにとっても、高齢者にとっても、無縁ではいられない雇用の流動化が起ころうとしているのです。

これからの日本では、大学を卒業後に就職して70~75歳まで働くことになるので、個人の会社員生活は50年前後と、今の定年より10~15年程度も長くなります。

現在24年にまで縮まってきている企業の平均寿命が将来的に20年を切るようになったら、会社員生活は企業寿命の2.5倍を超える長さになってしまうというわけです。

平均的な働き方をする日本人であれば、計算のうえでは人生で3つの仕事や会社を経験しなければなりません。

そこで充実感のある人生を歩み続けるためには、どうすればいいのか――。

本書がみなさんにとって、明るく前向きに生きるための一助としていただけたら幸いです。

【本書のおもな内容】第1章 日本から「定年」が消滅する 第2章 大きく変わる企業の採用 第3章 トヨタ「採用の半数が中途」の衝撃 第4章 人材育成の仕組みを再構築する 第5章 これからを生きるための最大の武器

著者について

中原 圭介
1970年、茨城県生まれ。慶應義塾大学卒業後、金融機関や官公庁を経て、現在は経営・金融 のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。

大手企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。近著に『AI×人口減少』(東洋経済新報社)、『日本の国難』 (講談社現代新書)などがある。ヤフーで「経済の視点から日本の将来を考える」、マネー現代(現代ビジネス)で「経済ニュースの正しい読み方」を好評連載中。

 

本書を一読して最初に思ったこと。「物事がそんな上手くいったら苦労しないよ」
消費税が上がり、働き方改革とやらのせいで残業代も減らされる、非正規社員も増えるなど、国民の負担は増すばかりで、多数の人が苦しい生活を送っているというのに、この上さらに定年延長と来れば、誰でもこう思うだろう。
「国は私達を死ぬ寸前まで働かせるつもりか」と。著者はいくらなんでも楽観的過ぎる。年を取ってからでもスキルは身に付けられるとか、減らされた収入は会社外の副業で補えとか、書いている事は綺麗事ばかり。具体的にどうすれば良いのかについてはほとんど説明がない。
かつて、リクルートが自由な生き方として「フリーター」という言葉を流行らせた事があったが、その流行を真に受けてフリーターになって大変な目に遭った人も少なからず存在するだろう。著者も本書の中で、会社から離れた自由な生き方に言及しているが、かつてのリクルートの宣伝とどこか似ているような気がする。
本書の内容はあまり真に受けない方が良さそうである。

 

小生はアラフィフに差し掛かっているが、新しいキャリアを考える良いきっかけになった。
今後の日本では世代を問わず、仕事に対する価値観を変えて、前向きに働き方を考えることができる人たちが豊かな生き方を手に入れることができる。
そのために読解力・感性を鍛える具体的な方法を実践しつつ、己が興味を持てる専門性を身に付ける戦略は理にかなっていると思う。
年功序列、終身雇用が衰退していく時代の最高レベルの指南書として周囲にも勧めたい。

 

「定年消滅時代をどう生きるか」というタイトルですが、一個人としての自分はどうすべきかの参考にはほとんどなりませんでした。あくまで全体の流れを俯瞰して解説した本であり、個々人としてどうするかの部分はないことはないけどボリューム的には雑誌のインタビュー記事程度という印象。
全体的には概説と政府に対する政策提言が殆どで、後半では「ひらめきより直観が大事」とか・・・大きい話と抽象的な話、あとIT人材がどうこうとか言わば一部の業界の話。
「(あなたは)定年消滅時代をどう生きるか」ではなく「(日本人は)定年消滅時代をどう生きるか」かな?

 

我が国に定着していた新卒一括採用、年功序列賃金、終身雇用という雇用慣行は遠からず消滅していくだろう。
 民間でも官庁でもこれからは定年が延びて、70~75歳くらいまでは働き続けなければ生きていけない世の中がもうやってくるのだ。
 本書は、変容していくこれからの社会を俯瞰するとともに、こうした現代社会にあってビジネスパーソンがいつまでも生き生きと働くことができる方法を提示している。
 本書を読んで、「ああ、これからまだまだ働き続けなければならないのか・・・」と憂鬱な気分になったが、人生100年時代の今はそんな泣き言は言ってはいられない。
 本書は、個々のビジネスパーソンがそれぞれ自己啓発に励み、読書を通じて論理的思考を身に着けるなどの努力をして末永く幸福な気持ちで働き続ける方法を教示してくれている。

 

会社員になって10年を越えたが、人生の次なるステージについて考えさせられました。

物事をポジティブにとらえる人には最高の指南書になると思います。
きっと背中を押してくれるでしょう。

スマホの使い方も新しい学びになりました。

 

僕はまだ30代後半だが、この本は今後の長い人生のガイド役になると思った。

政府が考える定年延長のスケジュールでは、2020年代に定年が70歳、2030年代に75歳になるという。
一方で、企業が考える採用のスケジュールでは、2020年代に通年採用が拡大し、2030年代には中途採用が5割を超える計画だという。
その過程で、考える人と考えない人の経済格差は広がる。

しかし、この本を読んでいると定年消滅時代は決して暗くない。むしろ明るいと感じる。
ITやAIの進化によって、専門家になるためのスキル取得期間が短くなり、いろいろな専門家になる可能性が広がっていくからだ。40代、50代でも60代でもやり直しても遅くない社会がやってくるというのだ。
再び就職氷河期が来ても何回でもチャンスが訪れる社会、働き方の選択肢が広がっていく社会は今の社会よりも前向きに捉えられると思う。

仕事は成長を実感するためのもの、楽しむためのものと筆者は語るが、僕もその通りだと思う。
令和の時代は変化を楽しむ能力が必要だという意見にも同意できる。

基本的なスキル(読解力、論理力、感性)と専門的なスキルを分けて考えて、あくまで基本的なスキルが大事なことを学んだ。
読解力、論理力、感性を身に付ける方法は大いに参考になった。
この本から社会に必要とされる人材になる大きなヒントをもらったことを感謝したい。

