アロマテラピー学習ブログ

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参照。

精油が働く仕組み

2008-01-24 06:36:12 | メカニズムと健康的なライフスタイル
5つの感覚
 光や音、熱などを感じ取る視覚・聴覚・触覚は物理的な感覚、味覚や嗅覚は化学的な感覚と呼ぶ。
 動物は高等になるにつれ、視覚や聴覚から外部情報を取り入れることが多くなっているが、嗅覚は生命維持に重要な役割を担っている。例えば有毒ガスの見地や餌の獲得、また生まれて間もない赤ちゃんでさえ、においで八は親を探し当てるなど、生死にかかわる重要な役割を果たしている。
 私たちが何かにおいを嗅いだとき、それが何かを認識する前に、そのにおいが好きか嫌いか、あるいは快いか不快かという反応が先にくる。またあるにおいが、そのにおいに関連した記憶をふと呼び覚ますこともある。

脳の仕組みと働き
 中枢神経系…末梢からの刺激を受け入れ、これに対応する中心的な役割を担う部分。(脳・脊髄)
 末梢神経系…中枢神経系と身体の各部(末梢)を連絡する神経。(脳神経・脊髄神経、自律神経系)

 大脳
 大脳は、左右2つの半球に分けられ、暑さ2~3mmの薄さの皮質(灰白質)が、内部の髄質(白質)を覆っている。この白質の中に神経細胞の集まりである大脳核が包み込まれている。
 大脳皮質は新しい皮質(新皮質)と古い皮質(古皮質・旧皮質)に分けられる。
 特に人間や霊長類では古皮質・旧皮質は大きく発達した新皮質に包み込まれ表面からは見えない。新皮質は論理的な思考をしたり、判断をしたり、言葉を話したりなどの高度の知能活動を営む場となっている。そして、古皮質・旧皮質は大脳核とともに大脳辺縁系という機能単位を形成し、食欲や性欲などの本能活動や情動、記憶の中枢となっている。

 脳幹
 大脳半球と脊髄を結ぶ、間脳(視床、視床下部、下垂体)、中脳、橋、延髄のことをさす。
 間脳の視床は、脊髄・間脳を通ってきた感覚情報を大脳皮質の中枢感覚野へ送り込む役割を果たす。
 間脳の視床下部は、自律神経をコントロールする働きを持ち、体温調節、摂食や水分摂取、性行動などの本能行動の調節や内分泌系(ホルモン)の調節を行う部分。
 中脳は、視覚・聴覚情報の中継地点。
 橋は、大脳と小脳の情報を中継する機能を持つ。
 延髄には、心拍、血圧、呼吸、嚥下、咳、くしゃみ、平衡など生命維持にとって重要な中枢がある。

 小脳
 身体運動のバランスを保つ中枢。

 大脳辺縁系とアロマテラピー
 大脳辺縁系は、大脳半球の内側面で、古皮質や旧皮質が間脳や脳梁を環状に取り囲み、これらの部分を縁取っている。嗅球、嗅索、扁桃体、海馬などが含まれる。
 大脳辺縁系は、固体の生命維持と種族保存に関する重要な中枢で、視床下部と関連しながら自律神経系や内分泌機能を調節したり本能行動を制御している。
 また大脳辺縁系は、感情や欲求などの情動に関与することから、情動脳とも呼ばれる。特に、扁桃体は外部からの刺激に対して反応し、快・不快・恐怖と言った情動反応を起こす部位と考えられている。記憶の中枢も大脳辺縁系の海馬にあり、生まれてから体験・学習して獲得した記憶を貯蔵している。嗅覚は古皮質で処理されるため原始的な感覚といわれている。
 心地よい香りは、大脳辺縁系に働きかけ、楽しく心地よい記憶を引き出したり、自律神経系を整えたりして、私たちをリラックスさせ、ストレスに負けない心や身体を作ってくれる。このようにアロマテラピーは、機能単位である大脳辺縁系の特徴を有効に活用して行える癒しの方法である。

精油が働く経路
 精油が作用する経路は大きく分けて4つあり、一つは嗅覚として神経系へ刺激が伝わるもの、そのほかの3つのルートは精油成分が皮膚や粘膜を介して血液に入り全身をめぐるものである。

