前回のタイトルは「手押し除草機」だったが、タイトルと中身が大きくかけ離れてしまった。すみませんでした。実は下の写真もアップして、「みなさ~ん、わが舎に草取りにきませんか~、汗流したあとのビールは最高だよ~、メシもうまいよ~」と呼びかけるつもりだったのだが、バタバタと文章を書いているうちに忘れてしまった。
向かって左から3つめまでがレギュラータイプの除草機、4つめが芽が出たばかりの小さな草を取る除草機、一番右は株間など狭いところの草を取る除草機。全部もらい物。わが舎の働き手は2人、除草機は5台。3台余ってますので、よろしく。
近所の農家の物置にはこんな道具がたくさん眠っている。こういう道具を押して田んぼの中を歩いていると、通りがかりの生涯現役のじいちゃんばあちゃんたちが「ようきばらはる」などと言って目を細めて話しかけてくる。昔の自分たちの苦労を思い出すのかなあ。こっちは半分、意地でやっているだけなんだが…。
さて、また前回の続きです。舎長からは「小難しい話は3回に1回くらいにして」と注文がついているのだが、日本の農業問題が私を熱くする。我慢しておつきあいください。
前回、ドイツ農業の粗放化政策について書いたが、そのマネごとのような施策が昨年度から実施された「環境保全型農業直接支援対策」。ただ、マネごとであっても、これが実施されたことを私は歓迎する。
具体的にどういう「支援」かというと、有機農業等をおこなっている者で、農法等で一定の基準を満たしていれば、農地1反につき年8000円の現金を支給する。たった8000円だけども、「りんごの味を知りたいなら実際に自分の手でりんごをもぎ取って食べなければならない」という毛沢東の言葉を胸に、7月2日、単身市役所に出向き、環境保全型農業に対する支援金の申請をおこなった。申請締め切りの最終日だったが、南丹市農林商工部農政課農政係の若いM君をはじめ職員の皆さんがてきぱきと処理してくれた。嬉しかった。
突然話が横道にそれるが、すこし前のブログで山下惣一さんの『減反神社』という本のことを書いた。雑誌の書評で紹介されたこの本を読みたいと思って、最初、南丹市立図書館の蔵書をパソコンで検索してみた。
南丹市は2006年1月、美山町、日吉町、園部町、八木町の4町が合併して誕生した。したがって市立図書館は、旧4町ごとに1館ずつの計4館あるが、このうちのどこにも『減反神社』はなかった。
山下氏は『減反神社』のあとがきにこう書いている。
「農民や漁民を描いた小説が現代にはあまりにも少ない……『この国には定住者の文学はない』といった誰かの言葉がいまも耳に残っている。……定住者の最たるものは全国津々浦々の百姓であろう。彼らの日常や生きざまはもはや文学たりえないのだろうかとわたしはときどき考えこむことがある。わたし自身村に生まれ農を業とする定住者のひとりとして、また多少なりとも文学に関心を寄せるもののひとりとしてそんなことを思い続けてきた」
定住民が定住民を描いたこの代表作がこの農山村地帯に4館もある図書館に1冊もないのだ。この作品は1979年「地上文学賞」を受賞し、直木賞候補作にもなった。落選したのは直木賞の選考委員がこの作品の意義を十分把握できなかったためだろう。それほどのもんだと私は思った。収録作中の「残りの海」などは30年余を経て今に直結する傑作だ。だから市立図書館にないのが残念だった。ついでに言わせてもらうと、市立図書館4館には月刊『現代農業』もおいてない。百姓にとってとても役立つ雑誌なのにね。『オレンジページ』だとか『レタスクラブ』はあるのにね。『チルチンびと』なんてどうでもいいんだよ。『BE-PAL』もいいけど、それより『現代農業』だろ。そんなこんなで、あんたらいったいどこを向いて仕事をしているんだよ、ちゃんと定住民と向き合えよ、という怒りを公的機関に対して抱いていた矢先だった。
それで、農政課M君の「こっちを向いている」仕事ぶりがすこし嬉しかったわけだ。