 


呉兢『貞観政要』

2020年03月14日 18時15分30秒 | 社会・文化・政治・経済


通勤電車で新型コロナに感染 労災は適用される

2020年03月14日 17時46分50秒 | 社会・文化・政治・経済

最近では、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために、電車など公共交通機関の利用を控えたり、時差通勤をしたりしている人が増えています。「通勤」は私たちにとって非常に身近なもの。通勤途中に転倒するなどしてケガをするのは、実は珍しいものではありません。しかし、負傷した際に「通勤災害」になり得る可能性があることを知らずに、自己負担で治療してしまう方もいます。通勤災害の基本について、人事労務コンサルタントで社会保険労務士の佐佐木由美子氏が解説します。

■通勤災害の例外ルール

通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷や疾病、障害または死亡のことをいいます。ここでいう「通勤」とは、就業に関して、住まいと就業場所の往復や事業所から他の事業所への移動などについて、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を帯びる移動については通勤とはなりません。たとえば、休日・休暇中に呼び出しを受け予定外に緊急出勤するような場合がこれに当たります。単身赴任先の住まいと帰省先の住まいとの間の移動なども含まれます。なお、共働き労働者が託児所や親せきなどに子どもを預けるためにとる経路は、合理的な経路と考えられます。また、労働者であれば、パートやアルバイトなど、雇用形態を問わず対象となります。

具体的には、通勤の途中において、自動車にひかれた場合や駅の階段から転落した場合、歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体によって負傷した場合など、一般に通勤中に発生した災害は通勤によるものと認められます。

基本的に、通勤ルートからそれてしまったり(これを「逸脱」といいます)、通勤のルート上で通勤とは関係のない行為を行ったり(これを「中断」といいます)してしまうと、逸脱または中断の間やその後の移動中に事故にあったとしても、通勤災害とはなりません。

たとえば、仕事帰りに、通勤途中にある駅の近くの映画館で映画を見たり、友人と食事をしたり、そういった後でいつもの通勤経路に戻っても、通勤とはみなされないということです。


ただし、例外もあって、通勤の途中で近くのトイレを使用する場合や、乗換駅など通勤経路上のコンビニエンスストアなどで飲み物を購入する場合など、ささいな行為については認められます。これらは一例ですが、厚生労働省令で定める日常生活上必要な行為は、逸脱または中断の間を除き、合理的な経路に戻った後は再び通勤となります。

この日常生活上必要な行為とは、日用品の購入のほか、職業訓練や教育訓練を受ける行為、選挙の投票、病院の受診などが該当します。また、2017年1月からは、要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、並びに孫、祖父母、兄弟姉妹を継続的または反復的に行う介護についても、日常生活上必要な行為として認められるようになりました。

■こうしたケースは通勤災害になるか

電車通勤でよく起こり得るのは、人身事故などで大幅に電車が遅延するようなケースでしょう。当日の交通事情によりやむを得ず迂回してとる経路は、合理的な経路となります。

しかし、特段の合理的な理由もなく、著しい遠回りとなる経路をとる場合などは認められません。まして、前夜に交際相手の住むマンションに泊まって、そこから出勤する途中の事故などは、たとえ会社のそばであっても通勤災害とはなりません。

冬は、路面が凍結して転倒する事故なども見受けられます。それでは、自宅玄関から一歩出たところで、転んでしまった場合は、通勤災害と認められるでしょうか。

このケースは、イエスともノーとも言えます。ポイントは、戸建てか集合住宅かの違い。普通は、家を出たところから通勤が始まっていると考えます。マンションであれば、自室のドアまでが住居、一歩出れば廊下やエレベーターなどの共用部分で、ドアを出て廊下に出た時点で通勤となります。

一方、戸建ての場合は、庭などの敷地を含めて住居とみなされるため、玄関を出て門までの敷地内でケガをした場合は、通勤災害とは認められません。狭小住宅で、戸建てであっても一歩玄関を出たら道路、という場合は別ですが、戸建ての場合は敷地を出たところから通勤となる点に気を付けたいところです。

先日、「ヒールの高い靴を履いていて転んだ場合は通勤災害にはならないのか」という質問を受けました。自分が選んだ靴や洋服などのコーディネートで判断が分かれるわけではなく、ヒールが高い靴であることを理由に通勤災害が否定されることはありません。企業によっては、パンプスの着用を義務付けている場合もあるくらいです。ただ、通勤は満員電車での移動が想定されるので、なるべく疲れない靴を履くに越したことはないでしょう。

また、最近は副業・兼業を認めている企業が増え、働き方も多様化しています。仮に、本業であるA社から、終業後に副業先のB社へ移動する場合はどうなるでしょう? この場合、B社へ行く際は通勤と認められ、B社での通勤災害の対象となります。

■新型コロナウイルスに感染したら?

