アロマテラピー学習ブログ

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参照。

ストレスや疲労に負けない健康学~2~

2008-01-25 11:52:37 | メカニズムと健康的なライフスタイル
生活習慣病とその予防
 高度成長期頃から増加し始めた、いわゆる成人病は当時中高年以上の、加齢化に伴う疾病だったが、近年若年層にも見られるようになったため、その名を生活習慣病と改められた。日本人の主な死亡原因は、がん、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心病など)、脳卒中で占められている。これらの重大な死亡原因疾病の引き金になるのが生活習慣病である。
 高血圧、高脂血症、動脈硬化症、糖尿病、痛風などのいずれの病気も初期段階では痛みなどの特別な症状が無いため見逃しやすく、合併症が心臓や腎臓、脳などに現れて生命に関わるような症状になって、初めてその重大さに気づくことがしばしば見られる。高血圧は一名サイレントキラー(物言わぬ殺し屋)とも呼ばれている。
 高血圧、動脈硬化、高脂血症
 体の隅々まで酸素や栄養を送っているのは血管であり、その中を通る血液循環は心臓のポンプ作用で適度な圧力が与えられている。これを血圧と言う。
 心臓が収縮して動脈に血液が送り出されたときの血圧を収縮期血圧、心臓が拡張して血液の送り出しが止まったときの血圧を拡張期血圧という。
 
健康な成人での血圧
 収縮期血圧 130mmHg未満
 拡張期血圧  85mmHg未満
高血圧の基準(WHO=世界保健機関の基準値)
 収縮期血圧 140mmHg以上
 拡張期血圧  90mmHg以上

 血圧は一日中一定と言うことは無く日内変動しており、朝早くから上昇し始め、日中は高めに、夜は低くなると言うリズムを持っている。高血圧の人の日内変動は常時圧力が高いなりに変動しており、いつも心臓や脳血管などに負担がかかる状態が続いて、動脈硬化が促進してしまうのである。高血圧症の約90%は原因が不明の本態性高血圧だが、生活習慣とかかわりが深いと言うことが判っている。

 動脈硬化は心臓から血液を運ぶ動脈が硬く、弾力がなくなってしまい血管の壁の内腔が、肥厚して狭くなったり、詰まったりしてしまう状態のことを言う。動脈の硬化は子供の頃から始まっており加齢に従って進行し、中年期以降に症状が現れてくる。しかし、それまでの生活の質により症状の進み方が違い、早期に老化現象が現れる人もあれば、80歳を過ぎても若々しい動脈の人もいる。老化の土台にあるのは動脈硬化なのである。動脈硬化がさらに進むと、心臓や脳の血管が完全に詰まってしまい、栄養や酸素を送ることができなくなると、その先の細胞が死んでしまう。心臓の場合は心筋梗塞、脳であれば脳梗塞を起こして死亡することもある。
 高血圧と高脂血症があると動脈硬化は一層悪化する。一般に動脈硬化は、比較的太い動脈の血管壁に血液中の脂肪が沈着して石灰化し、血管の内膜が厚くなってしまう状態である。動脈硬化は食生活が欧米化して糖質や動物性タンパク質を多く摂ることによって、血液中にコレステロールや中性脂肪が過剰な状態(高脂血症)になることにより引き起こされる。

善玉コレステロールと悪玉コレステロール
 コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)などの脂質は、リポタンパクという形で体内を運搬されている。この脂質を運ぶリポタンパクにはHDL(高比重リポタンパク)、LDL(低比重リポタンパク)などがある。動脈硬化の原因となるコレステロールを全身組織に運ぶのが悪玉コレステロールと呼ばれるLDL、逆に体内に溜まったコレステロールを肝臓に戻してくれるのが善玉コレステロールと呼ばれるHDLである。