さて、ドキドキしながらも無事に申請をすませたが、支給額は1反あたり年間8000円(うち国4000円、府2000円、市2000円負担)と「雀の涙」程度。支給の対象となる取り組みだが、これがまたザックリなんだなあ。支給対象となるのは(1)カバークロップ(+化学肥料・農薬5割低減)、(2)リビングマルチ(+同)、(3)草生栽培(+同)、(4)冬期湛水(+同)、(5)有機農業の5種類だけ。
例えば(1)のカバークロップだが、刈り取り後の田んぼにレンゲの種を播いて緑肥にし、かつ化学肥料・農薬を慣行農法の半分以下にするというもの。この「慣行農法の」というのがミソで、各都道府県が定めている化学肥料・農薬施要量の慣行レベルが基準になるのだが、このレベルがかなりゆるいから、半分に減らしても、かなりの量の殺虫剤、除草剤、化学肥料を使うことができる。
以上を要するに、ハードルが低く給付もわずか、一生懸命頑張ってもゆるくても同じ扱い、ザックリかつ雀の涙、ということ。これじゃあ、どちらにしても、あまりやる気が起きないのではないかな。
ドイツのそれが、50項目におよぶ取り組みをポイント制できめ細かく評価し、高いレベルの取り組みには高い給付を、ゆるい取り組みにはゆるい給付をとメリハリつけ、しかも複数の取り組みを重ねればポイントが累積されて給付が増えるようにして実効性を高めているのと大きな隔たりがある。本気なんだね、あちらは。
昨年の福島原発事故以前の経産省の電力政策、すなわち自然エネルギー発電等に対する申し訳程度の支援策と似ているよね。たぶん、農水省は、脱農薬、脱化学肥料、脱過剰な機械化、脱コンクリート化等々に本腰を入れて取り組むつもりは無いと私は見ている。こんな程度では実効が上がらないのは火を見るより明らか。むしろ実効が上がったら困るんだろう。まあアリバイづくりだな。「やってますよ」と。でも、初めて日本の農政が粗放農業への直接所得保障へ踏み切ったことはもっと注目されてよいとは思っています。
この小さな蟻の一穴をみんなの力でこじ開けていけば、この谷筋にも活気が満ちていくだろう。
今後とも関心を持ちつつ、私自身も勉強していきたい。
向かって左から3つめまでがレギュラータイプの除草機、4つめが芽が出たばかりの小さな草を取る除草機、一番右は株間など狭いところの草を取る除草機。全部もらい物。わが舎の働き手は2人、除草機は5台。3台余ってますので、よろしく。
近所の農家の物置にはこんな道具がたくさん眠っている。こういう道具を押して田んぼの中を歩いていると、通りがかりの生涯現役のじいちゃんばあちゃんたちが「ようきばらはる」などと言って目を細めて話しかけてくる。昔の自分たちの苦労を思い出すのかなあ。こっちは半分、意地でやっているだけなんだが…。
さて、また前回の続きです。舎長からは「小難しい話は3回に1回くらいにして」と注文がついているのだが、日本の農業問題が私を熱くする。我慢しておつきあいください。
前回、ドイツ農業の粗放化政策について書いたが、そのマネごとのような施策が昨年度から実施された「環境保全型農業直接支援対策」。ただ、マネごとであっても、これが実施されたことを私は歓迎する。
具体的にどういう「支援」かというと、有機農業等をおこなっている者で、農法等で一定の基準を満たしていれば、農地1反につき年8000円の現金を支給する。たった8000円だけども、「りんごの味を知りたいなら実際に自分の手でりんごをもぎ取って食べなければならない」という毛沢東の言葉を胸に、7月2日、単身市役所に出向き、環境保全型農業に対する支援金の申請をおこなった。申請締め切りの最終日だったが、南丹市農林商工部農政課農政係の若いM君をはじめ職員の皆さんがてきぱきと処理してくれた。嬉しかった。
突然話が横道にそれるが、すこし前のブログで山下惣一さんの『減反神社』という本のことを書いた。雑誌の書評で紹介されたこの本を読みたいと思って、最初、南丹市立図書館の蔵書をパソコンで検索してみた。