最近は、新型コロナウイルスによる感染症が気になるところです。通勤電車は濃厚接触のリスクが高い密室状態ですが、仮に目の前の人がマスクもせずにひどくせき込んでいたら、感染するのではないかと誰しも不安になるでしょう。

そうしたシチュエーションの後に、もしも新型コロナウイルスに感染していることが判明した場合は、通勤災害になり得るのでしょうか。基本的には、感染経路が明確に特定でき、潜伏期間などに医学的な矛盾もなく、通勤以外の感染源が否定された場合は、通勤災害になりうる可能性もないとは言えません。

ただし、通勤というのは不特定多数と接することとなるので、現実的に考えると、感染源を特定するのは極めて厳しいといえるでしょう。一方、同じ職場で仮に隣の席の社員が感染者であって、濃厚接触をしていたなど、感染経路が特定でき得るようなケースであれば、「業務災害」と認められるケースは考えられます。あくまでも実態に基づく個別判断となりますので、労災に関して不安があるときは、会社を管轄する労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう。

なお、通勤災害の場合、決してやってはいけないことは、保険証を使うことです。病院に行くと、反射的に保険証を出したくなりますが、健康保険は業務または通勤が原因でない傷病に対して利用できるものです。

通勤災害の場合、必要な給付は労災保険で受けられ、しかも治療費の自己負担は原則としてありません。通勤途中のケガが原因で仕事を休む場合は、休業4日目から1日あたり給付基礎日額の80%相当額の休業給付も支給されます。通勤途中で負傷したときは、勝手に自己判断せずに、会社に報告して、しかるべき対応を取ってもらうようにしましょう。


佐佐木由美子人事労務コンサルタント・社会保険労務士。中央大学大学院戦略経営研究科修了(MBA)。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所などに勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、働く女性のための情報共有サロン「サロン・ド・グレース」を主宰。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」をはじめ、新聞・雑誌などで活躍。




新型コロナが怖くても満員電車に乗る…日本人の「異様」の正体

2020年03月14日 17時22分11秒 | 社会・文化・政治・経済

 新型コロナウイルスの感染拡大により、様々な集会やイベントが中止や延期となり、政府が一斉休校を要請するという事態となっている。しかし、このような流れに反して、依然として都市部では電車もバスも通勤する人で溢れている。

一目瞭然!マスクが新型コロナ予防にならない理由

また、多少の熱や咳では仕事は休めず、感染者が発熱後に仕事をしていたという報道も少なくない。イベントを中止にしても学校を休みにしても、仕事への姿勢がこの状態では、社会全体としての感染リスクは高いままである。

 なぜ日本ではこれほどまでに仕事を休めないのか。感染拡大に伴って改めて浮き彫りになっているこの日本の「働き方」問題について、研究者として日本で4年間、アメリカとオーストリアで8年間働いてきた経験から考えたい。

「有休を使い切る」は世界では当り前

 まず、私が働いてきた日本と欧米の職場での働き方の違いを紹介する。

 欧米といっても実際は地域によって言語も文化も大きく異なる。しかし、労働時間が日本より短いという傾向は、私が生活してきたアメリカやオーストリアを含む欧米の多くの地域に共通している。

午後5時を回るとほとんどの人が帰宅するし、有給休暇を使い切らない人は非常に稀である。

 独立行政法人「労働政策研究・研修機構」がまとめた「国際労働比較データブック2018」によると、週49時間以上の労働(本調査においてこれを長時間労働ラインとしている)を行う就業者の割合は、日本では10年程前から男性が30%、女性が10%前後で推移している。

対して欧米各国では平均して、男性が10~15%、女性が5%前後である。週49時間という基準がどこまで問題を反映しているかは分からないが、少なくともこの基準の範囲でも、日本では欧米のおよそ2倍の人が長時間労働をしており、特に男性は約3人に1人が日常的に長時間労働をしている。

 また、有給休暇の取得率の低さも日本は際立っている。エクスペディア・ジャパンが2018年に公表した有給休暇や長期休暇に関する国際比較調査の結果によると、日本の有給休暇取得率は50%しかなく、調査した国の中で最下位であった。

対して、90%を超える国は欧米諸国だけでなく韓国やシンガポールなどアジアにも多く見られ、日本のように50%に近いような国は世界でも稀である。

 つまり、私が欧米で経験しているしっかり休みを確保する働き方は、世界の中ではむしろ標準的であり、日本の働き方が世界的に特殊なのである。

許し合えない日本社会

 私は日本の働き方の特殊さは、主に以下の2点に象徴的に現れていると考えている。

1. 寛容さの欠如
2. 責任の所在の曖昧さ

 まず「寛容さの欠如」についてであるが、欧米の多くの地域に比べ日本では、仕事上の不具合を許し合わない傾向にある。

 例えば日本では、郵便や宅配便が早く届かない、交通機関含めスケジュール通りにならない、担当者が不在で仕事が遅れる、納期に間に合わないなど、あらゆる不具合を許さず「誰にも迷惑をかけていない状態」へ向かおうとする。この傾向は、不具合に対処するための労力の増加だけでなく、仕事を休むことへの躊躇にもつながっている。

 対して欧米では、極端な話でもなく、郵便は遅れ、電車は定刻通りに動かず、担当者も通知なしに休み、期日通りに仕事がなされないことも日常茶飯事だ。

その背景には、多少の不便もお互い様という「迷惑を悪としない精神」があると私は感じている。

 だから例えば、緊急の要件が目の前にあっても終業時間になれば帰宅するし、逆に緊急時に対応されなくても必要以上に責めたりしないのだ。

日本から移動したばかりの時は、このような性質に戸惑いを感じたが、今では周囲に迷惑をかけてはいけないというある種の「呪い」のようなストレスから解放され、自分のペースで穏やかに仕事にも休暇にも向かうことができている。

責任の明確化は労働時間を短縮する

 次に、「責任の所在の曖昧さ」についてであるが、日本では複数人で仕事を分担する際に責任の所在を曖昧にしてしまう傾向がある。 

 例えば研究業界でもプロジェクトを進めるにあたり、個々に割り当てられた担当部分を越えたプロジェクト全体への責任をリーダーから各担当者まで多くのレイヤーの人が感じていたり、場合によっては、担当以外の部分を手伝うことを当然のように強要されるなど、自身の担当領域を越えた“過剰な責任”が変動的に個人に課せられる。

このように、日本では仕事への責任感を背負うべき範囲が流動的だ。それは一見、様々なケースへの対応力を高めるなどいいことのようにも思えるが、本来は全体に関わる領域への責任を担うべきリーダーが個々の担当者の責任感に甘える余地を生むなど、その責任感に乗じて個人の労働時間を際限なく増やす危険を生み出している。