 糖尿病と痛風
 糖尿病患者は現在600万人以上と言われ、食生活が豊かになったことによって急増した生活習慣病である。食事で摂取された栄養分は、血液を介し身体の組織に送られたインスリンにより細胞に取り込まれエネルギーとして利用される。血糖値を下げる働きをするインスリンと血糖値を上げる働きをする各種ホルモン(グルカゴンなど)のバランスによって血糖値を一定にしている。
 何らかの理由で糖質の利用がうまくいかずに、血中の糖の量(血糖値)が増えてしまう病気を糖尿病と言う。血中の糖は腎臓で濾過されても再吸収されるため、普通は尿に出ないが、血糖値が高すぎる場合、再吸収できずに尿に糖が出てしまう。血糖値が高いと糖尿が出ることから糖尿病と名づけられた。
 糖尿病は、それを引き起こす原因によって1型と2型に分けられる。1型は若年性糖尿病とも呼ばれ、生活習慣とは無関係で、病気や遺伝的な体質によってインスリンが十分に分泌されないことが原因である。2型はカロリーオーバーの食生活などが原因で血糖値が高くなり、インスリンの分泌が追いつかなくなることや肥満によりインスリンの作用を阻害する物質ができることが原因である。日本人の糖尿病患者の9割は2型である。糖尿病が慢性化すると、網膜症(失明することもある)、腎障害、神経障害、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、壊疽、などの恐ろしい合併症を引き起こすことになる。
 痛風も食生活と因果関係が深い病気である。中高年の男性に比較的起こりやすい病気である。食品の中にプリン体という物質を多く含むものがある。このプリン体は体内の肝臓や骨髄や筋肉の中などで尿酸と言うものに分解される。健康な人では腎臓で尿酸が濾過され尿に排出されるが、中にはうまく排出できずに、尿酸が過剰に生産されて、血中に異常に尿酸が残ってしまう人がいる。そして尿酸が足指の付け根の関節などに結晶化し、沈着、炎症を起こし、こぶができ腫れ上がって激しく痛むようになるのが痛風である。「風が吹いても痛い」と言う例えから痛風と呼ばれる。プリン体を多く含む食品は、レバーなどの臓物、肉、魚、玉葱、ほうれん草、ビールなどがある。高尿酸血症であっても早期には症状が出ないことが多く、暴飲暴食、寒冷、運動などをきっかけに突然足指の付け根に激しい痛みを発現させる。慢性化すると腎臓や血管系へも重大な合併症を引き起こしていく。かつて痛風は「贅沢病」と言われていたが、食生活が豊かになった現在では誰にでも起こりうる病気である。

女性の一生と健康
 色々なホルモン分泌は脳の奥深くにある下垂体という器官からの命令によって支配されていて、私たちの身体の機能調節を司っている。またこのホルモン分泌はストレスや心の変化にとても敏感に影響しやすく多くの女性は生理の前の1週間ないし10日間くらいに体液の滞留、便秘、乳首の痛み、頭痛のような身体に現れる症状のほか、心理的にもイライラしたり、うつ状態や落ち込みのような症状を経験することがある。これは月経前緊張症(PMS)といわれるもので、ホルモンバランスの乱れによるものと考えられる。この症状はさらにストレスや食生活の乱れによって悪化を招くことが知られている。
 女性が40代後半に近づくと月経が次第に遠ざかり、更年期を迎える。この頃にさまざまな症状、例えば神経不安定、イライラ、のぼせ、動悸、めまい、頭痛、肩こりなどが現れることがある。いわゆる更年期障害といわれるものである。更年期を迎えてもこのような不快な症状を全く経験しないか、ほとんど気にならないで乗り切る人がいる一方で、これらの症状のため生活に大きな支障を生じる人も多い。この原因も更年期になると卵巣機能が次第に衰え、ホルモン分泌が非常に少なくなることによるものである。
 卵巣ホルモン(エストロゲン)の作用は全身に広く作用し、骨へのカルシウムの取り込みを助けて骨を強くしたり、血中コレステロールの増加を防ぎ動脈硬化を抑制したり皮膚や粘膜のコラーゲン産生を促進して刺激に強くなったりと、その作用はまさに女性を守る大切な働きをしているのである。しかし閉経後エストロゲンの分泌量低下に伴って、それらの大切な働きも衰えてくることから加齢に従って骨粗鬆症や動脈硬化、高脂血症などの問題が起きやすくなっている。このような卵巣機能の低下による生理的現象が長い閉経後の人生を苦しめることにならないように、若い頃から日常生活に留意し、特にカルシウムの摂取を心がけるとともに、動物性脂肪の摂り過ぎに注意し、また適度な運動を心がけることが大切である。

