カキぴー

春が来た

全日空機の曲芸飛行と、「Wキャプテン」への提案。

2011年09月30日 | 乗り物
世の中は好いことの後に悪いことが、なぜか起こるものだ。 全日空がが世界に先駆けて導入した米ボーイング社の最新鋭機B-787が、羽田空港に到着した9月28日の夜10時50分頃、那覇発羽田行きの全日空機140便B-737-700(乗員乗客177人)が浜松市沖の太平洋上空12500mを飛行中、かなり深刻なイシデントを起こしていた。 突如機体が左に傾き、らせん状に急降下、フライトレコーダーの解析によると最大で131・7度のほぼ背面飛行の状態となった。 機首は下向きに35度、副操縦士が機体の姿勢を立て直したときの機首方位は、ほぼ正反対を指していた。 これまでに例の無いまさに旅客機の曲芸飛行。 

客室内は最大でほぼ2・68倍の重力がかかったが、幸い負傷したのは軽症の客室乗務員2名だけで済んだのは、夜間で乗客がシートベルトをしてたのと、遠心力の原理で体がシートに押さえつけられていたため。 僕はかってライセンスの取得でフロリダの教習所へ入学した初日のフライトで、この遠心力を経験させられた。 1000mぐらいの高度に達すると、教官がライターをダッシュ板の上に乗せ、いきなり機首を下げてスピードをつけ操縦桿をひくと、機体は380度の円を描いて見事に1回転した。 しかしライターはそのまま、仮に僕がシートベルトをかけ忘れていたとしても、無事だったと思う。 したがって140便の乗客はトラブルが起きた際、軽いエアポケットぐらいにしか感じておらず、ニュースで知って初めてゾッとした筈。

トラブルの原因は操縦室ドアの開錠スイッチと、方向舵を調整する「ラダートリム・コントロールスイッチ」を間違え、大きく左側に回したために起きた。 ラダートリムは風向きによって操縦桿にかかる負荷をゼロにするため使う装置で、微調整のみで大きく動かすことはまずない。 それをドア開錠スイッチと同じく動かしたのは極めて危険な操作、もしスピン(きりもみ落下)に入ってていたら全員助からなかったと思う。 それにしても副操縦士(コーパイ)の回復操作は見事だった。 30秒間に約1900mで落下し、制限速度(マッハ0・82)を超過している機体の立て直しはかなり難しい。 そんな訓練を受けていたとは思えず、まさに奇跡としか言いようがない。

トイレから戻った機長をコクピットに入れるため、コーパイが間違えて押したラダートリムの位置と、本来押すべき開錠スイッチの場所は、コクピットの写真を見る限りそんなに近くはない、しかし今回はヒューマンエラーの典型的な事例で、この種の間違いが自家用小型機ではかなり頻繁に起きている。 例えば7月に起きた航大事故の訓練機と同型の「ビーチ・ボナンザ36」の場合、胴体着陸や着陸後のタクシー中に車輪の引っ込む事故が多発していた。 こ原因ははフラップの操作スイッチと、ランディングギヤ(車輪出し入れ装置)のスイッチが並んで配置されているためで、しかもその色かたちまでそっくりなのだ。 人間は必ず間違いを起こすという前提に立って、コクピットの設計を変えるぐらいの対応が必要かもしれない。

機長が操縦席を離れた状態での事故で連想するのは、オートパイロットの過信から起きたエールフランス447便墜落事故で、乗員乗客238名全員が死亡している。 447便の場合、機長が即座に操縦を代わっていれば確実に防げた事故、そして航空機がどんなに進化しても想定外の危険なトラブルは必ず付きまとう。 そうした事態を回避できるのは多くの経験を積み、豊富な知識を持つベテランの機長で、例え短時間でも機長が不在になるコクピットには不安を覚える。 ところでジャンボ機は今も「ダブルキャプテン」で運行しているのだろうか?。 LCCとの競合で厳しい経営環境下にある航空業界だが、時計の振り子が戻るように、これから乗客は安さだけで飛行機を選ばなくなる。 原発事故を引き合いに出すまでもなく安全への投資は必ず帳尻が合うはず、せめて中型機ぐらいからでも「Wキャプテン」の導入を検討してみては如何だろう。       


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