本書の著者久保田稔は一九三八年(昭和十三年)の生まれ。一九六一年、学習院大学を卒業し日興證券に入社した。証券会社の営業時代、株価は暴落に次ぐ暴落。平均株価が2000円から1000円にまで下がった。「保険の世界に最初からいたのでは、お客様のありがたみは分からなかったようにも考えています。証券会社でおぼえたことと言いえば、土下座をすることと、とにかく謝ることの二つ」と著者は回想する(二百十四ページ)。証券会社には六年いて、富士火災の営業社員となった。以後三十年以上にわたりトップセールスを続けている。一九九〇年にはスーパーロイヤルクラブの会員に認定された。現在は、㈱久保田保険事務所代表取締役。
競争激化の損害保険業界にあって、毎年二ケタの増収をあげている。その一方、週末は赤城山麓の別荘で野菜作りに没頭、丹精こめて野菜をつくることと「保険の販売」には共通点がある。そんな“哲学“をもつ著者の保険販売読本。保険の話題の中にトウモロコシや枝豆が出てきたり、畑の下草刈りの話題がでてくるといった”不思議な本“である。 著者は若い頃、剣道をしていた。趣味のひとつが剣道。損害保険の多種目販売に関しては、剣道の防具を喩えにして、こんな話法がでてくる(二十五ページ)。
○
面(火災)だけつけて、試合に出る人はありません。胴(自動車)、籠手(傷害)、垂れ(賠責)をつけて、初めて自分を守ることができるのです。
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本書のタイトルの中に「安ければいい保険なの」とある。気になる言葉だ。これについて著者は「儲からなければさっさとひきあげた」、「本国の都合で撤退した」事例をあげ、多大の広告費を使って安い保険料を売り物にする外資系保険会社を批判する。全く顧客不在の経営方針だ。ただし、批判されているのは外資系損保会社だけではない。研修会の時間を午後1時から3時迄と設定する。表彰式の開始時刻を午前11時とする。そんな損害保険会社にも批判の矢が向けられる。このような時間設定をやられると、代理店は一日が潰れてしまう。そのようなことを全く考慮せず、会社の都合のみを考えてもらっては困るというのだ(九十一ページ)。
本書は代理店経営者によって書かれた本である。したがって、一般の代理店が読んで経営のヒントとなることは多かろう。しかし、損害保険会社の営業マンにも是非読んで欲しい。時々、営業マンにとって耳の痛いことも書いてあるが、それがまた役に立つことにもなろう。また、損害保険会社の役員やスタッフ部門の社員にも本書の一読を勧めたい。代理店のナマの声が聞けるからだ。著者の野菜作りに関する叙述は、本筋から外れて見えるかもしれない。しかしながら、自然や家族・友人とのコミュニケーションをないがしろに、目標達成にまい進し働き過ぎがちの業界人たちとって、自分の人生や生き様を考え直すきっかけになるかも知れない。そのような読まれ方を著者は期待しているのだろう。
巻末の「年表」(第一火災が経営破綻した二〇〇〇年から二〇〇四年七月までの業界再編成等の生損保激動期の主要ニュース)は、日常参照するのに便利である。
(二〇〇四年・体育とスポーツ出版社・一二〇〇円+税)
競争激化の損害保険業界にあって、毎年二ケタの増収をあげている。その一方、週末は赤城山麓の別荘で野菜作りに没頭、丹精こめて野菜をつくることと「保険の販売」には共通点がある。そんな“哲学“をもつ著者の保険販売読本。保険の話題の中にトウモロコシや枝豆が出てきたり、畑の下草刈りの話題がでてくるといった”不思議な本“である。 著者は若い頃、剣道をしていた。趣味のひとつが剣道。損害保険の多種目販売に関しては、剣道の防具を喩えにして、こんな話法がでてくる(二十五ページ)。
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面(火災)だけつけて、試合に出る人はありません。胴(自動車)、籠手(傷害)、垂れ(賠責)をつけて、初めて自分を守ることができるのです。
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本書のタイトルの中に「安ければいい保険なの」とある。気になる言葉だ。これについて著者は「儲からなければさっさとひきあげた」、「本国の都合で撤退した」事例をあげ、多大の広告費を使って安い保険料を売り物にする外資系保険会社を批判する。全く顧客不在の経営方針だ。ただし、批判されているのは外資系損保会社だけではない。研修会の時間を午後1時から3時迄と設定する。表彰式の開始時刻を午前11時とする。そんな損害保険会社にも批判の矢が向けられる。このような時間設定をやられると、代理店は一日が潰れてしまう。そのようなことを全く考慮せず、会社の都合のみを考えてもらっては困るというのだ(九十一ページ)。
本書は代理店経営者によって書かれた本である。したがって、一般の代理店が読んで経営のヒントとなることは多かろう。しかし、損害保険会社の営業マンにも是非読んで欲しい。時々、営業マンにとって耳の痛いことも書いてあるが、それがまた役に立つことにもなろう。また、損害保険会社の役員やスタッフ部門の社員にも本書の一読を勧めたい。代理店のナマの声が聞けるからだ。著者の野菜作りに関する叙述は、本筋から外れて見えるかもしれない。しかしながら、自然や家族・友人とのコミュニケーションをないがしろに、目標達成にまい進し働き過ぎがちの業界人たちとって、自分の人生や生き様を考え直すきっかけになるかも知れない。そのような読まれ方を著者は期待しているのだろう。
巻末の「年表」(第一火災が経営破綻した二〇〇〇年から二〇〇四年七月までの業界再編成等の生損保激動期の主要ニュース)は、日常参照するのに便利である。
(二〇〇四年・体育とスポーツ出版社・一二〇〇円+税)