心のストレスと健康
 現代社会はストレスが多い環境を作り上げ、それによって人々の健康に多くの問題を引き起こす。環境変化、人間関係、社会不安などが原因となって心に不安や怒りあるいは悲しみや憂鬱のような精神状態が現れ、このような状態がいつまでも続くと、心ばかりが身体の機能にも異常をきたすようになる。このような生理反応をストレスと呼び、その原因となるものをストレッサー(ストレス源)と呼んでいるが、ストレッサーの種類に関わらず、ストレス反応は一連の生理反応を起こすのである。
 アロマテラピーは精油が嗅覚を介して精神に働きかけ高ぶった感情やあるいは抑うつ状態の感情を正常に戻す役割をするとともに、触れ合う効果によって、「誰かに支えられている」と言う安心感がさらに加わりストレス状態から立ち直るエネルギーを与えてくれるのである。                     

ストレスや疲労に負けない健康学~1~

2008-01-24 17:38:32 | メカニズムと健康的なライフスタイル
 どのようなときでも私たちの身体の中では、常にバランスを保とうとする仕組みが働いている。私たちは軽い症状であれば自然に治癒する力を持っている。このバランスを保とうとしている仕組みを恒常性(ホメオスターシス)といい、これを体内でコントロールしているのが脳の中心に位置する視床下部と言う部分である。視床下部は体内のいろいろな情報を取り入れ、恒常性を保つよう指令を出している。2つの拮抗的(互いに相反する)な作用を持つ自律神経系である交感神経と副交感神経の働きにより調節されている。しかし、ストレスに負け、この2つの神経系のバランスが崩れると自律神経の失調と言う状態になってしまう。また、視床下部には自らホルモンを分泌し、あるいは下垂体からホルモンを放出させて体内の特定の器官に指令を出し、身体中のバランスをとる仕組みを備えている。さらに免疫と言う身体の防衛反応とも協力し合っており、ウィルスや細菌などから身を守るだけでなく、がんの発生にも監視機構が働き未然に防ぐことのできる仕組みが備わっている。ところが、栄養に大きな偏りがあったり、生活リズムの乱れが続くと、この巧妙な仕組みもうまく働かなくなり、病気を引き起こしかねない。
 
栄養と健康
 人は呼吸し、体温を保ち、歩いたり考えたりするのにエネルギーを必要とする。私たちは食物の中の栄養素を消化、吸収、代謝してエネルギーを産生し、そのエネルギーを利用して生きている。

 6つの栄養素
 食物に含まれている成分のうち、生命の維持に欠かせない成分を栄養素と言い、糖質、タンパク質、脂質、無機質(ミネラル)、ビタミンを「5大栄養素」という。また食物繊維はエネルギー源にも身体の構成成分にもならないが特別の栄養学的効果を持つので6つ目の栄養素と位置づけられている。
 糖質(米やパンなど)、タンパク質(肉、魚、牛乳、豆など)、脂質(バター、サラダ油など)は3大熱量素と呼ばれ、それぞれ1g当たり糖質=4kcal、タンパク質=4kcal、脂質=9kcalのエネルギーを作り出す。
 寝ている間も呼吸し、心臓を動かして血液を運び、脳の神経細胞を働かせるためのエネルギーが必要であり、これを「基礎代謝量」と言い、これに生活活動に必要なエネルギーを加えたものが「エネルギー所要量」である。
 各栄養素の摂り方も健康を維持するには大切なポイントで、1日に必要なエネルギーの約50~60%を糖質で摂るのが望ましいとされている。
 
 糖質の中でも砂糖や果糖の摂りすぎは肥満や生活習慣病へとつながるため、デンプン質で摂取する方がよい。
 
 タンパク質は身体を構成する成分で、必要量を摂取しないと発育障害や病気に対する抵抗力が低下する原因となる。一般に動物性タンパク質と植物性タンパク質を1:1で摂ることが健康に最もよいといわれている。
 