 一方、欧米では分担を与える側も与えられる側も個人の責任の所在が日本に比べ遥かに明瞭である。

 例えば、今働くオーストリアの職場では、研究グループをまとめるグループリーダーは、リーダー手当を支給されメンバーが個々の仕事に集中できるようにマネジメント業務を行っている。

その中で私は、自身の仕事に必要なプロジェクトを走らせ学生を雇っているが、私自身には学生の研究環境の整備などプロジェクトを管理するためのプロジェクト手当が支給され、学生には与えられた環境で研究に取り組むための給料が支給されている。

 このように、責任の所在が明瞭なシステムが機能すると、個々の仕事が必要以上にオーバーラップすることがなくなり、組織全体で必要なトータルの労働力が最小限に抑えられる。

このように、日本では仕事への責任感を背負うべき範囲が流動的だ。それは一見、様々なケースへの対応力を高めるなどいいことのようにも思えるが、本来は全体に関わる領域への責任を担うべきリーダーが個々の担当者の責任感に甘える余地を生むなど、その責任感に乗じて個人の労働時間を際限なく増やす危険を生み出している。

 一方、欧米では分担を与える側も与えられる側も個人の責任の所在が日本に比べ遥かに明瞭である。

 例えば、今働くオーストリアの職場では、研究グループをまとめるグループリーダーは、リーダー手当を支給されメンバーが個々の仕事に集中できるようにマネジメント業務を行っている。

その中で私は、自身の仕事に必要なプロジェクトを走らせ学生を雇っているが、私自身には学生の研究環境の整備などプロジェクトを管理するためのプロジェクト手当が支給され、学生には与えられた環境で研究に取り組むための給料が支給されている。

 このように、責任の所在が明瞭なシステムが機能すると、個々の仕事が必要以上にオーバーラップすることがなくなり、組織全体で必要なトータルの労働力が最小限に抑えられる。

仕事至上主義の先にあるもの

 そもそもなぜ日本は、海外の働き方が知られるようになった現在においても、過剰な労働に頼り続けてしまうのか。私はその問題の根本に、日本にはびこる「仕事至上主義」の精神があると考えている。

 仕事に関わる時間は何より優先されるべきという仕事至上主義の考え方が前提にあるので、仕事を与える側は安易に労働力に頼り、与えられる側も与えられた仕事を人生の他の時間を削ってでも取り組むべきだと感じてしまうのではないだろうか。

 またこの「仕事至上主義」は、労働力に頼ることへのハードルを下げてしまうだけでなく、育児や教育など仕事以外の大切な要素の軽視にもつながっているように思う。

 この点は、例えば性別によって不平等な仕事・就職環境を生み出すなど人権に関わる様々な不条理をもたらすだけでなく、仕事の質という面でも、人としての視野を狭め、仕事の柔軟性を削る危険に繋がっていないだろうか。

働き方改革の前に必要なこと

 いま日本では働き方改革が叫ばれているが、私は今の日本に実質的に必要なのは、この仕事至上主義からの脱却であると考えている。

通勤ラッシュがなくならないことも、未だに長時間労働が出世につながっていることも、男女平等に働く社会の実現と言いながら古いジェンダー観からいつまでも脱せないことも、日本社会が直面する働き方に関する問題の多くが、この仕事至上主義に根を置いている。

 また仕事至上主義は、仕事が経済と直接関係している現代においては「拝金主義」への迎合という要素も含んでいる。私は、そんな仕事やお金に直接的に関わる部分でないところにこそ、本来の日本らしさがあると考えている。
例えば、日本に一時帰国した際に郵便局に立ち寄ると、欧米などで多く経験するように、ただこちらが指定した発送方法で処理されるのではなく、一番いい発送方法を親身に提案してくれたりして、その細やかな気配りに感動する。

そんな日本らしさは、拝金主義が蔓延する世界において、他にはない新しい価値観を与える可能性を秘めているように思う。これもまさに、前述した日本の前向きなポテンシャルの一つである。

 国も企業も個人も、皆がもっと当り前のように仕事以外の人生の要素を大切にする。そんな生きやすい社会に変わることが、今の日本が目指すべき方向ではないだろうか。

中川 まろみ(研究者、ライター)


制服で性被害に遭った子へ 兵庫県警が買い替えに補助金

2020年03月14日 17時02分31秒 | 事件・事故

3/14(土) 朝日新聞社

性犯罪の被害者支援の一環として、兵庫県警は今年から、被害者の学校制服の買い替えに補助金を出す制度を始めた。担当者は「有効に活用して欲しい」と呼びかけている。


 県警によると、学校の制服を着ていた時に強制性交や強制わいせつなどの被害にあい、制服を着られなくなった被害者が対象。新しい制服を買うのに必要な費用の一部(上限5万円)を補助する。

 被害者が未成年の強制わいせつ・強制性交などの性犯罪事件の認知件数は、県内では10年前から年200件前後で推移している。

 性犯罪事件では、服が証拠品として押収されたり、犯行で損傷されたりする他、精神的な負担などから、同じものを着られなくなることが少なくない。

 制服は私服と異なり、別の服での代替が難しく、通学に欠かせないため、早急に支援する必要があると判断した。1月1日に制度が始まってから、県警の担当者が被害者に制度を説明するようにしているという。

 対象は原則として、制度開始以降に県警が認知した事件だが、担当者は「個別に判断する必要があるため、まず問い合わせをしてほしい」としている。県警被害者支援室(0120・338・274)へ。(笹山大志)

朝日新聞社

 

座右の書『貞観政要』―中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」

2020年03月14日 16時55分23秒 | 社会・文化・政治・経済

座右の書『貞観政要』―中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」

出口 治明【著】

 

