保険会社の新入社員は、先ず長期間の研修を受ける。職場に配属されると、先輩から多種多様の「保険に関する知識・情報」を学ぶ。ビジネスマナーやセールス話法を身に付けていく。かくて年月とともに保険マンとしての磨きがかかっていく。ところで、本書は「仕事のやりかた」の本である。例えば、「モノ探しばかりに時間をかけないためにはどうすればよいか」、「やみくもに情報を集めるといった行動様式から脱却しよう」、「携帯電話やパソコンからの情報漏洩を防ぐにはどのような注意が必要か」、といったテーマについて著者が永年培ってきた薀蓄を傾けている。これらテーマについては、明確な理論やルールが確立されているとも思えない。伝統的にまたは慣習的にルールのごときものが存在する分野であるといってよかろう。換言すると、研修や職場教育のテーマとして深く掘り下げる機会が少ない分野であると言える。
保険、年金、社会保障、経済、経営、法律、防災、安全等々保険業界に身を置く者は様々なテキストや本を読む必要がある。そのための時間が足りない。確かにそうである。しかし、通勤時のコマギレ時間を使って、本書『7つのムダを捨てれば、すべてうまくいく!』に目を通し、その結果として「日常業務の合理化」がはかることは可能だ。ちなみに、本書の第三章のタイトルは「あなたの時間に潜むムダ―ムダな時間を迷わず取り除く―」。この章では「時間ドロボーに振り回されないように」と著者は警告する。そして、電話、上司、アポなし訪問といった時間ドロボーの“撃退方法”が具体的に伝授されている。
本書最終章である第七章は、特に印象が深い。タイトルは、「あなたの「生き方」に潜むムダ」。本書は、単なる小手先だけの“仕事術の本”に終わっていない。ビジネスマンの「生き方」にまで及んでいる。著者は「世間に通用する能力を身に付けよ」と、読者に問いかける。本書の著者壷阪龍哉(つぼさか・たつや)氏は、一九五八年(昭和三十三年)に慶応義塾大学経済学部を卒業、鐘紡に入社する。その後、転職、起業(現在㈱トムオフィス研究所代表取締役)と、平穏どころか波乱に満ちたビジネスマン生活を送ってきた。本書は著者の体験を踏まえて出来上がっている。学者や評論家または平穏なサラリーマン生活を送った人たちによる「偉そうなアドバイス」ではない。加えて、著者は駿河台大学教授として学生を指導し、また記録管理学会(比較的ビジネス寄りの学会。学者、ビジネスマン、コンサルタント等から構成される)の会長経験もある。この「世間に通用する能力を身に付けよ」という壷阪龍哉氏の忠告は、損害保険会社のOBである神田芳雄氏の著書『実践 損保マーケティング戦略』(2005年、東洋経済新報社、2200円+税)でも指摘されている。神田氏は、損害保険会社の本部スタッフは、本当にプロ集団なのかと問いかける(同書12ページ)。例えば、火災新種保険部に配属の火災保険担当者を例にあげる。この担当者は連日火災保険の仕事ばかりに従事している。火災保険に関しては、比較的短期間で詳しくなれる。これは当たり前もことだ。しかし、著者は、「それだけではダメ」と言い切る。リスク分析、料率、約款のプロとして、「同業者間で通用するか」、「国際的に通用するか」と追及する。例えば、「リタイア後は大学教授になりたい」といった気概をもって勉強しなければならない。著者は、そのように表現していた。損害保険会社の現役社員やOBで、大学、損害保険事業研究所、代理店学校等で講義を行っている人材も出てきている。また、退職後に保険に関する著書を公刊する先輩もいる。この水準を目指すべきなのだろう。
(二〇〇六年、PHP研究所、一三〇〇円+税)
保険、年金、社会保障、経済、経営、法律、防災、安全等々保険業界に身を置く者は様々なテキストや本を読む必要がある。そのための時間が足りない。確かにそうである。しかし、通勤時のコマギレ時間を使って、本書『7つのムダを捨てれば、すべてうまくいく!』に目を通し、その結果として「日常業務の合理化」がはかることは可能だ。ちなみに、本書の第三章のタイトルは「あなたの時間に潜むムダ―ムダな時間を迷わず取り除く―」。この章では「時間ドロボーに振り回されないように」と著者は警告する。そして、電話、上司、アポなし訪問といった時間ドロボーの“撃退方法”が具体的に伝授されている。
本書最終章である第七章は、特に印象が深い。タイトルは、「あなたの「生き方」に潜むムダ」。本書は、単なる小手先だけの“仕事術の本”に終わっていない。ビジネスマンの「生き方」にまで及んでいる。著者は「世間に通用する能力を身に付けよ」と、読者に問いかける。本書の著者壷阪龍哉(つぼさか・たつや)氏は、一九五八年(昭和三十三年)に慶応義塾大学経済学部を卒業、鐘紡に入社する。その後、転職、起業(現在㈱トムオフィス研究所代表取締役)と、平穏どころか波乱に満ちたビジネスマン生活を送ってきた。本書は著者の体験を踏まえて出来上がっている。学者や評論家または平穏なサラリーマン生活を送った人たちによる「偉そうなアドバイス」ではない。加えて、著者は駿河台大学教授として学生を指導し、また記録管理学会(比較的ビジネス寄りの学会。学者、ビジネスマン、コンサルタント等から構成される)の会長経験もある。この「世間に通用する能力を身に付けよ」という壷阪龍哉氏の忠告は、損害保険会社のOBである神田芳雄氏の著書『実践 損保マーケティング戦略』(2005年、東洋経済新報社、2200円+税)でも指摘されている。神田氏は、損害保険会社の本部スタッフは、本当にプロ集団なのかと問いかける(同書12ページ)。例えば、火災新種保険部に配属の火災保険担当者を例にあげる。この担当者は連日火災保険の仕事ばかりに従事している。火災保険に関しては、比較的短期間で詳しくなれる。これは当たり前もことだ。しかし、著者は、「それだけではダメ」と言い切る。リスク分析、料率、約款のプロとして、「同業者間で通用するか」、「国際的に通用するか」と追及する。例えば、「リタイア後は大学教授になりたい」といった気概をもって勉強しなければならない。著者は、そのように表現していた。損害保険会社の現役社員やOBで、大学、損害保険事業研究所、代理店学校等で講義を行っている人材も出てきている。また、退職後に保険に関する著書を公刊する先輩もいる。この水準を目指すべきなのだろう。
(二〇〇六年、PHP研究所、一三〇〇円+税)