 脂質の栄養価は含有されるいろいろな脂肪酸の質によっても変わってくる。植物性脂肪や魚介類の脂肪は身体にとって欠かせない必須脂肪酸を多く含んでいる。また、コレステロールも私たちの身体の構成成分として重要な物質である。しかしこれらも摂り過ぎると血管障害や免疫系の過剰反応など有害な働きをし、高脂血症、動脈硬化など生活習慣病の引き金となってしまう。1日に必要なエネルギーの20~25%を脂質から摂取するのが良い。
 
 身体の機能を調節する栄養素として、無機質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、鉄、マグネシウムなど)とビタミン(A、B群、C、D、E、Kなど)がある。これらは体内でほとんど合成できないため食事から必要量を摂取することが大切である。
 日本人は特にカルシウムが不足しがちで、骨や歯の大切な成分であるカルシウムの摂取が少ないと、骨粗鬆症の原因となる。
 
 食物繊維とは、野菜、果物、海草、穀類などに含まれる難消化性多糖類である。肥満、高脂血症などの生活習慣病が増加している原因の一つとして、食生活の近代化に伴う食物繊維の摂取量の減少が考えられている。食物繊維は食後の血糖上昇を抑えたり、便量を増加させ、生活習慣病を予防するなど多くの有益な栄養学的効果がある。

 伝統的な食生活の見直し
 最近、日本人の食生活は肉や乳製品中心の副食が多い欧米型に変わってきた為、栄養状態や体格の改善には目覚しいものがある。その反面、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病の増加、高齢化社会における骨粗鬆症の増加問題など、健康面での健康面での問題が多く発生してきている。このため、米、野菜や豆中心の伝統的日本食が再び見直されている。

運動と健康
 生活習慣病の増加は現在の日本における重大な問題であり、その要因の一つの運動不足が挙げられる。心身の発達と、生涯を通しての健康の維持・増進には、正しい食生活と共に、日常生活の中に積極的に運動を取り入れることに大きな意味がある。運動をするということは、身体に何らかの負担をかける(負荷)ということで、適度な負荷は体力を増すよう働きます。

 運動にはどんな効果がある?
 適度な運動を習慣的に続けていくと、身体の基礎的な働きを高め、その結果として持久力、適応力や抵抗力が増す。運動は体力の維持や向上に効果があるばかりでなく、現代社会が抱える生活習慣病の増加とその低年齢化の問題を解消する一つの手段として、また予防医学や病気治療上の運動療法としても効果が期待されている。また運動による心地よい疲労はストレス解消に大いに役立つ。
 ただし、いくら運動が身体に良いといっても自分の体力や身体の状態を無視した過剰な運動は、身体に重大な障害を引き起こすことがある。糖尿病や心臓病など何らかの問題を抱えている方は、医師の指導のもとに運動を行うことが大切である。
 運動による身体への効果
 全身への効果
 免疫機能強化
 生活習慣病予防(高血圧/高脂血症/糖尿病)
 肥満予防・改善/骨粗鬆症予防
 体温調節機能向上/基礎代謝量上昇/自律神経機能改善
 各器官への効果
 脳…リラックス/リフレッシュ/ストレス発散/情緒安定/満足感/安眠/脳活性化
 肺…肺活量・酸素供給量増加/呼吸筋強化
 心臓…血流促進/血管の柔軟性/心筋発達/拍出量増加/耐久力増加
 消化器官…食欲増進/消化促進/便秘解消
 その他…骨・関節・筋肉維持/筋力強化/持久力・柔軟性・敏捷性向上

 健康づくりのための運動
 無酸素運動(アネロビクス)…全力疾走や重量挙げのような短時間に多くのエネルギーを必要とする運動で、筋肉肥大、筋肉増強、バランス力増加、瞬発力増加の効果があるが、エネルギー産生過程において酸素の供給が間に合わず、不完全燃焼となって乳酸が生じるため疲労しやすくなり、長く運動を続けることができない。
 有酸素運動(エアロビクス)…軽いジョギングやマイペースの水泳など中程度、あるいは歩行などの軽度の運動で、心肺機能増強(拍出量増大/心拍数減少/酸素摂取量増大)、血流増加、血小板粘着能低下、血圧降下、体脂肪減少、動脈硬化予防(LDL減少/HDL増加)、糖・脂質代謝活性化、ホルモン分泌増加、骨・関節・筋強化、骨密度増加の効果がある。この場合は、エネルギー産生過程における酸素の供給が十分にある為、完全燃焼して乳酸は生じず、水と二酸化炭素に分解されエネルギーを出し続けることができる。またこの運動ではエネルギー源として血中ブドウ糖に加え、身体に貯蔵された脂肪も利用する。血液循環が促進され血圧を下げたり、血中の総コレステロールや中性脂肪値を下げるなど生活習慣病の予防効果がある。