内容説明

正しく“自分の権限”を理解する、“耳に痛い言葉”を聞き続ける。「すぐれた決断」をできる人の絶対条件。

目次

序章 「世界最高のリーダー論」はどうして生まれたか―ものごとの「背景」を押さえる
第1章 リーダーは「器」を大きくしようとせずに、中身を捨てなさい―「権限の感覚」と「秩序の感覚」
第2章 「部下の小言を聞き続ける」という能力―「諫言」の重要性を知る
第3章 「いい決断」ができる人は、頭の中に「時間軸」がある―「謙虚に思考」し、「正しく行動」する
第4章 「思いつきの指示」は部下に必ず見抜かれる―「信」と「誠」がある人が人を動かす
第5章 伝家の宝刀は「抜かない」ほうが怖い―「チームの仕事」の重要なルール
第6章 有終の美は「自分」にかかっている―ビジネスを「継続」していくために

著者等紹介

出口治明[デグチハルアキ]
1948年、三重県生まれ。ライフネット生命・会長。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立(のちのライフネット生命保険株式会社)、代表取締役社長に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

出版社内容情報

稀代の読書家にして注目の経営者が、いつも座右に置く中国古典とは?中国は唐代、2代皇帝・太宗による統治(貞観時代の政治)の要諦が凝縮された『貞観政要』。日本においては徳川家康、北条政子も参考にし、世界最古・最高のリーダー論として世界中で読み継がれている。「部下からの厳しい言葉にこそ耳を傾けること」「組織のパフォーマンスは、リーダーの器以上にはならない」「上司は、自らの権限の及ぶ範囲を明確にし、できれば制限しなければならない」――太宗が心得た組織・リーダーシップのポイントの数々は、時代を超えて通用する普遍の真理である。
『貞観政要』を座右の書にし、現代における注目リーダーである出口治明氏が、はじめて中国の古典を深く語る。

序章 「世界最高のリーダー論」はどうして生まれたか
      ――ものごとの「背景」を押さえる

第1章 リーダーは「器」を大きくしようとせずに、中身を捨てなさい
      ――「権限の感覚」と「秩序の感覚」

第2章 「部下の小言を聞き続ける」という能力
      ――「諫言」の重要性を知る

第3章 「いい決断」ができる人は、頭の中に「時間軸」がある
      ――「謙虚に思考」し、「正しく行動」する

第4章 「思いつきの指示」は部下に必ず見抜かれる
      ――「信」と「誠」がある人が人を動かす

第5章 伝家の宝刀は「抜かない」ほうが怖い
      ――「チームの仕事」の重要なルール

第6章 有終の美は「自分」にかかっている
      ――ビジネスを「継続」していくために

出口 治明[デグチ ハルアキ]
著・文・その他

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

出口/治明
1948年、三重県生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者。1972年、京都大学法学部を卒業後、日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の財務企画専門委員会初代委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。

ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。

2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴いライフネット生命保険株式会社に社名を変更。2012年3月15日に東証マザーズに上場。2018年1月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

 

唐の名君として名高い第2代皇帝太宗・李世民(626-649)。
その言行録(リーダー論)をまとめたのが『貞観政要』である。
父を幽閉し兄・弟を殺して帝位についた太宗は、それだけに平和な安定した時代を
築き名君としての名を残したかった。後に徳川家康も当書を愛読したという。
家康も、秀吉亡き後はかなりムチャブリを発揮して大阪方(豊臣秀頼)を抹殺して
権力を奪ったのだから、ちゃんと『貞観政要』を勉強して平和な江戸時代の礎を
築くための参考にしたのかもしれない。

 リーダーに必要な資質は(ビジョン力、共感力、統率力、正しい判断力)だと
書いてあるが、こう書くとなるほどそうだねで終わってしまうが、これを実行する
のはまことにむつかしい。とくに「正しい」判断をするなんて、至難の業。
何が正しく何が正しくないかはやってみないとわからないことが多いから。
でも著者の山口治朗氏はより正しく意思決定するためのヒントと心構えが
『貞観政要』に書いてあるという。山口氏自身が起業家で苦労されているから
説明もわかりやすく説得力ある。

  リーダー論ではあるが、リーダーの視点、部下の視点の両方を書いて
いるので、安定した組織をいかに構築するかという組織論の本でもある。
つまり組織に属するすべての人に役に立つ。

 例えば、「小事は大事」。些細なことや小さいことを見逃さず、おろそかに
しない。「これぐらいはいいだろう」という気のゆるみがやがて大問題を招く。
最近の「桜を見る会」事件を思い出す。
真相を示すはずの公文書がすべてシュレッダーにかけられ、疑惑の出来事に
ついてのファクトを誰も言うことができないという状況が創り出されている。
今の日本では、「権力者はどんな不正を働いても、まわりに忖度され許される」と
いう暗黙のルールが支配的で、誰も首相に面と向かって諫言できなくなっている。
これはとてもまずいと『貞観政要』は叱っている。

 

以前上司に勧められて『貞観政要』は読んだことがありますが、今回「100分て de名著」で出口氏がナビゲーターになるということで、こちらも読みました。出口氏が最も重視されているのであろう項目を、会社生活の具体的事例を交えながら講釈してくださっているので、自身をイメージすることもできて非常に納得感のある読後感です。シンプルな教えだけに実践は難しい『貞観政要』。繰り返し読み続けたい良書です。

 

史に準えた帝王学。

上司と部下の違いは只の役割の違い、
これは部下を持つ人間には
自戒の念を込めて再認識するべき内容。

面白いから歴史に残る、
もう一度歴史を学び直すのも良いかもしれない。

 

読書家で知られる筆者であるが、他人に本を勧めることはしないという。その筆者が例外的に薦めた本が「貞観政要」で、唐の第二代皇帝の太宗・李世民とその臣下のやり取りが書かれており、リーダーとフォロワーのあり方は、普遍的なものであり、現代に通じる。

