とねり日記

とりことや舎人(とねり)の
どげんかせんとの日々

赤き蛇捕らえて乙女走り来る

2017年09月27日 | 田んぼ・野良仕事
お彼岸の中日の23日、かのちゃんがやってきた。お父さんとお母さんに連れられて。

午前中は鶏小屋掃除。私一人でやるときは2時間かかるが、一家3人で1時間ちょっとできれいにしてくれた。


午後からは田んぼ仕事。
かのちゃんとお母さんは稲藁を切って田んぼに戻す仕事。


お父さんは私と一緒にタツを作る。
タツというのは稲を干す複数段組みの高い稲木(いなぎ)のこと。
これに対し、三脚を組んで長木(ながき=稲を掛ける長い丸太)を渡していく1段の稲木をウマという(前回のブログの写真参照)。
私は、稲を干した姿はウマの方が美しいと感じるのだが、丸太を組んで立ち上がった姿はタツの方がカッコいいと思う。


今回は6メートルの長木3本を4段に組み上げる。
お父さんに掛合(かけや=杭を打つ巨大な木槌)で、一直線上の7カ所に等間隔で太い短い杭を打ち、打った杭を抜き、そこに空いた穴に長さ4メートルの杭を立てていくように指示。お父さんにとっては初めての作業で「どんなものができるのか想像もできない」と苦笑しながら(当然ですね)、言われた作業をきちんとやってくれる。
午前の鶏小屋掃除と同様、飲み込みが早い。間に合う(丹波弁で「役に立つ」)なあ。

サクサク作業をしていると、かのちゃんが向こうの田んぼからやってきた。
「かの、そこの長い縄、取って」
お父さんに向かって藁縄を放り上げるかのちゃん。


お手伝いをしながら、バッタや蛙を見つけると…
体が反応してしまうようだ。捕まえずにいられない。


広い圃場全体を走り回るかのちゃん。
しばらくして、息を弾ませながらすごいものを持ってきた。


ズームアップすると…どうやらヤマカガシの子ども(よい子はけっしてまねをしないでくださいね)。


ゴクリと息を飲む。
「あのね、かのちゃん。ヤマカガシはおとなしくて滅多に人を噛むことはないけど、毒があるんだよ。放してあげようね」
残念そうに放すが、蛇行しながら去って行こうとする蛇を見ていると、またたまらなくなって首根っこを押さえて捕まえ持ち上げ、お父さんを振り返り「お父さんつかめる?」と聞く。
お父さん、言葉が出ない。
「そんなのつかめてもあまり自慢にならないかもよ」とお父さんをフォローする私。
ヤマカガシは少なくとも私の子ども時代(1970年以前)には毒蛇とは認識されていなかったと思う。
でも実際はマムシより強い毒を持っていると、ずいぶん後になって知った。かのちゃんのお母さんによると、ひと月ほど前、隣町の小学生が鞄に入れて持ち歩いていて、鞄に突っ込んだ手を何度か噛まれて意識不明の重体になったのだそうだ。そこまでされればヤマカガシも噛むだろうが、私は子ども時代から今までヤマカガシに噛まれたという話は寡聞にして知らなかった。それほどおとなしい蛇なんですよ(でも、よい子は素手で捕まえたりしないでね)。

その日の夜、ネットで「ヤマカガシ」を検索してみた。
漢字では「赤楝蛇」または「山楝蛇」と書くそうだ。「楝蛇=かがち(かがし)」というのは蛇を意味する古語・地方語だそうだ。赤い蛇、山の蛇ということなんだね。
幼体では首のまわりの黄色いリボンが鮮やかなんだそうだ。
そして、こんな俳句に出会った。
「生家なる生まれ生まれの赤き蛇」(細見綾子)
作者は1907年、兵庫県氷上郡芦田村(現・兵庫県丹波市青垣町)に生まれ、柏原高等女学校、日本女子大学に学んだそうだ。氷上(ひかみ)、丹波市、青垣町、柏原(かいばら)…、馴染み深い地名が並ぶ。

話がそれたが、今回のブログのタイトル。
当初「赤楝蛇(ヤマカガシ)捕らえて乙女走り来る」としていたのだが、細見さんの句から「赤き蛇」を拝借しました。

というわけで、かのちゃんが走り回るなか、4段のタツが完成。
数日後にはイセヒカリが掛かる。
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2 コメント

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Unknown (S)
2017-09-27 20:31:53
今回もお世話になりました。
乙女は走り回っている間、常に掌に何かを捕らえて走っておりました。
とりことさんの四季をほぼ一巡しましたが、行く度に楽しいことが増えてどんどんワイルドになっていく気がします。
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Unknown (とねり)
2017-09-28 18:28:43
「幼年時代が楽しいものであれば、その残照は一生消えない。その逆の場合は苦しい不快感が生涯後をひく」
正確には覚えていないのですが、発達心理学者の言葉だったと思います。とりこと舎で過ごした日々がかのちゃんの一生消えない残照になれば、と思います。
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