休養・睡眠と健康
 疲労と休養
 脳の興奮が長く続くと神経細胞を働かせるエネルギーが出せなくなり、活動が停止してしまう恐れがある。それを防ぐため視床下部が脳を休ませる指令を出す。すると脳から身体の各部に出されていた指令が変わり、筋肉活動が低下し「疲れた」と言うことを認識する。
 疲労を回復させるには睡眠が一番大切で、大人の場合、通常の場合であれば1日6~8時間で生理的な疲れは回復する。通勤電車の中や昼休みに15分程度の睡眠をとるだけでも、とても効果的である。
 疲れたときにその回復を図るためには、休息のほかに糖質やビタミンB群などの栄養の補給も大切である。ストレスを感じるときはタンパク質やビタミンCなども不足がちになるので、同時に補給すると良い。
 普通の生理的な疲れであれば、十分な睡眠と栄養の補給で自然と回復するものである。しかし、いつまでも疲れがとれないような時は、何らかの病気が原因となっていることもあるので、医師の診察を受けること。

 睡眠とは
 101時間以上の断眠実験での被験者の様子については、「体温、血圧など身体面での影響は見られなかったが、精神面では3日目頃より活動が急速に低下、錯覚や幻覚などの異常が見られた」
 このような実験から高等な精神活動をしている大脳は、2日以上継続して働き続けることはできないのではないのかと考えられている。このように、睡眠は栄養や運動とともに健康維持する上で必要な基本的条件である。

 脳の眠りと身体の眠り
 睡眠は脳を休ませるための時間と考えられている。生きるために欠くことのできない呼吸や循環などの中枢がある延髄、内臓や血管などの働きを調節する間脳などは眠っている間も働き続けている。これらの場所を脳幹といい、生命の維持に必要な命令を睡眠中も出し続けていると同時に、脳幹を覆う大脳皮質への刺激を抑えて休息させていると考えられている。
 1952年、シカゴ大学の生理学者クレイトマン教授によって、睡眠中に2つの違ったパターンの睡眠があることが発見された。
 レム(REM ”Rapid Eye Movement”)睡眠…眼球運動がある。尿量が減少する。骨格筋が弛緩する。ノンレム睡眠中に機能が低下した大脳を再び目覚めさせるため血圧や心拍数は上昇し不規則に変化するが、筋肉の緊張はほとんど消失し、この間に身体の休息をはかっている。夢はレム睡眠中に見るといわれている。レム睡眠の占める割合は新生児では約50%、成人では約20~25%。
 ノンレム(non-REM)睡眠…エネルギー消費量が減少し、体温が低下する。大脳を休息させるため血圧や心拍数など生理機能が低下する。ノンレム催眠は、レム催眠以外の状態で、脈拍・呼吸・血圧は安定しているが、筋肉の緊張は多少見られる。ノンレム催眠は脳が高度に発達した動物だけに見られるものである。
 眠り始めはノンレム睡眠、次第にレム睡眠とノンレム睡眠が約90分ごとに繰り返され、明け方に向かって浅い眠りとなり目覚める。

 睡眠の質と量
 人は地球の自転のリズムに合わせて昼間活動し、夜になると休息をとって生きている。体内の調節も地球のリズムに合わせるようになっている。これをサーカディアンリズムという。
 私たちが眠っている間にも自律神経の働きやホルモンの分泌を介して、身体の代謝促進や調節が行われているし、免疫機能も活発に動いている。
 心地よく眠るには、眠る前から次第に刺激を少なくして精神的にも肉体的にもリラックスし、いつも決まった時間に床につくのがよい。リラックスするためには、心を落ち着かせる作用のある精油を使い少しぬるめのお風呂にゆっくり入るのも効果的。

