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メタボリックシンドローム対策

2007-07-24 04:18:30 | Weblog
メタボリックシンドローム対策

最近、メタボリックシンドロームという“舌をかみそうな”コトバがマスコミにしばしば登場している。このコトバ、意外と知れ渡っているようだ。たとえば、ミツカングループ本社が、40-50代の首都圏在住者男女462人について調査したデータによると、メタボリックシンドロームという言葉は「知っている」と答えた人が98.9%、言葉だけでなく「意味まで良く知っている」と答えた人は31.8%であった(2007年3月14日付日経流通新聞)。単に「肥満に注意」と言えばすむところを「メタボリックシンドローム対策」というコトバを用いて国民の注目を集める。このような広報作戦は成功しているようだ。ここで、ちょっと“おさらい”をしておこう。メタボリックシンドロームと言うのは、漢字でかくと「内臓脂肪症候群」。単なる肥満よりは、範囲が狭い。その意味するところは以下のとおりである。

働き盛りの男性の約30%を占める肥満が原因で、高血糖、高血圧、高脂血などの生活習慣病の危険因子を併せ持つ状態をメタボリックシンドロームという。この状態を放置すると、心臓病や脳血管疾患などの重篤な疾病を発症させることにつながる。

メタボリックシンドロームにからめて、胸囲ならぬ”腹囲“という、やや耳なれないコトバが登場する。漢字を見ればすぐ分かるので、コメントはしない。この腹囲が、男性の場合85センチ、女性の場合90センチを超えると”メタボリックシンドロームにご注意“ということになる。

厚生労働省では、国民の健康、医療費削減の観点から国をあげて「メタボリックシンドローム対策」に取り組み始めている。国だけではない。各自治体もそれぞれ知恵を絞っている。たとえば、東京の郊外の杉並区では、「杉並ウエストサイズ物語」というタイトルのもと運動を開始した。「もやせ内臓脂肪!ふせげ肥満!」というのがキャンペーン。区民一人一人の腹囲減少にむけた健康的な生活習慣の改善をしていくことが目的。楽しく体験できるようなシステムが考案されている。区民の中から腹囲減少チャレンジャーの応募者を募る。家族がチャレンジャーを応援するだけでなく、区側も保健所などを通じた応援体制を敷く。また、イベントにも力を入れ、元スピードスケート五輪代表選手勅使河原郁恵さんを招き、区内にある善福寺川をウォーキングする催しも用意されている。このイベントでは、内臓脂肪減少の秘策の伝授などもプログラムの中に入っている。また“腹囲の測定”も行なわれるそうである。

国や自治体が音頭をとるからといって、受身で参加するというのは本末転倒。健康は自分自身、そして家族のために必要最小限の条件である。暴飲暴食を慎み、適度な運動をする。ことは単純だ。草野球、ゴルフといったスポーツだけではなく、散歩、ジョギング、ラジオ体操、ハイキング、トレッキング等々。身の丈に合った運動を心がけることが重要であるといえよう。

武蔵野うどんの店「久兵衛屋」(東京・武蔵村山市、ダイヤモンドシティ・ミュー)

2007-07-16 09:23:45 | Weblog
武蔵野うどんの店「久兵衛屋」(東京・武蔵村山市、ダイヤモンドシティ・ミュー)

昨年11月18日、都内最大級の郊外型ショッピングセンター「ダイヤモンドシティ・ミュー」が武蔵村山市内に開業した。場所は2003年に閉鎖した日産自動車村山工場の跡地。核テナントは三越とジャスコである。そのほか180の商店、飲食店が入り、4000台分の駐車場が設けられるという大規模なもの。今回は、この「ダイヤモンドシティ・ミュー」のなかにある武蔵野うどんの店「久兵衛屋」(きゅうべいや)を探訪してみた。この店は上場企業である大和フーヅ株式会社(本社:埼玉県熊谷市)がチェーン展開する店である。チェーン店というと、一種の味気なさを感じるかもしれない。しかし、店の入り口にはガラス張りのコーナーがあり、そこでは若い女性がうどんを打っている。これまで本誌で紹介した東村山、神田駅前、小平の店は何れもただ一回訪れ、すぐに原稿を書いた。それに引き換え、今回は2回目にしてようやく原稿を書く決心がついた。その理由は、この店がチェーン店であることに起因する。「こんな店を紹介してもよいのかな」という若干の危惧があった。しかし、2度目の訪問で紹介に値するにと判断した。

