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大羽宏一編『消費者庁誕生で企業対応はこう変わる』

2009-11-22 20:37:41 | Weblog
大羽宏一編『消費者庁誕生で企業対応はこう変わる』

 昨年9月、消費者庁が誕生した。消費者保護行政の司令塔ともいえる消費者庁の発足によって、企業の消費者対応はどう変わるのか。本書は、消費者庁関連三法や事故情報の収集・分析など、法制度の概要を詳述する。また、企業側のリスクマネジメントのポイントを解説するタイムリーな出版物である。
 消費者庁および消費者委員会の新設については、2007年に福田康夫内閣発足以来の懸案事項のひとつであった。当初法案成立の難航が予想されていた。しかしながら、中国製餃子中毒事件、事故米の不正流通問題、牛肉の産地偽装問題等が次々と発生したことから、福田内閣に次ぐ麻生太郎内閣のときになって消費者庁関連三法が可決・成立(2009年5月29日参議院)。6月5日公布となるに至った。
消費者庁の誕生により、縦割り行政の弊害が是正される。すなわち消費者保護に関して事故情報が一元管理されることになる。また、省庁間の「すき間事案」への対応も可能となるなど、消費者庁誕生による社会的影響は極めて大きい。この点に関しては、本書28ページ以下に紹介されたこんにゃくゼリーの度重なる事故(1995年から2008年の間に死者17名)に対する行政上の対処が的確に行うことができなかった。その例が如実に示している。すなわち、こんにゃくゼリーの死亡事故は、厚生労働省所管の食品衛生法、農林水産省所管のJAS法、公正取引委員会所管の景表法何れにも抵触しない。しかし、17名の死者が生じてしまっている。このほか“縦割り行政の弊害”として、BSE問題、中国製冷凍餃子中毒事件、ガス瞬間湯沸器一酸化炭素中毒事件等の例も紹介されている。

 本書の編者(第1章、第7章)である大羽宏一(おおば・ひろかず)氏は、1966年の生まれ。一橋大学商学部卒業後日本火災海上保険に入社、同社に長らく勤務の後、1998年大分大学教授(現名誉教授)を経て、現在は熊本県にある尚絅大学学長の職にある。著書に『総合生活学 ~女性の視点から見た現代社会~』(編著、法律文化社、07年)、『損保保険論』(共著、有斐閣、06年)、『早わかり製造物責任[PL]法のすべて』(共著、日本経済新聞社、94年)などがある。本書は大羽氏のほか弁護士、国民生活センター職員、大学教授等5人が執筆、本書のテーマに対して多面的にアプローチをしている。本紙読者にとって最も関係の深いのはPLに関して述べた第7章(最近の製造物責任訴訟の事例分析)であろうが、本書は総合的にみても損害保険に携わる者にとって極めて有効な著作である。

                  (2009年、日本経済新聞出版社、2100円+税)