精油が働く仕組み

2008-01-24 06:36:12 | メカニズムと健康的なライフスタイル
5つの感覚
 光や音、熱などを感じ取る視覚・聴覚・触覚は物理的な感覚、味覚や嗅覚は化学的な感覚と呼ぶ。
 動物は高等になるにつれ、視覚や聴覚から外部情報を取り入れることが多くなっているが、嗅覚は生命維持に重要な役割を担っている。例えば有毒ガスの見地や餌の獲得、また生まれて間もない赤ちゃんでさえ、においで八は親を探し当てるなど、生死にかかわる重要な役割を果たしている。
 私たちが何かにおいを嗅いだとき、それが何かを認識する前に、そのにおいが好きか嫌いか、あるいは快いか不快かという反応が先にくる。またあるにおいが、そのにおいに関連した記憶をふと呼び覚ますこともある。

脳の仕組みと働き
 中枢神経系…末梢からの刺激を受け入れ、これに対応する中心的な役割を担う部分。(脳・脊髄)
 末梢神経系…中枢神経系と身体の各部(末梢)を連絡する神経。(脳神経・脊髄神経、自律神経系)

 大脳
 大脳は、左右2つの半球に分けられ、暑さ2~3mmの薄さの皮質(灰白質)が、内部の髄質(白質)を覆っている。この白質の中に神経細胞の集まりである大脳核が包み込まれている。
 大脳皮質は新しい皮質(新皮質)と古い皮質(古皮質・旧皮質)に分けられる。
 特に人間や霊長類では古皮質・旧皮質は大きく発達した新皮質に包み込まれ表面からは見えない。新皮質は論理的な思考をしたり、判断をしたり、言葉を話したりなどの高度の知能活動を営む場となっている。そして、古皮質・旧皮質は大脳核とともに大脳辺縁系という機能単位を形成し、食欲や性欲などの本能活動や情動、記憶の中枢となっている。

 脳幹
 大脳半球と脊髄を結ぶ、間脳(視床、視床下部、下垂体)、中脳、橋、延髄のことをさす。
 間脳の視床は、脊髄・間脳を通ってきた感覚情報を大脳皮質の中枢感覚野へ送り込む役割を果たす。
 間脳の視床下部は、自律神経をコントロールする働きを持ち、体温調節、摂食や水分摂取、性行動などの本能行動の調節や内分泌系(ホルモン)の調節を行う部分。
 中脳は、視覚・聴覚情報の中継地点。
 橋は、大脳と小脳の情報を中継する機能を持つ。
 延髄には、心拍、血圧、呼吸、嚥下、咳、くしゃみ、平衡など生命維持にとって重要な中枢がある。

 小脳
 身体運動のバランスを保つ中枢。

 大脳辺縁系とアロマテラピー
 大脳辺縁系は、大脳半球の内側面で、古皮質や旧皮質が間脳や脳梁を環状に取り囲み、これらの部分を縁取っている。嗅球、嗅索、扁桃体、海馬などが含まれる。
 大脳辺縁系は、固体の生命維持と種族保存に関する重要な中枢で、視床下部と関連しながら自律神経系や内分泌機能を調節したり本能行動を制御している。
 また大脳辺縁系は、感情や欲求などの情動に関与することから、情動脳とも呼ばれる。特に、扁桃体は外部からの刺激に対して反応し、快・不快・恐怖と言った情動反応を起こす部位と考えられている。記憶の中枢も大脳辺縁系の海馬にあり、生まれてから体験・学習して獲得した記憶を貯蔵している。嗅覚は古皮質で処理されるため原始的な感覚といわれている。
 心地よい香りは、大脳辺縁系に働きかけ、楽しく心地よい記憶を引き出したり、自律神経系を整えたりして、私たちをリラックスさせ、ストレスに負けない心や身体を作ってくれる。このようにアロマテラピーは、機能単位である大脳辺縁系の特徴を有効に活用して行える癒しの方法である。