「武蔵野うどん膳」を注文する。定価は980円。ザルに載った冷めたうどんを、温かい汁に浸して食べる。濃い目の汁には豚肉、ネギ、しいたけ、にんじんが入っている。てんぷらは5品。海老、茄子、オクラ、プチトマト、かぼちゃといったところ。プチトマトが珍しい。これに茶碗蒸しとデザート(白玉と煮た小豆)が付く。うどん、汁、てんぷら、茶碗蒸しの何れも神経が行き届いている。「いらっしゃいませ、こんにちは」(注)などと大きな声で“お客を友達扱い”しない。店員のマナーにも好感がもてた。
「久兵衛屋」に隣接して武蔵村山市の物産展示場がある。そこで「村山うどんMAP」なる資料をもらった。そこには武蔵村山市内の14店のうどんの店の紹介が出ている。ただし、なかに麺の玉を売る店等が4店舗混じっている。武蔵村山市内の個人経営のうどん店にも行ってみたい。しかし、東京都にありながら武蔵村山市には鉄道の駅がない。バス路線はあるのだが、どこでバスに乗り、どこで下車すれば目的のうどん屋にたどり着けるのか。これが分からない。しかも、「村山うどんMAP」の地図はやや芸術的なもの。余程地元に精通していなければアクセス不能だ。ということで、うどんの宝庫である武蔵村山市内の“うどん探訪”は、しばらくお預けである。
(注)「いらっしゃいませ」は、謙譲語。「こんにちは」は、相手と対等な立場に立つ。この2つの語を間髪なしで続けられると、お客は「馬鹿にされたような」気がしてしまう。
「いらっしゃいませ、こんにちは」は、マクドナルドが日本進出の際に持ち込んできたもの。おそらく米国本社の接遇マニュアルの翻訳であろう。日本人の(少なくとも私の)耳には不快なコトバとして響く。

木股文昭・田中重好・木村玲欧編著『超巨大地震がやってきた』

2007-07-16 09:22:09 | Weblog
木股文昭・田中重好・木村玲欧編著『超巨大地震がやってきた』

本書は名古屋大学大学院環境学研究科所属の研究者たちによる共同研究・調査の成果の報告書である。同研究科は“環境学”というテーマの性格から、理学・工学・人文社会科学の研究者を有している。これら学際的なスタッフが協力して本書をつくりあげた。同研究科のスタッフたちは、2004年12月26日発生したスマトラ沖地震津波を対象に調査団を組成、2005年2月の第一次調査を開始。以後、数次の調査団を派遣して現地調査を行なった。本書の章立ては次のようになっている。

序 章 巨大な地震が起きた
第1章 自然現象としての超巨大地震
第2章 大津波発生
第3章 立ち直る人々
第4章 巨大地震と津波に備えて
第5章 日本の地震・津波対策

スマトラ島全体で16万7000人の犠牲者を出した津波。しかし、住民、地域社会、行政の何れも何の備えもなかった。最も津波被害の大きかったアチェで使用されている言語(アチェ語)。殆どの住民たちは、「津波」に相当する現地語を知らない。この地域は19世紀半ばにマグニチュード8クラスの地震があった。数メートル程度の津波が発生している。しかし、150年の年月により、津波伝承はおろか、津波というコトバまでも消えてしまっていた。ちなみに、アチェ語の「津波」は、「イブーナ」。「海の向こうから来る大きな波」という意味だ。「コトバと防災」といったテーマが扱われること自体が、学際的アプローチの成果といってよかろう。
津波の被害にあった海岸地域には、かつてはマングローブの林があった。しかし、林は伐採され、そこはエビの養殖池になっている。海岸から平地が続くこの地域では、津波から逃げようとしても3-4キロ行かなければならない。地震や津波が自然災害であることはもちろんであるが、経済優先の開発が被害を大きくしたともいえよう。人口1万人の集落で生存者は僅か50人。そんな集落がある。調査団は、そこを訪れて、聞き取り調査した。マダリナさんという母親は、娘を小脇に抱えて集落に近い山へ向かって走った。「なぜ山に走っていったのかは、わからない」とマダリナさんは語っている。津波の被害地は何時までも水が引かない。そのため、山に逃げた50人の集落民は2日間飲まず食わず。3日目に集落外から助けが来て避難所に入ることができた。
(2006年、時事通信社、1800円)