南丹市は2006年1月、美山町、日吉町、園部町、八木町の4町が合併して誕生した。したがって市立図書館は、旧4町ごとに1館ずつの計4館あるが、このうちのどこにも『減反神社』はなかった。
山下氏は『減反神社』のあとがきにこう書いている。
「農民や漁民を描いた小説が現代にはあまりにも少ない……『この国には定住者の文学はない』といった誰かの言葉がいまも耳に残っている。……定住者の最たるものは全国津々浦々の百姓であろう。彼らの日常や生きざまはもはや文学たりえないのだろうかとわたしはときどき考えこむことがある。わたし自身村に生まれ農を業とする定住者のひとりとして、また多少なりとも文学に関心を寄せるもののひとりとしてそんなことを思い続けてきた」
定住民が定住民を描いたこの代表作がこの農山村地帯に4館もある図書館に1冊もないのだ。この作品は1979年「地上文学賞」を受賞し、直木賞候補作にもなった。落選したのは直木賞の選考委員がこの作品の意義を十分把握できなかったためだろう。それほどのもんだと私は思った。収録作中の「残りの海」などは30年余を経て今に直結する傑作だ。だから市立図書館にないのが残念だった。ついでに言わせてもらうと、市立図書館4館には月刊『現代農業』もおいてない。百姓にとってとても役立つ雑誌なのにね。『オレンジページ』だとか『レタスクラブ』はあるのにね。『チルチンびと』なんてどうでもいいんだよ。『BE-PAL』もいいけど、それより『現代農業』だろ。そんなこんなで、あんたらいったいどこを向いて仕事をしているんだよ、ちゃんと定住民と向き合えよ、という怒りを公的機関に対して抱いていた矢先だった。
それで、農政課M君の「こっちを向いている」仕事ぶりがすこし嬉しかったわけだ。
さて、ドキドキしながらも無事に申請をすませたが、支給額は1反あたり年間8000円(うち国4000円、府2000円、市2000円負担)と「雀の涙」程度。支給の対象となる取り組みだが、これがまたザックリなんだなあ。支給対象となるのは(1)カバークロップ(+化学肥料・農薬5割低減)、(2)リビングマルチ(+同)、(3)草生栽培(+同)、(4)冬期湛水(+同)、(5)有機農業の5種類だけ。
例えば(1)のカバークロップだが、刈り取り後の田んぼにレンゲの種を播いて緑肥にし、かつ化学肥料・農薬を慣行農法の半分以下にするというもの。この「慣行農法の」というのがミソで、各都道府県が定めている化学肥料・農薬施要量の慣行レベルが基準になるのだが、このレベルがかなりゆるいから、半分に減らしても、かなりの量の殺虫剤、除草剤、化学肥料を使うことができる。
以上を要するに、ハードルが低く給付もわずか、一生懸命頑張ってもゆるくても同じ扱い、ザックリかつ雀の涙、ということ。これじゃあ、どちらにしても、あまりやる気が起きないのではないかな。
ドイツのそれが、50項目におよぶ取り組みをポイント制できめ細かく評価し、高いレベルの取り組みには高い給付を、ゆるい取り組みにはゆるい給付をとメリハリつけ、しかも複数の取り組みを重ねればポイントが累積されて給付が増えるようにして実効性を高めているのと大きな隔たりがある。本気なんだね、あちらは。
昨年の福島原発事故以前の経産省の電力政策、すなわち自然エネルギー発電等に対する申し訳程度の支援策と似ているよね。たぶん、農水省は、脱農薬、脱化学肥料、脱過剰な機械化、脱コンクリート化等々に本腰を入れて取り組むつもりは無いと私は見ている。こんな程度では実効が上がらないのは火を見るより明らか。むしろ実効が上がったら困るんだろう。まあアリバイづくりだな。「やってますよ」と。でも、初めて日本の農政が粗放農業への直接所得保障へ踏み切ったことはもっと注目されてよいとは思っています。
この小さな蟻の一穴をみんなの力でこじ開けていけば、この谷筋にも活気が満ちていくだろう。
今後とも関心を持ちつつ、私自身も勉強していきたい。