嗅覚から神経系へ伝わる経路
 嗅覚の伝達
 あるにおい物質を嗅ぎ、その揮発成分が鼻の奥の上部にある嗅上皮の粘膜に付着し、そこで嗅細胞が出している毛(嗅毛)にキャッチされると、それが嗅神経細胞の興奮となって神経線維を電気的インパルスが伝わっていき脳の中に入る。嗅神経線維を伝わるインパルスは嗅球、嗅索を経て大脳辺縁系といわれる脳の領域に到達する。

 嗅覚の特殊性
 嗅覚は人間の五感の中でも特殊な感覚と言われている。嗅覚は生物の進化において視覚や聴覚などと比べ早期に発達した「原始的」な感覚で、食べ物の良し悪しの判断や生殖などに深く関わっている。
 また嗅覚の伝達経路の特徴として、嗅覚刺激が大脳辺縁系に直接的に伝えられ身体の調節に「直接的」に関わる特殊な感覚でもある。つまり視覚や聴覚は大脳新皮質にある刺激を受け入れる一次中枢(視覚野・聴覚野など)で認識された後に大脳辺縁系に伝わるが、嗅覚の場合は刺激を受け入れる一次中枢が大脳辺縁系にあり、大脳辺縁系に先に受け入れられた後に大脳新皮質で認識されるため、大脳新皮質の認識を待たずに「直接的」に身体調節に関わるのである。

 嗅覚とアロマテラピー
 アロマテラピーでは、精油成分が嗅覚を通じて大脳辺縁系から視床下部に伝えられ、気持ちが落ち着いたり、元気になったり、また悲しみに耐えられるようになったりという心理的効果が得らる。
 過度なストレスは、月経周期の異常、胃潰瘍、頭痛、喘息など身体に現われるものだけでなく、精神状態に問題を起こすこともあり、そのような症状の緩和にとても役に立ち、精神安定剤のような副作用の心配も無く、心と身体のバランスを取り戻すのに大きな助けとなる。
 精油の成分は、脳の神経細胞から出されるいろいろな神経伝達物質の放出に関わっていると考えられている。さらに、におい物質の中には免疫を高める作用があることもわかってきた。リラックスを求めて好きな香りを嗅ぐことは心理的効果ばかりではなく、免疫力を高め、ストレスに絶えうる身体をつくるためによいといわれている。

血液から全身へ伝わる3つの経路
 精油が体内に取り込まれるほかの3つの経路は、血液を介して全身に行き渡る血液循環によるものである。
 精油を入れたトリートメントオイルを皮膚に塗ると、表皮から吸収され、真皮にある血管やリンパ管に入る。また鼻から吸い込んだ精油成分はわずかながら鼻腔粘膜から血液に吸収される可能性もある。さらに呼吸をしたとき肺に入り込んだ精油成分も、肺胞と言う酸素と二酸化炭素の交換をする器官の粘膜から血液に入る。さらにもう一つは飲むことによる消化器官から入る経路である。
 このように精油成分は一旦血液中に取り込まれてから体内をめぐり、いろいろな組織に影響を与える。そして最終的に精油成分は肝臓で分解され、分解された物のほとんどが腎臓で濾過され、尿中へと排出される。そのほかにも汗や、呼気の中や便の中にも排泄されていく。

 皮膚から
 皮膚の表皮を覆う皮脂膜や角質層のバリアゾーンがあるため、皮膚は簡単に物質を通過させないが、精油は小さな分子構造をしている上、新油性であるためこれらを容易に通過する。
 ラベンダー精油を入れたトリートメントオイルを皮膚に塗ると、5分以内にラベンダー精油中のリナロールと酢酸リナロールと酢酸リナリルが血液の中に検出されて、20分後に最高値となり90分以内にその大部分が血液中から消失した。
 精油を皮膚から吸収させる方法の優れた点は、消化器系を介さないため、胃などに障害を起こす恐れがないことである。皮膚に精油を適用する場合には必ず植物油などに1%以下に希釈してから用いること、初めての使用には事前に皮膚に刺激が無いかどうかのパッチテストを行うこと。