小学生時代の“本の記憶”—『偕成社五十年の歩み』を参照して

2007-07-16 09:19:18 | Weblog
小学生時代の“本の記憶”—『偕成社五十年の歩み』を参照して


小学生時代に「お世話になった本」に、偕成社の偉人伝シリーズがある。黄色いカバーのかかった偉人伝。今でも、あの本の手触りを思い出す。10冊以上は、愛蔵していた。先般、偕成社の社史『偕成社五十年の歩み』(1987年刊)を頂戴して、過去の記憶を確認する機会があった。すると、“偕成社の偉人伝”は通称で、正式名称は“偉人物語文庫”と称することが分かる。その第1巻は、1949年(昭和24年)4月に発刊された『ベーブ・ルース』。著者は沢田謙であった。次いで年内に『リンカーン』、『福沢諭吉』、『コロンブス』、『エジソン』が刊行されている。当時の日本は占領中。このラインアップから、見え隠れする“アメリカの影”を読み取ることができる。5人のうち、3人はアメリカ人だ。加えて、コロンブスは、“アメリカ大陸発見者”である。そのような見地に立つと、コロンブスもやはりアメリカ関係者。このシリーズの最初の5冊のうち4冊(80%)までがアメリカ関連本ということになる。少々どころか大いにバランスを欠いている。そう批判されてもやむをえない。
『偕成社五十年の歩み』の巻末には同社創業(1936年)以来の出版リストが付いている。このリストの中から記憶をたどりつつ、私が所有していた本をリストアップしてみよう。

沢田謙『エジソン』 1949年(昭和24年)刊
沢田謙『アインスタイン』1950年(昭和25年)刊
沢田謙『ノーベル』1951年(昭和26年)刊
沢田謙『フォード』1951年(昭和26年)刊 
川端勇男『ディーゼル』1952年(昭和27年)刊
柴田練三郎『チャーチル』1952年(昭和27年)刊
沢田謙『フランクリン』1952年(昭和27年)刊
丸尾長顕『マゼラン』1953年(昭和28年)刊
沢田謙『パスツール』1953年(昭和28年)刊
浅野晃『源頼朝』1953年(昭和28年)刊
沢田謙『高峰譲吉』1954年(昭和29年)刊

このリストを見て、色々なことに気づく。先ず、沢田謙の著書が多いことである。『偕成社五十年の歩み』で、沢田謙は「外交、政治評論家」と紹介されているのみ。詳しいことはわからない。ところが、たまたま神戸の一栄堂書店から送ってきた古書目録(2006年5月号、29ページ)の中に、戦前期の沢田謙の著作を2冊発見した。書名は『ヒットラー伝』(1934年、講談社)と『ムッソリーニ伝』(1935年、同)である。古書価は3,000円と2,000円。ヒットラーの方が1,000円高い。沢田謙は、戦前にこのような本を書いていたのだ。チョット驚いた。その後、沢田謙に関する新たな情報を得た。須賀敦子の『遠い朝の本たち』(2001年、ちくま文庫)を読んでいたら、この沢田謙は『プルターク英雄伝』の編著者として登場している(187ページ以下)。須賀敦子(1929年―1998年)の少女時代に読んだ本として出てくる。『プルターク英雄伝』が出版されたのは戦前または戦時中のことであろう。話題をもう一度伝記を書いた著者に戻す。沢田謙以外の著者で、注目すべき人物がいる。後に『眠狂四郎無頼控』等の剣豪小説や『図々しい奴』等の現代小説作家として有名な柴田練三郎がチャーチルの伝記を書いている。柴田練三郎は、『イエスの裔』(1951年)で直木賞を受賞している。また、マゼランの伝記を書いているのが丸尾長顕。多彩な人物で作家としても活躍したが、日劇ミュージックホールの演出家というと分かるかもしれない。『源頼朝』を書いた浅野晃は、プロレタリア運動に参加した共産党員。獄中で転向した。そんなことを知ったのは、ごく最近のことである。