組織はリーダーの器の大きさ以上のことは出来ないと云う。また、人間の器は持って生まれたものからは大きくはならないと云う。しかし、器の大きな人間になるのは無理でも、器の中を無にする(拘りを捨てる)ことで、リーダーは自分の器以上のことを組織で為すことが出来るということが筆者のリーダー論を象徴している。

「三鏡」(銅の鏡で自らの表情を映し、歴史の鏡で世の中の興亡盛衰を知り、人の鏡で自らの行いを正す)、「諫言する部下を持つ」、「君主は舟であり、人民は水である(水には舟を浮かべる力と転覆させる力がある)」など、名言が溢れると共に、リーダーとして必要な正しく意思決定をする為のヒントや心構えが集約されている。
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新型コロナウイルスは3日間滞留し空気中で3時間生存…

2020年03月14日 16時55分16秒 | 社会・文化・政治・経済

(国際政治経済学者・浜田和幸)

 アメリカの「アレルギー感染症研究所」「国立衛生研究所」「国防総省先端技術開発庁」「全米科学財団」などの委託を受けて行われた「COVID-19新型コロナウイルス感染症)媒介物報告書」がまとまった。

 今後、プリンストン大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、国立衛生研究所の専門家による内容精査が行われる。その概要が11日に公表された。その報告によると、今回のCOVID-19の感染力のしぶとさが想像以上に大きいことが明らかになった。

 要約すると、以下の通りである。「COVID-19のウイルスは空気中であれば3時間、プラスチックなどの表面の場合には3日間ほど滞留する」。そのため、「ヒトは空気感染や媒介物による感染リスクにさらされることになる」。

 この発見は重大だ。なぜなら、感染者と接触しなくとも、空気感染でウイルスが拡散する可能性がある。今後、専門家がチームを組み、空気感染するのかを確認することになっている。

 従来は「感染者との濃厚接触がなければ感染はない」と思われていたが、そうした楽観論が打ち砕かれることになった。

 更にこの報告書によれば「ウイルスは空気中であれば3時間は生存するが、銅製品の表面であれば4時間、厚紙の表面では24時間、プラスチックやステンレスの表面の場合には2~3日にわたって生存すること」が確認された。

 その一方、弱点があることも明らかになった。それは湿度に弱いということだ。加湿器を使い、湿度50%でカ氏72度(セ氏22.22度)にすれば、ウイルスの活動が収まることが判明したという。

 




デジタルで読む脳 X 紙の本で読む脳

2020年03月14日 13時45分12秒 | 社会・文化・政治・経済
デジタルで読む脳 X 紙の本で読む脳 メアリアン・ウルフ(著/文) - インターシフト
 
 「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる
 
メアリアン・ウルフ(著/文)大田直子(翻訳)
 

紹介

◎かけがえのない「読書脳」が失われる前に、
 新たな「バイリテラシー脳」をいかに育てるかーー
「読む脳」科学の世界的リーダーによる画期的な提唱!◎

・文字を読むとき、脳はどれほど複雑な仕事をしているか
・紙の本が、創造力や共感力、記憶力、分析力を高めるわけ
・脳がデジタル・モードになると、読み方はどう変わる?
・熟達した「深い読み」ができる脳のしくみとは?
・脳の発達段階に応じた「読み書き力」「デジタル力」の育て方
・読書脳が失われていくと、文化や社会はどうなるか
・ゆっくり急ぐ「喜びの時間」とは?

デジタルによって人類が大きな転換点を迎えているいま、
紙とデジタルの読む脳の違いを知り、
ともに強いバイリテラシー脳を育てることが、次代を生きる糧となる。

手紙形式で、あなた(読者)に語りかけ、静かに深く問いかける
珠玉の読書脳体験がここに。

★ 立花隆・養老孟司・松岡正剛・竹内薫・山形浩生・池谷裕二・瀬名秀明・佐倉統・山本貴光 氏ら絶賛の
名著『プルーストとイカ: 読書は脳をどのように変えるのか?』、待望の続編!

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::目次::
第一の手紙・・・デジタル文化は「読む脳」をどう変える?
第二の手紙・・・文字を読む脳の驚くべき光景
第三の手紙・・・「深い読み」は、絶滅寸前?
第四の手紙・・・これまでの読み手はどうなるか
第五の手紙・・・デジタル時代の子育て
第六の手紙・・・紙とデジタルをどう両立させるか
第七の手紙・・・読み方を教える
第八の手紙・・・バイリテラシーの脳を育てる
第九の手紙・・・読み手よ、わが家に帰りましょう

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::著者:: メアリアン・ウルフ
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA) 教育・情報学大学院の
「ディスレクシア・多様な学習者・社会的公正センター」所長。
専門は認知神経科学、発達心理学、ディスレクシア研究。その優れた業績により、多数の賞を受賞。
著作は『プルーストとイカ: 読書は脳をどのように変えるのか?』など

::訳者:: 大田直子
翻訳家。訳書は、エリエザー・スタンバーグ『〈わたし〉は脳に操られているのか』、デイヴィッド・イーグルマン『あなたの脳のはなし』、オリヴァー・サックス『意識の川をゆく』など、多数。

目次

■第一の手紙・・・デジタル文化は「読む脳」をどう変える?

