蝸牛のこちょこちょ

みずしろの普段着物と手仕事と好きなものの記録。

着物を着たり、ほどいたり

2021年11月08日 | 普段着物
 着ようと思ったらビシッといった、という、あるある話です。

 
 どこから家に来たのか記憶が定かでない紬。しつけがついたままで、とってもきれい。
 着付けもしないと忘れるということで初めて袖を通してみたのですが、合わせを整えようとしたとたん「ビシッ」。
 えっ? と確認したらなんと衿先。こんなとこ普通破れますか!?
 どういうこっちゃと脇を引っ張ってみたらこっちもビリビリといったので、慌てて脱ぎました。

 調べてみると、どういうわけか、表地を縫っているメインの縫い糸「だけ」が、百年ほど経ったみたいにぼろぼろ。
 胴裏や八掛を縫っている他の色の糸はまだまだしっかりしていて、布地も健康そのものです。えっどういうこと……。
 ともかく、縫い糸がダメになっているのでは、もう解くしかありません。なんたるちや。
 一回もまともに着られず解いてしまうなんて、縫った人に申し訳ないけど、いや、でも、どういう糸で縫ったのよ。ほんまに。

 
 しゃあないので解きます。

 
 
 衿、袖、裏地(胴裏と八掛まとめて)、おくみ、脇、背縫いの順で解きました。

 たまげたのが八掛を外すとき。
 
 ふき綿はいっとるがな!?
 えっ、紬にふき綿って初めて見た。しかも絣の小紋に。後染の訪問着とかならまだわからんでもないけど。うっすらとはいえ贅沢!
 どうしたもんか困惑した挙句とりあえず八掛にくっつけたままにしてあります。えっどうすりゃいいのこれ。

 
 おくみつけ部分の縫い代です。
 人差し指の先の線から親指の先の線までが縫い代。まだこれだけ前幅が出せる!
 反物から縫う着物は、基本的に「余り」を切り捨てません。特に「布幅」は可能な限りそのまま、余った分は中に縫い込みます。
 だから、ほどいて寸法を直したり、前身頃と後ろ身頃を入れ替えたり、違うものに仕立て直したり出来るんです。
 最高。

 で、解いてみたら本当に大事に保管してあったみたいで、ヤケも一切なし、埃を吸った気配もゼロ。
 胴裏だけはお定まりの「置きジミ、黄変」で、どちらにせよ取り替えないとですが、表地と八掛は元気そのものです。
 洗う……かなあ。どうしようか。柔らかくしたいし、幅出したいから折り目取りたいんだけど、洗うほど汚れてない。あと色落ち怖い。
 ちょっとテストしてからにしますか……。

 一番の問題は、わたしは袷を縫ったことがないっていう、そこなんですけどね。
 胴抜きにしていい?(聞かれても)