上記リストの中で、『源頼朝』を除くと、残りすべては、父が選んだ本である。『源頼朝』は、講談社世界名作全集で読んだ『源平盛衰記』との関連で、私が頼んで買ってもらったもの。父が、私のためにと選んだ本については、ひとつの傾向がある。ずっと後になって、そのことに私は気が付いた。私の年齢は40歳ぐらい。3人の子供の父親になっていた。父の選んだ偉人たちの殆どが「発明者」または「発見者」である。例外は2人。父が尊敬するイギリスの政治家チャーチル、ポルトガルの海洋探検家マゼランである。この2人を除くと、父の選択した本は“「発明」または「発見」をした科学者の伝記”ということになる。父は事務系のサラリーマンとして会社での人間関係に苦労していた。そんな苦労を子供(私)にはさせたくない。わが子(私)には理科系方面に進学させ、クリエイティブな仕事をさせたい。そんな思いから偕成社の偉人伝シリーズを利用して(息子の将来の進路の)誘導を試みたのだろう。しかし、(なんら後悔するわけではないが)私は父と同じ事務系サラリーマンの道を歩んでしまう。“適性”を考慮すれば、この選択は正しかったと思う。

藤井恵著『海外勤務者の税務と社会保険・給与』

2007-07-14 10:42:51 | Weblog
藤井恵著『海外勤務者の税務と社会保険・給与』

本書の著者である藤井恵(ふじい・めぐみ)氏は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)国際事業本部貿易投資相談部研究員。これまでに『租税条約』、『中国駐在員の選任・赴任から帰任までの完全ガイド』(何れも清文社刊)等企業の国際展開に不可欠な税金、社会保険、年金等に関する実務書を多数世に送り出している。本書は、次のような読者を対象としている。

海外進出企業の海外人事・総務・経理担当者
海外進出計画をもつ企業の人事・総務・経理担当者
海外駐在員
海外駐在予定者

本書では、海外勤務者の日本での税務・社会保険の取扱い、海外勤務中の給与体系・危機管理・健康管理・子女教育や勤務地国での税務上の取扱いなどについて、100項目にわたる「Q&A」方式で図表をまじえて実務的にわかりやすく解説している。少々いかめしいタイトルの本であるが、これが本書の特徴。あくまでも実務主体。分かりやすさ、読みやすさを追求している実務書である。加えて、勤務地国において駐在員たちが各人の税務上の取扱いを把握できるように、22カ国の個人所得税、日本が締結した45の租税条約の中から、海外駐在員に関わる条項の概要も一覧表形式で掲載してある。以下は本書の目次。

第1章 社会保険上の取扱い
第2章 海外勤務者の日本における税務
第3章 各国の個人所得税概要
第4章 海外勤務者に関連する各国との租税条約
第5章 海外給与体系
第6章 海外勤務者規定の作成
第7章 出向元と出向先の覚書
第8章 危機管理と健康管理
第9章 海外子女教育
第10章 その他

本書には、社会保険(年金、健康保険、労災保険)、税務、海外給与規定、給与の送金、海外旅行傷害保険、予防接種、海外子女教育サポート機関等の様々なテーマ、100項目の「Q&A」の形式で整理されている。以下は、その事例。「海外子女教育サポート機関」、「海外からのペットの持ち込み」等家族の視点からの項目も含まれているのも女性らしい視点であるといえよう。
・海外駐在に当たっての日本の社会保険(厚生年金・健康保険等)に関する留意点
・国民年金の任意加入
・社会保障協定適用のための手続事項
・協定相手国から年金を受給するには
・労災保険の特別加入制度
・日本人学校の学費及び企業寄付金
・海外子女教育サポート機関
・海外からのペットの持ち込み

A5判368頁/定価2,520円(税込) (本体2,400円)