■第二の手紙・・・文字を読む脳の驚くべき光景
 脳の可塑性・専門化・音速の自動性
 三つの円形舞台サーカス:巨大なテントの下で/注意のスポットライト/
  視覚のリング/言語のリング/認知リング・感情リング

■第三の手紙・・・「深い読み」は、絶滅寸前?
 文中には何がある?:注意の質 
 深い読みの喚起プロセス:心象の力
 共感ーー他人の視点になる
 背景知識
 深い読みの分析プロセス:類推と推論/批判的分析

■第四の手紙・・・これまでの読み手はどうなるか
 読みのすべてをつなぐデジタル・チェーン:どれだけ読むか/どう読むか/
  何を読むか/どう書かれるか
 自分を実験台にして:最後の環ーーなぜ読むのか

■第五の手紙・・・デジタル時代の子育て
 注意散漫な子どもたち:バッタの心/記憶への影響
 外部の知識源への依存
 読み方は考え方を変え、考え方は読み方を変える

■第六の手紙・・・紙とデジタルをどう両立させるか 
 ひざのすき間でーー最初の二年間:読んでいるとき、からだはどう反応するか
 二歳から五歳までーー言語と思考がともに飛び立つとき
 ガマノコシカケと物語の秘密の言葉
 画面モードに設定されてしまう前に
 つなぐべきか、つながざるべきかーー問題は、どれを、いつ
 将来の準備
 急ぎすぎないで

■第七の手紙・・・読み方を教える
 どこから始めるか:子どもたちに何が必要かを見つける/
  教師が知っておくべきこと/あらゆる学年で、あらゆる分野で

■第八の手紙・・・バイリテラシーの脳を育てる
 子どもの発達へ向けた提案:印刷媒体のたいせつな役割/デジタルの知恵
 三つの大問題:第一のハードルーー媒体がおよぼす影響の調査
 第二のハードルーー専門家の研修・育成
 第三のハードルーー利用機会と関与の格差
 注意、記憶、接続、推論、分析、そして跳べ!

■第九の手紙・・・読み手よ、わが家に帰りましょう
 観想・熟考の生活:喜びの時間/社会的利益のための時間/知恵の時間 
 読書と良い読み手の未来

 
著者プロフィール

メアリアン・ウルフ  (メアリアンウルフ)  (著/文

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA) 教育・情報学大学院の「ディスレクシア・多様な学習者・社会的公正センター」所長。
専門は認知神経科学、発達心理学、ディスレクシア(読字障害)研究。その優れた業績により、多数の賞を受賞。
著作は『プルーストとイカ: 読書は脳をどのように変えるのか?』など。

大田直子  (オオタナオコ)  (翻訳

翻訳家。訳書は、エリエザー・スタンバーグ『〈わたし〉は脳に操られているのか』、
デイヴィッド・イーグルマン『あなたの脳のはなし』、オリヴァー・サックス『意識の川をゆく』など、多数。

 

人間には、文字を読むための遺伝子は備わっていない。つまり、誰もが読み方を学び、<読む脳>を形成する必要がある。

その中で推測や分析、共感といった力が育まれ、新たな洞察や思考を生む<深読み>が可能になっていく。

読むという行為の多くがデジタル機器の画面上で行われるようになって久しい。

では、紙の本と、画面上では、どんな違いがあるのか。

著者は多くの研究を照覧しつつ、紙からデジタル媒体への移行が、読む脳や深い読みの形成と働きに、大きな変化をもたらしていると指摘する。

画面上で大量の文章を読む現在は、読む脳の基準が斜め読みや飛ばし読みとなり、以前とくらべて細部の内容や表現に分け入る能力が減退しているという。

 

著者は最初にデジタルで読むことのデメリットをあげています。例えば同じ物語でもkindleで読む場合と紙の本で読む場合とでは後者のほうが理解力が勝っていらしいです。

電子機器は読んでいる最中も他のアプリやSNSによって注意力散漫になること、紙の本のほうがわからなかったページ、思い出せないページに戻ることが容易であること(本のなかでは回帰と表現されています)など言及されています。

要はマルチタスクがダメで今現在世の中は電子機器によって情報過多になっているので、深く物事を考える時間が少なくなっていますよね、というのがこの本の結論に近いです。

本書はどちらかというと教育論に多くのページがさかれており、子どもが小さいときはなるべく紙のほうがいいこと、しかし無理のない分量にすることを言われています。

最終的に著者はデジタルは良くないという結論にするわけではなく、デジタルも紙も両方使いこなせるバイリテラシーを推奨しています。子どもの教育に電子機器を使うか迷っている親などにおすすめできる本です。

 

脳科学的見地から、「紙の本」と「デジタル」とでの読字のプロセスの違いやメリット・デメリット、更には両者のいい所をとった次世代の読字脳についての可能性の示唆を述べた本。

 自分は紙の本で読む派だ、という読書家は多いと思う。僕も熟読するのなら紙の本の方が圧倒的に読みやすい。
 この本では、なんで紙の本の方が深い読みをしやすいのか?なんでデジタルじゃイマイチなのかについて説得力のある説明をしている。
 その上で、著者は、紙でもデジタルでも媒体を問わず上手に読めることができる脳(バイリテラシー脳)を育てることを理想をしている。ただしその具体的な方法はまだ途中のようで、この本では示唆にとどまっている。
 また、この本は、読書好きなら共感できる、読書の喜びについての著者の思いも溢れたものとなっている。

・人類は誕生時から字が読めた訳ではない
「読字能力」は、人間に生得的に備わった機能ではない。
すなわち、人間は、言葉を発する能力のための脳回路は先天的に備わっているが、読字能力のための脳回路(読字脳)を最初から備えてはいない。
幼い脳は読字のための回路をもたないので、人間は幼少期においては絵本の読み聞かせで読字を学び、しだいに紙の本で読書をすることで読字能力を磨いていく。そして注意深い読書により知見を得る「深い読み」が可能となる(だから絵本の読み聞かせはとても重要なのだ)。

・「読字脳」が人類を変えた
読字が脳の回路自体を作り変えることは、読字が思考の本質をも変えることを意味する。
読字はわずか6000年の間で人類の文化の知的発展の触媒となった。
(より詳しくは、この著者の前作『プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?』)

