ゆとろぎへの道 仲村峯夫 一隅を照らす素晴らしきかな人生 照らさずとも好し また素晴らしきかなこの人生(とき)

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「和食文化」のユネスコ世界文化遺産登録は「他者を意識する日本文化」の体現

2024-01-17 11:33:43 | 日記
  日本の誇る和食文化は他者を意識する日本特有の価値感の体現
 日本の和食文化のユネスコ世界文化遺産登録は「他者を意識する日本文化」の体現である。
それらは日本固有の価値観や生活様式、社会的な伝統を全て含めての国際評価である。
 「他人にできるだけ迷惑をかけない」、「自分が嫌なことは他人にもしない」。
簡単に言えば、「他者のある文化」とは「おもてなしの心」と「他者を大切にする心」に代表され精神文化なのだろう。
自分に過ちがあれば素直に「ごめんなさい」と謝るなど、「自分以外の他人をおもんばかる」相手への「思いやり」や自分への厳しさを基調とする日本の精神文化は、日本古来の神道や武士道の精神に裏打ちされた日本人の特性が集約された日本文化の集約と言ってもいい。
日本の精神文化を支えるもう一つの特性は「道を求める心」である。
 ホワイトカラーと呼ばれるエリート、各種の一流のプロから町工場の職人、町場の一介のラーメン屋のおやじと呼ばれる人たちを含めて多くの日本人は職種に関わらず名人、達人、匠などその道を究めるべく精進・まい進する習わしがあるように思う。
それは生きざまとしての「自らの道」であったり、「その道のプロ」としての生きざまを含めた日本人の生真面目な性分によるものなのかもしれない。
そしてこのような日本人の精神文化の基本を形成するのは、八百万神を基調とする神道の精神や「思いやり」と自己規律を重視する「武士道の精神」のような気がする。
これらの精神土壌が自分以外の相手(他者)への思いやりを大切にし、自然を含めたすべての多様性を尊重できる柔軟な日本人のよりどころのような気がするのだが。
 これまでも世界の街角で寿司、刺身、ラーメン等の日本食が健康食としてそのすそ野を拡大してきたが、今回のように日本古来の伝統文化の総体のシンボルとして国際機関から評価されたのは画期的な凄いできごとである。
 どんな素晴らしい伝統文化でも国際的な認知度が低ければ、国際的な評価は受けられない。
今回その和食文化の国際化に尽力したのは京都の料理人が中心になった、NPO法人「日本料理アカデミー」だという。
長い時間と手間暇をかけてフランスの一流シェフを招いたり、若手シェフへの講習会を実施するなど、正に日本の和食の聖地としての役割を果たしてきたと言える。
 今回評価された具体的な内容は
①新鮮で多様な食材とその持ち味の尊重、
②栄養バランスに優れた健康的な食生活、
③自然の美しさや四季の移ろいを表現、
④自然を尊重するという日本人の精神を体現する社会的な習慣などである。
 フランス料理は油脂を前面に押し出し、調理師個人の独創性と個性で
食材を人工的に加工し、あくまでも「油脂の美味しさ」を追求する料理である。
 それに対し、和食は日本固有の自然や、移ろいゆく美しい日本の四季を日本特有の「出汁」と包丁の技術で表現するものである。
自然という「他者」の存在を大前提にしながら、さらに素材の特徴を最大限に引き出し、素材としての「他者」を生かし切るという絶妙のバランスを見せている。
これが今世界の料理人が絶賛する、日本固有の伝統的なコンブやカツオで料理を演出する日本の「出汁文化」である。
 大自然としての他者、素材としての他者、そして三つ目の他者は、言うまでもなく「お客様」である。
素材や料理の器、季節感をふんだんに取り入れた料理の盛り付けに込められたのが、日本人の美学の集約としての「おもてなしの心」である。
大自然に畏敬の念を払い、常に他者をおもんばかる利他の心。
神への罪より、他者への恥を重んじる日本人特有の他者を思いやり、大切にする心こそが日本料理の根底を流れる精神である。
 「フランス料理は点の文化」で、日本料理は「線の文化」であると言った、フランスのあるシェフの言葉が印象的である。
「個々のシェフの料理が輝く、フランス料理に対し、歴史と伝統の中で連綿と受け継がれ、大自然と季節感を大切にする和食に哲学を感じる」。
これこそ最大の褒め言葉ではないか。
 1995年3月20日オウム真理教によるあの忌まわしい、地下鉄サリン事件が起きた。
当時の世相を写真家でエッセイストの藤原新也氏は「他者のない文化」と称して、他者を顧みず自分だけが突っ走る時代背景を批判してきた。
昨今はまさに国際的にも他人を顧みない、「他者のない文化」の全盛時代である。
 アメリカ主導の物質至上主義、それをドギツク体現して止まない、経済効率優先の国際社会の現状。
さらには国内、いや沖縄でも他者を顧みない社会の現象は多々ある。
「他者を顧みない文化」、「他者のない如くの文化」より、「他者を意識する文化」の方がいいに決まっていると思うが。 
 おめでとう、ユネスコ世界文化遺産登録:日本の和食文化。
今回のユネスコ世界文化遺産登録が日本固有の「他者を顧みる文化」への回帰のきっかけになることを願う。



 
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