 吸入によって
 精油の香りを嗅ぐと、精油成分はわずかながら鼻粘膜から吸収され、血液に入るものもある。さらに精油成分が呼気とともに気管支から肺に入ると、精油の種類によっては痰を切り、咳を鎮めるなどの局部での効果が得られる。一部の精油分子は、肺の一番奥にある肺胞の薄い膜を透過して血液中に入り体内を循環する。

 消化管から
 精油は内服すると消化管粘膜から吸収され、血液循環を経て肝臓に至り代謝分解される。他の方法と異なり、内服した精油はすべてが吸収されるため、続けて行うと肝臓に蓄積し毒性を発現する恐れがある。また消化管粘膜に対する刺激も予想される。もう一つ憂慮しなければならないのは、謝って飲んでしまうケースである。今までに述べた3つの経路に比べ、大量の精油成分が吸収される可能性があるので特に注意が必要。

精油成分による薬理作用
 精油は、一つの成分で構成されるのではなく、数多くの有機化合物の集まりであるため一つの精油に色々な作用がある。これらの物質は植物が作り出したものだが、植物により構成成分の種類や割合が異なる。このため精油はそれぞれ個性のある香りと異なる性質を持つ。
 精油の構成成分の一部には、薬と同じような働きをするものがあり、今日利用されている薬の成分でもあるが、現在では合成されている成分でももともとは植物から発見された物が多い。

 殺菌作用・抗菌作用・抗ウイルス作用
 ラベンダー精油などに含まれるリナロール、ペパーミント精油などに含まれるメントール、レモングラス精油などに含まれるシトラールなどの成分にみられる作用。この効果を利用して、ルームスプレーを作って室内の洗浄などに利用できる。

 鎮痛作用
 ラベンダー精油などに含まれる酢酸リナリル、ゼラニウム精油などに含まれるゲラニオールなどの成分にみられる作用。

 鎮静作用
 ラベンダー精油に含まれる酢酸リナリルやカモミール・ローマン精油に含まれるアンゲリカ酸エステルなどには鎮静作用がみられる。

 消化・食欲増進作用
 一般に柑橘系精油には、食欲を増進する効果がある。これは柑橘系精油に多く見られるリモネンの働きと言われている。

 ホルモン調節作用
 精油の中にはホルモンの分泌を調節する作用を持つものがある。この作用には2つのルートがあり、一つは嗅覚刺激による視床下部・下垂体系の調節、もう一つは精油成分とホルモンの構造が似ていることによる作用である。この代表例として、クラリセージに含まれているスクラレオールがある。

 去痰作用
 ユーカリ精油などに含まれる1,8-シネオールには痰を切る作用がある。またローズマリー精油などに含まれるカンファーにも同様の効果が見られる。1,8-シネオールやカンファーは刺激の強い成分なので使用量や濃度には十分注意。

 精油のもつ有益な薬理作用には、他にも、鎮痙作用、利尿作用、免疫賦活作用、駆風作用(腸内のガスを出す作用)などがある。

精油成分によるマイナス作用
 精油は使用法を誤ると害になることもあり、これを未然に防ぐには精油の使用方法について正しい知識を持ち、それを守ることが大切である。

 皮膚刺激・粘膜刺激
 精油の中には皮膚や粘膜を刺激する物があり、かぶれや荒れの原因となる場合がある。皮膚などにつけるときは濃度や滴数に注意。

 光毒性について
 精油成分の一部には皮膚に塗布した状態で、日光などの強い紫外線と反応することによって、皮膚に炎症を起こすなどの毒性を示す物があり、これを光毒性と呼ぶ。
 光毒性のあるものとして知られている成分の代表的な物に、ベルガプテン(5-メトキシソラーレン)などがある。これはベルガモットをはじめとする柑橘系の精油に含まれる成分である。
 ベルガモット精油、レモン精油、グレープフルーツ精油を外出前や外出中に使用するときは十分注意が必要。

 感作
 感作とは、免疫機構に基づく反応のことである。人にとっては精油中の一部の成分にアレルギーを持つことがある。
 


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