・「読字脳」のパラダイムシフト
僕たちは「読字脳」の歴史的な大転換期に生きている。
デジタルデバイスの出現だ。これは口承文化から書記文化への移行に匹敵する転換だと著者は言う。
しかし、印刷でなくデジタル画面で本を読んだ場合、読み飛ばしや斜め読みで読まれやすく、紙の本で読んだ場合と比べて細部の理解度が低下する傾向があるという研究結果がある。
一般的に「深い読み」は紙の本が適しているためだ。

・なんで「深い読み」には紙の本がいいのか?
 その大きな理由は「物性」である。
 紙の本は、ページに印刷されたモノであるため、読者は本の内容を時間的・空間的に位置づけて認識しやすい。
つまり、実際のページの進み具合や、何がどこに書いてあり、それらがどう関連するかを物理的な次元で実感できるし、時には戻ったり、パラパラページをめくりふと止めて熟読したり…そういうことをしやすい。それが細部を大きな全体像に位置づけることを助け、ひいては理解を助けるのだ。

・デジタルで読むことのデメリット
 一方、デジタルで読む場合では、時間的・空間的な位置付けは全て概念的なものとなる。だから、細部を大きな全体像に位置づけにくい。
 また、デジタル画面を通して得る情報はデータ量が多くなりがちである。そんな膨大なデータの全ては処理しきれないため、現代人は、結果的に情報を読み飛ばす癖がついてしまっている。これが「デジタル読みモード」だ。
 著者の実験によれば、デジタルで読むことに慣れた場合、紙の本を読む場合でも「デジタル読みモード」で読んでしまいがちになり、かつてのような「深い読み」を行いにくくなってしまうという。
 また、幼少期に過剰にデジタルに触れることは、子供の注意力の低下を促すことがわかっている。

・デジタル時代の子育て(紙とデジタルの両立)
 しかし現代においてデジタルによる情報収集は不可欠だ。
 この本でも別にデジタルで読むことを否定しているわけではない。これからの子育てにおいて、紙とデジタルの両立を図ることを推奨している。
 0~2歳 まずは紙の絵本で読み聞かせをし、「読字脳」の下地をつくる。
 2~5歳 紙の絵本で読み聞かせを継続し、「デジタル読みモード」に設定される前に本を通して物語から得られる知見を伝える。デジタルは程々(2時間以内)
 5~10歳 この頃子供達は自分で読むことを覚え始める。ただし、これにはばらつきがあるので焦らずに。

・バイリテラシー脳を育てる
 著者は、媒体を問わず上手に読めることができる脳を育てることを理想をしている。
 結局、「デジタルで読むことのデメリット」は、「デジタル読みモード」の特性を何にでも当てはめる癖がついて、紙の本で読むときにも「デジタル読みモード」がにじみ出てしまうことがが問題なのだ。
 従って、「デジタルに適した脳回路」と、「紙の本で深く読むことに適した脳回路」と、を上手に切り替えるような脳回路(バイリテラシー脳)が形成されることが望ましい。
 イメージは、それぞれ異なる言語で話す両親に育てられ、2つの言語モードを瞬時に切り替えることのできるバイリンガルの子供である。

・その他 感想
 著者は、適切な時期に適切な教育(従来の読み書きに加えてプログラミングスキルなど)を実施することで、紙とデジタルの両方の脳回路を発達させて、バイリテラシー脳を形成する学習プロジェクトを推進している。
 つまり途中なのだ。だから、この本では、読者が気になるところであるバイリテラシー脳を育てる具体的な方法については示唆にとどまっている。
 一応、開発中のデジタルデバイスの教材の一例として、子供が画面の単語をタッチするとデバイスがそれを読み上げたり視覚イメージが浮かんだりするような、文字とインタラクティブに遊べるものが紹介されている。でも、こんなのって特に目新しいものでもないような気がする(こどもチャレンジとかでもありそう)。

 あと気になった点として、著者は最後のあたりで、バイリテラシー脳を持つ次世代に期待される特性について、”たとえば電子メールのためにはより速い「軽い読み」モードを使い、もっと深刻な素材のためには、おそらくたいていは文章をプリントアウトすることによって、深い読みモードを使うでしょう。”と言う。

 …えーなんか普通だな、これくらいみんなやってることでは?著者が期待するバイリテラシー脳の特性ってこんなもの?と思ってしまった。

しかしそれでも、この本が読書や読字脳の新たな知見と、そのための説得力のある裏付けに満ちた本であることに変わりはなく、読書家に、親に、教育者におすすめの一冊だと思う。
 

 

 

 


新型肺炎、2週間で重篤患者14人から59人…死者も急増=韓国

2020年03月14日 13時42分25秒 | 社会・文化・政治・経済

韓国内の新型コロナウイルスの感染者の中で、重症以上の患者が減らず、むしろ増えている状況である。特により急を要する重篤患者の増加幅は重症患者より大きく、これから死者の発生速度がはやくなるのではと憂慮されている。

今日(14日)韓国の中央防疫対策本部によると、韓国内の新型コロナの重症患者数は去る1日の13人から13日の32人まで、この2週間で146%増加した。この中で死亡の危険度の高い重篤患者数は同期間の14人から59人となり321%増加した。これは重症患者の増加幅の2倍以上急増したことになる。

重篤患者は、自力での呼吸が困難なため体外式膜型人工肺(ECMO)などの機械装置を使うほど状態がとてもよくない患者のことである。重症患者の場合、重篤患者より相対的に悪化していない状態で、酸素マスクをし、熱が38.5度以上の患者である。

重篤患者の増加幅が重症患者よりも大きいことをみると、死者が引き続き出る可能性が高いだろうと推測される。

韓国内の一日毎の死者数は、午前0時基準で去る2日の22人から13日の67人まで204.5%増加した。患者が増加しながら死者数も比例して増加している状況である。

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