精油が働く経路
 精油が作用する経路は大きく分けて4つあり、一つは嗅覚として神経系へ刺激が伝わるもの、そのほかの3つのルートは精油成分が皮膚や粘膜を介して血液に入り全身をめぐるものである。

嗅覚から神経系へ伝わる経路
 嗅覚の伝達
 あるにおい物質を嗅ぎ、その揮発成分が鼻の奥の上部にある嗅上皮の粘膜に付着し、そこで嗅細胞が出している毛(嗅毛)にキャッチされると、それが嗅神経細胞の興奮となって神経線維を電気的インパルスが伝わっていき脳の中に入る。嗅神経線維を伝わるインパルスは嗅球、嗅索を経て大脳辺縁系といわれる脳の領域に到達する。

 嗅覚の特殊性
 嗅覚は人間の五感の中でも特殊な感覚と言われている。嗅覚は生物の進化において視覚や聴覚などと比べ早期に発達した「原始的」な感覚で、食べ物の良し悪しの判断や生殖などに深く関わっている。
 また嗅覚の伝達経路の特徴として、嗅覚刺激が大脳辺縁系に直接的に伝えられ身体の調節に「直接的」に関わる特殊な感覚でもある。つまり視覚や聴覚は大脳新皮質にある刺激を受け入れる一次中枢(視覚野・聴覚野など)で認識された後に大脳辺縁系に伝わるが、嗅覚の場合は刺激を受け入れる一次中枢が大脳辺縁系にあり、大脳辺縁系に先に受け入れられた後に大脳新皮質で認識されるため、大脳新皮質の認識を待たずに「直接的」に身体調節に関わるのである。

 嗅覚とアロマテラピー
 アロマテラピーでは、精油成分が嗅覚を通じて大脳辺縁系から視床下部に伝えられ、気持ちが落ち着いたり、元気になったり、また悲しみに耐えられるようになったりという心理的効果が得らる。
 過度なストレスは、月経周期の異常、胃潰瘍、頭痛、喘息など身体に現われるものだけでなく、精神状態に問題を起こすこともあり、そのような症状の緩和にとても役に立ち、精神安定剤のような副作用の心配も無く、心と身体のバランスを取り戻すのに大きな助けとなる。
 精油の成分は、脳の神経細胞から出されるいろいろな神経伝達物質の放出に関わっていると考えられている。さらに、におい物質の中には免疫を高める作用があることもわかってきた。リラックスを求めて好きな香りを嗅ぐことは心理的効果ばかりではなく、免疫力を高め、ストレスに絶えうる身体をつくるためによいといわれている。

血液から全身へ伝わる3つの経路
 精油が体内に取り込まれるほかの3つの経路は、血液を介して全身に行き渡る血液循環によるものである。
 精油を入れたトリートメントオイルを皮膚に塗ると、表皮から吸収され、真皮にある血管やリンパ管に入る。また鼻から吸い込んだ精油成分はわずかながら鼻腔粘膜から血液に吸収される可能性もある。さらに呼吸をしたとき肺に入り込んだ精油成分も、肺胞と言う酸素と二酸化炭素の交換をする器官の粘膜から血液に入る。さらにもう一つは飲むことによる消化器官から入る経路である。
 このように精油成分は一旦血液中に取り込まれてから体内をめぐり、いろいろな組織に影響を与える。そして最終的に精油成分は肝臓で分解され、分解された物のほとんどが腎臓で濾過され、尿中へと排出される。そのほかにも汗や、呼気の中や便の中にも排泄されていく。

 皮膚から
 皮膚の表皮を覆う皮脂膜や角質層のバリアゾーンがあるため、皮膚は簡単に物質を通過させないが、精油は小さな分子構造をしている上、新油性であるためこれらを容易に通過する。
 ラベンダー精油を入れたトリートメントオイルを皮膚に塗ると、5分以内にラベンダー精油中のリナロールと酢酸リナロールと酢酸リナリルが血液の中に検出されて、20分後に最高値となり90分以内にその大部分が血液中から消失した。
 精油を皮膚から吸収させる方法の優れた点は、消化器系を介さないため、胃などに障害を起こす恐れがないことである。皮膚に精油を適用する場合には必ず植物油などに1%以下に希釈してから用いること、初めての使用には事前に皮膚に刺激が無いかどうかのパッチテストを行うこと。

