南国の風

台湾産のナガサキアゲハを展翅しました。
驚くかもしれませんが、これ全部同じ種類です。
年度を跨ぐとやる気がうせるのと、三角ケースの中身を空にしておきたかったのと。

昔はナガサキアゲハは四国以南ぐらいにしかいなかった種類なのに最近では東京でも見られるようになりましたね。
ただ、台湾の系統や沖縄の系統は東京には現れていないようで。
ちなみに、東京で見られるナガサキアゲハは九州から段々と北上してきた系統とは別らしく、九州から段々と北上してきた系統がまだ静岡県西部あたりを北限としている頃に、三浦半島あたりで別系統を誰かが放蝶して増えてしまった結果らしいですね。

「放蝶」ってのはよくオオムラサキなんかを野生に返しているのをテレビで報じたりなんかしてますが、それがもしオオムラサキのいない地域なら言語道断、オオムラサキのいる地域でも、他の地域から持ってきたものなら変異を崩してしまうのが目に見えているし、人の手で育ったものであるから自然では淘汰されるはずの形質（極度に弱い固体）が残ってしまうわけであるからこちらも大量に放蝶すれば種の維持力が弱まるといえます。

世間の考え方は昆虫採集を悪とし、それに対する善としてこのような放蝶を考えるみたいですが、それどころかはっきりいってこれは生物兵器みたいなものなんですね。
たとえるなら些細な子供の喧嘩を核兵器で沈めるような話ですね。
実際、長野県のどこかの山のギフチョウはこの手の放蝶で遺伝的に価値のまったく無いものになってしまっていますね。
しかも、その遺伝的には既に絶滅したに等しいような蝶を国が保護しているんだからばかげた話だと思います。

ちなみに、いわゆる「昆虫採集」で蝶は減り得ません。
雌蝶は羽化してすぐに、数日早く羽化した雄と交尾して繁殖をしますから、多くは産卵を終えてから捕まってしまうはずです。
それから、昔のほうが昆虫採集は盛んだったわけで、蝶が減っているとすれば当然別の理由であるのも明らかですね。
ここで「いわゆる「昆虫採集」」と書いたのは、網などで捕まえる昆虫採集ということで、業者や悪質な人が幼虫の食草ごと切り倒して持っていってしまうようなものは別であるということです。
もちろん、道路やゴルフ場なんかを作ろうとすればその数百倍も昆虫が減るのは言うまでもありませんが。


　
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