 吸入によって
 精油の香りを嗅ぐと、精油成分はわずかながら鼻粘膜から吸収され、血液に入るものもある。さらに精油成分が呼気とともに気管支から肺に入ると、精油の種類によっては痰を切り、咳を鎮めるなどの局部での効果が得られる。一部の精油分子は、肺の一番奥にある肺胞の薄い膜を透過して血液中に入り体内を循環する。

 消化管から
 精油は内服すると消化管粘膜から吸収され、血液循環を経て肝臓に至り代謝分解される。他の方法と異なり、内服した精油はすべてが吸収されるため、続けて行うと肝臓に蓄積し毒性を発現する恐れがある。また消化管粘膜に対する刺激も予想される。もう一つ憂慮しなければならないのは、謝って飲んでしまうケースである。今までに述べた3つの経路に比べ、大量の精油成分が吸収される可能性があるので特に注意が必要。

精油成分による薬理作用
 精油は、一つの成分で構成されるのではなく、数多くの有機化合物の集まりであるため一つの精油に色々な作用がある。これらの物質は植物が作り出したものだが、植物により構成成分の種類や割合が異なる。このため精油はそれぞれ個性のある香りと異なる性質を持つ。
 精油の構成成分の一部には、薬と同じような働きをするものがあり、今日利用されている薬の成分でもあるが、現在では合成されている成分でももともとは植物から発見された物が多い。

 殺菌作用・抗菌作用・抗ウイルス作用
 ラベンダー精油などに含まれるリナロール、ペパーミント精油などに含まれるメントール、レモングラス精油などに含まれるシトラールなどの成分にみられる作用。この効果を利用して、ルームスプレーを作って室内の洗浄などに利用できる。

 鎮痛作用
 ラベンダー精油などに含まれる酢酸リナリル、ゼラニウム精油などに含まれるゲラニオールなどの成分にみられる作用。

 鎮静作用
 ラベンダー精油に含まれる酢酸リナリルやカモミール・ローマン精油に含まれるアンゲリカ酸エステルなどには鎮静作用がみられる。

 消化・食欲増進作用
 一般に柑橘系精油には、食欲を増進する効果がある。これは柑橘系精油に多く見られるリモネンの働きと言われている。

 ホルモン調節作用
 精油の中にはホルモンの分泌を調節する作用を持つものがある。この作用には2つのルートがあり、一つは嗅覚刺激による視床下部・下垂体系の調節、もう一つは精油成分とホルモンの構造が似ていることによる作用である。この代表例として、クラリセージに含まれているスクラレオールがある。

 去痰作用
 ユーカリ精油などに含まれる1,8-シネオールには痰を切る作用がある。またローズマリー精油などに含まれるカンファーにも同様の効果が見られる。1,8-シネオールやカンファーは刺激の強い成分なので使用量や濃度には十分注意。

 精油のもつ有益な薬理作用には、他にも、鎮痙作用、利尿作用、免疫賦活作用、駆風作用(腸内のガスを出す作用)などがある。

精油成分によるマイナス作用
 精油は使用法を誤ると害になることもあり、これを未然に防ぐには精油の使用方法について正しい知識を持ち、それを守ることが大切である。

 皮膚刺激・粘膜刺激
 精油の中には皮膚や粘膜を刺激する物があり、かぶれや荒れの原因となる場合がある。皮膚などにつけるときは濃度や滴数に注意。

 光毒性について
 精油成分の一部には皮膚に塗布した状態で、日光などの強い紫外線と反応することによって、皮膚に炎症を起こすなどの毒性を示す物があり、これを光毒性と呼ぶ。
 光毒性のあるものとして知られている成分の代表的な物に、ベルガプテン(5-メトキシソラーレン)などがある。これはベルガモットをはじめとする柑橘系の精油に含まれる成分である。
 ベルガモット精油、レモン精油、グレープフルーツ精油を外出前や外出中に使用するときは十分注意が必要。

 感作
 感作とは、免疫機構に基づく反応のことである。人にとっては精油中の一部の成分にアレルギーを持つことがある。